これからの欧米旅行者の6つの傾向と観光事業者が取るべき対策
(京都市観光協会 2021年5月18日)
https://www.kyokanko.or.jp/report/20210518/?fbclid=IwAR2AL-1l4lQop07TZbqr2CAadwJC98oNo7dwMawpW3nHAEsaCCp4mwJPt24

【ホッシーのつぶやき】
欧米の一部の国では隔離期間を設けず国外旅行を再開という、一方、アメリカが日本への渡航中止を勧告したとも言い、国外旅行の再開時期はまだ不透明ですが、必ず「インバウンド観光は戻る」との意見も多く聞かれます。
まずはワクチン接種が進まないと「観光」どころではないですが、「インバウンド観光が戻る」前にしなければならないこともありそうです。

【 内 容 】
世界中の人々の生活を根底から変えた新型コロナウィルス感染症は人々が旅行を再開する際にどのような影響を与えているのだろうか?また対策を行うべきことはあるのだろうか?ツアーや観光施設のチケットなど旅ナカに特化した世界最大のオンライン予約サイトであるゲットユアガイド社から、欧米の主要6カ国の旅行者に旅行に対する意識調査をもとにした旅行再開に関するレポートを寄稿いただきました。

インバウンドはどこから、いつ戻るのか?

訪日外国人(インバウンド)の増加によって、大きな恩恵を受けていた観光業界にとって、インバウンドがいつ戻るかということは大きな関心事項ではないかと思います。現時点で、訪日旅行が本格的に戻る時期を見通すことは残念ながら困難ですが、一部の国においては隔離期間などを設けずに国外旅行を再開していることに加え、トラベルバブルとワクチンパスポートという大きい2つの枠組みによって異なる国同士の旅行の再開が協議されています。

トラベルバブルとは、国内感染を押さえ込むことに成功している異なる二国間同士で旅行者の交流を再開する枠組みであり、オーストラリアとニュージーランド間や香港とシンガポール間で協議もしくは実施されています。一方、ワクチンパスポートはワクチンの接種が進み集団免疫を獲得した国同士での旅行を再開する枠組みであり、接種の進んでいる英国や米国などを中心に議論が進んでいます。しかしながら、日本が今の感染状況からトラベルバブルを目指すのは現実的ではありません。また、トラベルバブルの相手国からの訪日客を隔離期間なしで受け入れるためには、相手国側で感染が抑えられているだけでなく、ワクチン接種が進んでいる必要もあります。なぜなら、ワクチンには発症・重症化を大きく抑える効果は確認されているものの、感染自体を抑える甲かは未だに諸説があり確認できていないためです。

したがって、訪日受入が再開されるのは、ワクチンの接種が国内で進み集団免疫が獲得されるタイミングだと予想されますが、これも現時点でいつになるかは明確にはなっていません。京都においては、コロナ前から特定の国籍に限らずバランスよく多様な地域の旅行者をターゲットにして集客を行ってきましたが、旅行の再開に向けては、感染状況だけではなくワクチンの接種状況に応じて集客を進めていく必要があります。コロナ禍を経て、世界中の旅行者は、なお一層旅行したいと思うようになりっており、多くの国で日本の魅力は失われていません。とくに、ワクチン接種が進み旅行の再開が徐々に始まっている北米マーケットでは、弊社サービス上でも既に多くの観光地においてコロナ前を大きく上回る旅ナカ商品の予約が行われております。ただし、コロナ禍によって旅行者の旅行に対する考え方が変わった点もあるため、それらを踏まえて対策を行っていくことが重要です。

今回弊社が行った全31ページの詳細レポートから、コロナ禍を経た欧米の旅行者マインドの大きな6つの特徴と、どうすればこういった旅行者を取り込むことができるかについて紹介していきます。

調査でわかった、今年最も旅行する旅行者の6つの傾向と京都の事業者として取るべき対策

  1. 旅行の再開は、まず家族やカップルから
    大半の欧米の旅行者は、家族や交際相手などのパートナーとの旅行を計画している。また家族や親戚に会うための旅行も大きな動機のひとつとなっているため、旅行事業者は家族やカップル向けの商品やマーケティングを行うべき

具体的な対策
• 家族やカップル向けの商品の販売(ファミリーパッケージなど)
• 子供向けの追加オプションの設定
• 子供料金の割引や無料化など家族向けの金額設定
• 家族やカップル向けのマーケティングの実施(家族向けのイメージ写真の利用など)

*旅行者の属性や行動動態の傾向についての詳細はレポートからご確認いただけます
ファミリーパッケージの例として、オーストラリアで弊社が企画するツアーでは下記のような大人2名と子供2名の料金が含まれた料金設定のオプションを作成することで、より家族により沿った提案を行っております。

