大阪府・大阪市IR推進局様

IR推進協議会事務局長 大阪府立大学客員研究員 勝見博光様

先ずIR推進局の井谷推進課長様より、大阪の現状のお話があり、今後の大阪経済を支える新たな視点として「観光」や「MICE」に注目。国際会議はアジア太平洋地域の主要国別では開催件数を伸ばし、ここ数年は減少傾向にあるが、日本のシェアは、更に低下しており、大阪は日本の中でも4位に甘んじていると説明がありました。
日本のIRの基本的な考え方は、●国際競争力の高い滞在型観光の実現、●大きな経済効果、雇用創出効果、●IRを訪れる旅行客が全国各地を訪問(全国で経済効果)、●カジノ収益を幅広い公益目的に還元、●世界最高水準のカジノ規制の導入、●IRについての様々な懸念に万全の対策とあり、2017年度はIR実施法の審議に向けて準備が進められており、大阪としては、国の基本方針に沿って認定申請を行う段取りで進めている。ギャンブル依存症などの懸念材料も十分検討の上、万博も含めて、夢洲のまちづくりを進めてまいりたいとのお話でした。
 
勝見先生のお話は、シンガポールの事例として『IR(統合型リゾート)』はシンガポールが作った造語であり、政府が検討するのは「カジノ」ではなく、IRと名付けた新たな観光拠点開発であり、観光産業のさらなる発展や、MICE振興のための装置との説明から始まりました。
シンガポールも建国以来、何度もカジノ合法化議論があった。90年台後半からシンガポールの観光産業は競争力を失い、2003年のSARSの打撃を機にカジノ合法化が動き出し、2006年にカジノ法案を成立させ、2010年に二つのIRを誕生させ、大成功を収めている。
長引く不況で開発が止まっていたマリーナベイ地区、観光拠点として期待されながら魅力的な施設もないセントーサ島の活性化に向けた取り組みとして、カジノライセンスを二つの事業者に与え、カジノを基にした税金等による収益とともに、公的ミッションを入札時の条件として課す「税負担なき公共政策」という方策をとったといいます。
世界標準のIRは、カジノを通過しなければホテルやエンターテイメント施設、MICE施設にアクセスできない構造ですが、シンガポールはカジノを目的としていない人が安易にアクセスできない場所にカジノを設置するなど、カジノを最小化する工夫をしながらも、運営権を30年とし、10年間は新規免許を認めないことや、カジノを2か所に限定するというインセンティブを与え、事業の継続性を保護している。
富裕層を引き付けるため、MICE機能の充実や、世界的エンターテイメントの設置も条件とし、2000席以上の劇場や、世界の一流シェフを誘致する提案や、デザイン性の高いマリーナベイサウンズの提案などが事業者決定に大きく寄与したといいます。
また美術館などの公共性の高い施設や、市民の誰もが利用できるプロムナードや遊歩道の整備など、民営事業でありながら、公共性を担保したところにIRの本質があると説明されました。
このようなIRの原型と言われるのが、オーストラリアのメルボルンだともお話しされました。
 
今、大阪もインバウンドの増加を受けていますが、今後は、まちづくり的にもインバウンドの数の増加は問題になる可能性が秘めているといいます。IRやMICEにより世界の富裕層を集める仕組み、量から質へ転換を目指す必要があるとのお話で締めくくられました。