友人Qさんの、「ななつ星in九州」の旅のレポート⑫を転載させていただきます。
今回は「ななつ星」のなかでの晩餐だ。極上の器に、極上の料理を楽しんでおられるのが分かります。ミシュランが料理店のステータスを与える仕組みだとすれば、「ななつ星」で採用される料理も極上のステータスを与えてくれる仕組みです。それにしても、さすが「ななつ星」。こだわり抜いた一品ですね。

【ななつ星の晩餐】

由布院駅で伝統芸能を堪能した後は、「ななつ星」での晩餐だ。
ドレスコードはセミフォーマルとある。出発前から式典が続いたので、ずっとTAKEO KIKUCHIでしつらえスーツのままだった。

1号車のラウンジカーに晩餐の席は用意されていた。またディナーの間、列車は由布院駅と南由布駅を往復する。列車が駅に止まったままという訳にはゆかないのだ。

食器は、足の高いワイングラスに始まり、有田焼の窯元「清六窯」の白磁の器、ナイフフォークはノーベル賞の晩餐会でも使用される新潟県燕市の山崎金属工業製と逸品ぞろいだ。

列車は揺れる。

しかし列車の揺れで器をテーブルから落とすことがあってはならないため、揺れ制御には高いレベルが求められる。それは、新日鐵住金が開発したアクティブサスペンションが採用され、車体の振動を検知するセンサーと逆方向の力をアクチュエーターで発生させ、振動を打ち消すというものだった。

晩餐が始まった。
「ななつ星」車内で唯一の晩餐だ。 
二日目は、霧島温泉の「忘れの里 雅叙苑」。三日目は、鹿児島市の「仙巌園」と、こだわり抜いた晩餐となる。

「ななつ星」の晩餐を任されたのは、大分市にある「方寸」だ。
「なつかしい未来〜九州〜風土に育まれた人・物・事を今にそして未来に」をコンセプトに、しながきには「大分でお過ごしいただく、七つ星の旅、最初の晩餐。今宵お届けする料理は、豊国の伝統にちなんで「土」から始めます。あらゆる命を宿し、育み、やがては受け止める母なる大地。すべては大地にはじまり、大地へと還る。人生も然り、旅もまた然り…。」とある。

最初は「土の景」。サトイモの小芋を皮のまま蒸し、その皮を剥いて食べる「きぬかづき」が出された。サーモンで形づけられた花はサザンカのようだ。 晩秋をイメージさせるひと皿になっている。
次は「木の景」。意表を突く、具の入っていない「椎茸のおつゆ」だった。
器は、静岡市蒲原町の片瀬さんのご子息の作品、これまでも、まちづくり関係で親しくさせていただいていた片瀬さんとの不思議なご縁を感じる。
料理を引き立てる力を持つ陶器だった。

(つづく)