中国EC市場に効果的にアプローチする手法とは?最新の消費者トレンドから商習慣までサポート企業に聞いてきた(トラベルボイス 2019年11月10日)https://www.travelvoice.jp/20191110-140772

今日11月11日は、中国最大のECショッピングの祭典「独身の日」。アリババの取扱高は過去最高の2684億元(約4兆1000億円)前年比で25%増を記録した。中国へ進出しようとする日本企業にとって、中国の商慣習、消費者の行動、ECの仕組みなどが異なるため、アプローチが難しいという。その橋渡し役を務めるオンラインリテールサービス会社へのレポートだ。訪日中国人の消費行動は、「爆買い」から「自分の買い物」に移行しているが、購買意欲はまだまだ旺盛だ。今年の国慶節期間中、訪日中国人観光客によるアリペイの取引件数は前年比124%増だという。訪日して購入する商品と越境ECで購入される商品、いずれも上昇基調にあるようだ。

【ポイント】今年も11月11日には中国最大のECショッピングの祭典「独身の日」をむかえる。アリババでは5億人超の参加ユーザーと予測。
日本企業にとっては、中国の商慣習、消費者の行動、ECの仕組みなどが異なるため、アプローチが難しい。その橋渡し役を務めるのが上海をベースとする第一秒(D1M)電商科技。2012年に設立されたオンラインリテールサービス会社。

日本や欧米のEC市場では、自社ウェブサイト上で自社商品を販売するか、楽天、Yahoo!ショッピング、アマゾンなどのモール型ECサイトを活用するのが一般的。楽天やYahoo!ショッピングでは、各ブランドが「テナント」として出店。アマゾンではブランドがそのマーケットプレイスに商品を「出品」する。
一方、中国ではサプライヤーが直営店を出すプラットフォーム型が主流。「中国にはプレイヤーがあまりにも多く、オンラインリテールの施策も山ほどある」ため、サプライヤーは効率的にリテールを展開するために、トラフィックの多いプラットフォームに出店する。コーポレートサイトも存在するが、そのトラフィックは大手プラットフォームの10分の1以下という。
アプリ制作を望む海外企業は多いが、中国人消費者にアプリをダウンロードさせること自体ハードルが高い。中国人は最初の消費行動としてプラットフォームに買い物に行く。WeChatをダウンロードしておけば、スーバーアプリ化したWeChat上でワンストップで可能。そうした動きは消費者にとって習慣化していると話す。

中国で最も影響力のあるECサイトのひとつは、アリババグループの「Tmall(天猫)」だ。このプラットフォームに各企業が直営の旗艦店を出店する。しかし誰でも出店できるわけではなく、「アリババとの取引は相当ハードルが高い」という。偽物や非正規品を排除し、中国人ユーザーに期待に応えるため、出店には厳格な審査がある。Tmallへの出店自体が、その企業の中国における強力なブランド力にもなる。
重要な役割を果たすのが、D1MのようなTmallパートナーだ。D1Mは、Tmallと企業の間に入り、Tmall上にページを作り、製品を掲載するオペレーションから、広告のリスティングやコンテンツマーケティングをワンストップで提供する。Tmallパートナーは1000社ほどあるという。D1Mが手掛ける領域は、ラグジュアリーブランド、ビューティー/パーソナルケア、ライフスタイル、ファストファッションの4つ。Tmallパートナーとしてのビジネスは一部で、総合的なオンラインリテールサービスを展開している。「ブランド側にとって最善のソリューションを提案。ブランドによってはWeChatがいいところもあれば、中国でのコーポレートサイト立ち上げが有効な場合もある」と話す。

現在、D1Mが提携している企業/ブランドは約130社で、そのうち9割がグローバルブランドだ。日本市場については、中国から日本へ進出する企業のサポートは5年前から、日本から中国へは3年前から開始した。現在取引がある日本企業はまだ10社ほど。
日本の企業へのサポートは、コーセーや資生堂など中国の現地法人のサポートで、中国国内の会員システムやコーポレートサイトの構築などを手助けする。また中国国内でのリブランディング。千趣会の提携では、同社のベビー・子供向けアパレル領域におけるプライベートブランド商品の販売拡大に向けた取り組みを開始した。現在、ミラノやニューヨークなど6都市に事務所を構えるが、日本事務所も準備している。

中国市場への進出を画策している日本企業は多いが、「中国でビジネスを展開する場合、インハウスだけではオペレーションは回っていかない。マーケティング、ブランディング、販売を展開するには日本だけのコントロールでは無理だろう」という。「日本国内の成功体験を中国に持ってきてもだめ」。中国はここ20~30年で急速に発展し、ビジネスのやり方も変わってきた。「中国市場に参入するときは、中国に歩み寄るマインドセットがあれば、成功する確率は上がる」。中国人の消費マインドもダイナミックに変化。子供から老人まで消費行動はデジタル化し、若者(Z世代)はユニークなものを求めているという。消費態度として「理念のあるブランドに憧れる」「自信の趣味のために消費」「自身の能力の範囲内で消費」「SNSでコンテンツや情報を能動的に探す」「国内ブランドも海外ブランドと見劣りしていない」の5つを挙げ、「専門性や理念をバリューとして取り入れる」「消費者の趣味の領域と結びつける」「前借りの心配を軽減する」「インタラクティブが生まれやすいコンテンツ」「ニーズをローカライズする」の5つのポイントを提言した。

訪日中国人旅行者による「爆買い」は落ち着き、その消費行動も「モノ消費」から「コト消費」に変化していると言われているが、それでも購買意欲は旺盛だ。アリペイによると、今年の国慶節期間中(2019年10月1日〜7日)、日本での中国人観光客による取引件数は前年比124%増となり、海外旅行先別の取引件数ランキングで初めて世界第1位となった。一人あたりの消費額も同15%増と引き続き消費意欲は高い。

オンラインリテールサービス会社「第一秒(D1M)電商科技」パートナーシップ担当ディレクターの戚丽文(せき・れいぶん)氏へのヒアリングレポート。