お・も・て・な・しは日本人の自己満足か
日本の観光産業はGDP38兆円分の成長余地がある
(日経ビジネスオンライン 10月24日)
http://business.nikkeibp.co.jp/article/interview/20141021/272867/?n_cid=nbpnbo_mlt

小西美術工藝社のアトキンソンさんは、ゴールドマン・サックスで銀行アナリストとして活躍され、国宝や重要文化財の補修を手がける370年の歴史を持つ小西美術の社長に5年前に就任されている。
そのアトキンソンさんから見た、伝統技術のあり方や観光への取り組みのおかしさが、このレポートで指摘されている。
見直さなければならないことが多い…

【ポイント】
・職人は「ひたすら自分の技術を磨きたいんだ」と言うが、会社員だって同じだ。
 職人だけが伝統技術を磨いていればいい、工期は守らなくていい、年齢がいくほど給料が高くて当たり前というのはおかしい。
 職人は後継者難とか、若者が来ないというが、中高年の職人が席を譲らないだけ。求人を出している会社もほとんどゼロ。
 小西美術は、18歳の若者の採用を増やし、3年で社員の平均年齢が46歳から37歳に下がった。
・職人自らが、お寺や神社を1~2年に1度は行って、見て、「大丈夫ですね。何か困ったことはありますか」と営業する意識改革を行った。
 通常、お寺や神社は20年に1度くらいしか工事をしないので、業者は工事が終わったら20年来ない。

・全国の国宝・重文建造物の修理・保存に対する国の予算は1年あたり81億円。
・伝統産業もビジネスとして考えないとダメ。美化する必要はない。
 「私は国宝を修復ています。だから200万円じゃなくて400万円だ」となり、修復したいけどやめとなる。こういう悪循環が多い。

・日本のGDPの観光業は2%。世界の平均は9%。日本の観光ビジネスが世界平均まで成長すると38兆円拡大する潜在力がある。
 全世界の観光産業の成長率は年3.5%。これは産業別に見ると断トツに高い。
・日本の観光産業は400万人もの追加雇用を生み出す規模になり、「地方創生」は、観光以外の道は考えづらい。
・訪日時に実施した活動の1位が「日本食を食べること」96.6%です。でも100%になっていない。
 「文化財を見に行った」という人は25%。海外だと8割とか9割になる。
 「日本に来て何が良かったか」と外国人に聞くアンケートは、日本人が聞きたい答えを言っているに過ぎない。

・観光は「治安が良いから行こうぜ」とはならない。イギリス人が香港に行くのは、エキサイティングで、何かいい旅ができそうだという期待感があるから。
・イギリスでは、1066年のフランスとの戦争の再現イベントを1週間やっている。日本でも関ヶ原の戦いの再現を定期的にやればよい。
・文化財は修復保存しておくだけでは観光資源にならない。建物の作りや模様の意味合い、歴史などの解説がないと外国人は理解できない。
・京都は世界一の観光スポットだと言われるのに年間200万人しか来ていない。大英博物館に来る外国人の数の半分にもならない。
・イギリスの人口は約6000万人ですが、毎年3000万人以上の旅行者が来る。

・VIPの人が、日本はお金を落としたくても落とすところがない。
・京都など観光客を呼ぶ努力をしているところもあるが、そうでないところは、面倒だ、人がたくさん来るとゴミが増えて嫌だとか言っている。
・観光立国で何千万人も来てほしいなら、おもてなしだとか言う前に整備しなければならないことを整備するべき。
・「世界一のおもてなし」は、自己満足の部分があって、日本人同士で世界一ですと言い合っている。