国内旅行者の誘致で重視すべきことは? インバウンド消滅の今だからこそ考えたいマーケティング戦略【外電】
(トラベルボイス 2020年10月7日)
https://www.travelvoice.jp/20201007-147141

【ポイント】
インバウンドが皆無になるなか、観光客がどこから来るのかは重要な指標になる。
DMOは、これらマーケティングデータを把握して、地域マーケットに対する説明責任をこれまで以上に求められるという。
地域住民と旅行者が求めるもののバランスをとることが、今まで以上に求められ、新型コロナ感染に対する恐怖と、経済活動の両立のためにも注意を払わなくてはならない。

【 概 要 】
世界中で観光目当ての旅行者によるホテル予約が、ゆっくりと回復に向かっている。
レジャー客の動きは、近場からの旅行需要が活発になっている。

DMOは、地域マーケットにおける自らの地域に対する説明責任がこれまで以上に重くなっている。各種の健康指標を永続的にチェックしながら、対策を立てることが求められている。
前年対比の成長率によるベンチマーキングでは全体像しか把握できない(今なら‘悪化’となる場合が多い)。それよりも訪問客をセグメント別に分けて、成長率を把握するべきだ。デスティネーション側は、自分の地域を中心に円を描き、ローカル圏、2時間ドライブ圏、5時間ドライブ圏、航空便利用圏それぞれについて状況をチェックする必要がある。
こうすることにより、いま対応するべきなのはどういう旅行者なのかが把握できるようになり、マーケティングする相手が、地元のローカル客なのか、ドライブ旅行の市場なのか見えてくる。
例えば、近隣の町からは旅行者が来ているが、地元客は動いていないのかもしれない。

観光客誘致により、地域コミュニティが受ける効果は、特定のビジネスだけでなく広範囲に及ぶ。
ホテルの客室が埋まるだけでなく、地元の飲食店や小売ショップ、そのほか様々な事業者も、将来的な旅行者にとって、魅力あるデスティネーションかどうかを左右するエコシステムの重要な要素だ。
地元事業者と普段から緊密なコミュニケーションがあり、地域のみんなが協力し、お互いを支え合うコミュニティを実現するために、どうしたらよいか考えられるのが理想的だ。
居住者の感情と旅行者の求めるもののバランスをとることは、経済活動の再開を段階的に進めつつ、パンデミックの状況次第では営業制限も繰り返される状況では、特に重要になる。
DMOは、地域住民の感じていることを調査するべきだ。時間の経過に伴いどのような変化が起きているのか、マーケットの動きやDMOの戦略方針に対する反応はどうか。住民や事業者が抱えているトラベル関連の問題にフォーカスすることが必要不可欠だ。

ヒートマップなどの位置情報データを活用すれば、デスティネーション側は、人々の移動状況や、どこに多くの人が集まっているかが分かる。二酸化炭素や水、電気の消費量をチェックし、旅行者の行動分析に役立てているデスティネーションもある。
こうした手法は、テーマパークなどでの混雑回避に大きく役に立ちそうだ。あるいはニューヨークのハドソン・ヤードなど、町の新エリアへ人々をさりげなく誘導するにも良さそうだ。

地域全体のデスティネーションとして、訪問客の消費動向をチェックするのがよい。レストラン、ガソリンスタンド、小売店、観光アトラクション施設などへの訪問者増は売上アップに大きく貢献し、地元の人々や地場産業に恩恵をもたらすカギになる。
一方、観光需要の減少による地域コミュニティへの打撃は、ホテル稼働率や入場券売上の減少だけにとどまらず、さらに大きな痛手となる。地域住民を巻き込んだツーリズムとは、売上拡大を実現することもDMOの責務だ。
近隣エリアからの旅行者や、地元のお客様を増やすことで得られるプラス効果を測定することも、ツーリズムが生み出す価値を地域の人々に知ってもらい、旅行をよりポジティブに見る効果がある。

いま重視するべきは「デスティネーションのマーケティング」よりも、「場所をマネジメントする」ことだ。言い換えるなら、住民と事業者、それぞれの心配事に対応し、コミュニティ内のよい関係性を築くための説明責任を果たすということだ。同時にデータをうまく活用することでマーケットから得られる利益を最大化し、地域が受け取る恩恵をできる限り大きくすることだ。
アカウンタビリティによって地域コミュニティは一つにまとまり、目標達成へと動き出す。

※この記事は、世界的な旅行調査フォーカスライト社が運営するニュースメディア「フォーカスワイヤ(PhocusWire)」から届いた英文記事を、同社との提携に基づいて、トラベルボイス編集部が日本語翻訳・編集したもの。