  1. 割引やお得なパッケージが旅ナカの体験やアクティビティを行う大きな動機に
    今年、家族など大きなグループで旅行する旅行者は、旅先での体験やアクティビティを検討するうえで割引や特別パッケージが優先順位の高い項目だと回答しました。しかし、旅先での体験やアクティビティに費やす予算はむしろ増加傾向にあるため、有効な割引施策を実施することで市場シェアを増やすことが可能です。

具体的な対策
• 閑散期や人気の低い時間帯の料金設定の見直しによる稼働率の最大化
• リスティング広告など旅行者への露出が多い広告枠の活用

  1. 予約意欲を大きく左右する要素は、衛生対策と柔軟な予約キャンセル
    社会情勢が不安定な中、予約の柔軟性と衛生・安全対策は、旅行予約を妨げる原因にも、後押しする要因にもなります。これらの対策を行うことは、短期的にも、中長期的にも重要です。また柔軟なキャンセルポリシーを設定することでより長いリードタイムの予約につなげることが可能です。

具体的な対策
• 24時間前までのキャンセル無料など、柔軟なキャンセルポリシーを設定する
• 厳格な衛生対策(頻繁な消毒作業、マスク着用の徹底、非接触型チケット)などを導入し、来場・利用者へ明示的に伝える
• 非接触決済やデジタルチケットの導入など非接触型の予約を促進する

  1. オンライン予約傾向が顕在化、さらに今後もオンライン予約比率は上昇が見込まれる
    今回の調査では、欧米の旅行者の半数以上がオンラインで予約したと回答しました。衛生や安全面での懸念を受け、オンライン予約やデジタルチケットの利用意向が上昇しています。オンライン上で貴社の全ての商品やオプションを見つける事が出来るようにして、予約につながるようにしましょう。

具体的な対策
• 全ての商品やオプションをオンラインで販売する
• 自社サイトなどのウェブサイトで予約ができるようにする
• デジタルチケットの導入など、非接触で入場できるようにする
• 予約プロセスを全てオンライン上で完結するようにする
• 検索型広告やアフィリエイトを活用し、旅行者とのオンライン上の接点を最大化する

  1. 旅行意欲の高い旅行者は既に旅行の計画や予約をはじめている
    一般的な旅行者は、目的地に到着する前に「したいことリスト」を作っていますが、今年最も旅行意欲の高い旅行者は、既に具体的な計画を練っています。こうした旅行者を、多様なマーケティング手法を利用して狙っていきましょう。

具体的な対策
• 旅行計画中の人に対して貴社のブランド認知度を向上できる旅マエ媒体(街頭広告、インフルエンサー、ソーシャルメディア、ウェブメディア等)を活用して先々の予約につなげましょう。
• 旅行業界の異なるジャンルの事業者(ホテル、体験事業者、観光施設、交通事業者等)や他業界の事業者とアフィリエイトパートナーと連携して従来アプローチできなった新たな顧客層に対して貴社のブランドメッセージを届けましょう

  1. 意欲の高い旅行者向けの商品の準備が重要
    旅行意欲の高い旅行者は既に準備を進めています。この旅行意欲の高い旅行者の求めているものや行動パターンを理解することは、旅行再開に向けた商品造成や自社で展開するブランドメッセージを形作る助けになります。意欲の高い旅行者は、旅行の計画を立てるのが好きで、新しい場所を訪れることを楽しみ、宿泊にかけるお金を節約する傾向があり、旅先での体験を重視します。

具体的な対策
• 旅行者の興味が湧くような面白い商品の造成(例:人数限定の舞台裏ツアーなど)
• 旅先で色々な体験をしたい計画的な旅行者の興味を引くような驚きのある商品のPRする
旅行者の興味を引く商品PRの例として弊社が企画しているルーブル美術館のツアーが挙げられます。商品詳細には、有名どころだけでなく、地下にあるお城の跡など来館者が気づかない隠れた見どころもふくまれていることが明記されており旅行者の興味を引くことに成功しています。

見え始めた日本への訪日旅行の再開に向けて今できることを

現時点では、欧米の旅行者は国内旅行への意向が強く、上記の回答結果は国内旅行を前提となります。しかし、訪日旅行が再開された場合にも、旅行者のニーズには同様の傾向が見られると予想されます。また、本調査は、英国や米国でワクチンの接種が本格的に始まる前に行われたものです。その後ワクチン接種が進んだことで、旅行に対する不安のレベルが半分程度まで下がってきているという調査結果も米国では出てきており、想定よりも多くの人が旅行に出かける可能性もあります。これまでの各国の傾向からすると、旅行需要は徐々に戻るのではなく、一気に戻り始める可能性が高いです。そのため、訪日外国人が戻り始めてから準備を始めるよりも、今から準備を進めていくことが売上を最大化するためには重要です。