インバウンドで「稼ぐ力」をどう作るか? 〜日本インバウンドサミット2020
(日本インバウンドサミット2020のyoutube動画  2020年7月23日)
https://www.youtube.com/watch?v=X-WYwlfm9FA

【ポイント】
『日本インバウンドサミット』のビジネスに関するセッションも充実していたので紹介します。
◎今、インバウンドは99.9%止まっている。日本在住外国人は283万人、全国民の2%いる。外国籍人材にどのように対応するかが重要。
◎日本人の購買意識は「良いものを安く」だが、中国人は「高いものイコール良いもの」と考える。
◎中国人の、一番行きたい外国はヨーロッパではスイス。価格はヨーロッパで一番高い。日本は、アジアのスイスとして行きたい国。しかし高い。これが日本のポジション。
◎団体観光客は、観光バスで来て、写真を撮って、自動販売機で買い物するだけ、地元に還元されない。
タイ、カンボジア、バリなどでも「ゼロ・ドル・ツーリズム」が問題になっている。
◎事前に歴史やストーリーを学んでから現地に行くと満足度が高い。
◎今は、これまでの観光のあり方を考え直して、洗い直すチャンス。

【登壇者】
新津研一:ジャパンショッピングツーリズム協会 代表理事
アレックス・カー:チイオリトラスト理事長 (在日54年。15件の古民家の宿泊経営)
Dong Lu:TakeMe代表取締役社長 (飲食店中心の決済サービス)
竹内幸一:グローバルパワー代表取締役 (在日外国人の派遣業)

新津:ジャパンショッピングツーリズム協会 代表理事をしている。「ショッピングツーリズム」といえば爆買いをイメージされるが、ツーリストは、観光することも、食べることも、移動することも体験。ショッピングも「買物を体験してもらう」ことと考えている。

竹内:今、インバウンドは99.9%止まっている。日本在住の外国人は283万人、全国民の2%いる。この外国籍の人にどのように対応するかがとても重要だと思っている。
2%の日本在住外国人に対して98%の日本人社会のなかで、コミュニティの絆がとても強い。SNSを使った情報交換が盛んで、中国人ならウィチャットを使い、その情報を本国の中国人が見ている。台湾人ならFacebookを使う。
日本在住の外国人の方、留学生は大きな発信力を持つので、この発信を使えていないのはもったいない。

Dong Lu:中国人ならウィチャットで情報交換しているので、どのような商品を、どれくらいの値段で欲しいのかが分かる。これを細かく分析して、戦略を持って対応することが望ましい。
これまでは何でも売れたが、アフターコロナ時代、何が欲しいかを知り、魚釣りのように対応しないといけない。
中国人はコース料理を注文することが多い(日本人の2倍支払う)。中国人に日本のことを聞くと一般的に「高い」と返事が返ってくるが、北京、上海、深センでは「なんでこんなに安いの」という。
日本人の購買意識は「良いものを安く」だが、中国人は「高いものイコール良いもの」と考える。
中国人は、ヨーロッパでは一番行きたい国はスイス。価格はヨーロッパで一番高い。日本は、アジアのスイスとして行きたい国になる。しかし高い。これが日本のポジション。

アレックス:インバウンドは数だけではない。団体旅行観光客は、観光バスで来て、写真を撮って、自動販売機で買い物するだけで、収入が地元に還元されない。
タイ、カンボジア、バリなどでも「ゼロ・ドル・ツーリズム」が問題になっている。最初は中国人観光客を指していたが、クルーズ船も同じ構造。ベニスでは大型クルーズ船は地元にとって赤字になるので、大型クルーズ船を排除する動きになっている。
祖谷では、外国人の場合は平均3泊する。チイオリの試算では、消費額は大型観光バス団体客の25倍。
祖谷では3千人。祖谷は簡単には行けない所。わざわざやってくる場所だからそれでいい。
地域にとっては、観光ビジネスによる消費額も大事だが、コミュニティ作りも大事。
古民家という文化的価値をしっかり残したい。アルミサッシを入れたりすれば文化的価値が違うものになる。観光客が必要とするものもあれば、必要としないものもある。
ハートがあっての“おもてなし”があるから日本は好かれている。クオリティを上げることが重要。

新津:酒蔵に行く時、事前に酒蔵の歴史や酒作りについて学んでもらったほうが、杜氏さんと写真を撮ったり、お土産を買うという行為が増える。ストーリーを伝えてから行くと満足度が高い。(NTTデータの調査)

竹内:リーマンも東日本大震災も経験したが、底を打った時に諦める人が大勢出た。強い思いがなければ続けられない。稼ぐということは大事だが、今回のコロナで、インバウンドは来ない状態が続くが、そのような状態でもトントンになるように事業を継続することが大事。あがいて、あがいて行くしかない。

Dong Lu:コロナは100年に1回の災難。生きるしかない。マーケット全てがダメになるのでは無いので、必ず伸びる産業があるので、探すしかない。絶対に諦めてはいけない。

アレックス:今は、これまでの観光のあり方を考え直す。洗い直すチャンス。
「外国人向けにどうすれば良いか」「日本人向けにどうすれば良いか」と聞かれることにがあるが、今は、日本人も外国人もニーズはほぼ同じ。祖谷も最初は外国人向けを狙ったが、結果、日本人が8割。
日本人には潜在的なクオリティに対するニーズがあるということ。日本人向けにクオリティの高いサービスを考えるチャンスだ。

新津:「観光」はハイリスクハイリターンのビジネスの世界。安定したビジネスを考えるのなら最低6ヶ月維持できるキャッシュフローにしなければならない。
こういう時こそ、地域全体でやらないとダメ。私の店はマスクを着けていますとPRしても意味がない。地域全体がマスクを着けていますと言わなければならない。