現金が世の中から消えたら(NHK NEWS WEEB  2020年1月22日)https://www3.nhk.or.jp/news/html/20200124/k10012257781000.html?utm_int=news_contents_tokushu_002

キャッシュレス決済が日本でも普及し始めている。小銭を持たず、速やかに決済でき、ポイントがつくので重宝する。ただ乱立気味のPey。どれを使って良いのかわからず、時には決済できない時もある。ウェーデンの現金の流通量は1%余り(日本は約20%)といい、「現金NG」という店舗まであるという。
国民の7割が「Swish」というアプリを使う。QRコードや電話番号で銀行口座から送金できる。しかし、80代以上でスマホアプリを使いこなせない方もいる。また「Swishは銀行口座にひも付く「Bank ID」が必要」で、外国人などは使うことができない。また、電波が混み合う時はスマホ決済ができないなどの課題もある。
スウェーデンは、通貨クローナをデジタル化した「eクローナ」の発行を検討している。キャッシュレス決済を早く進める必要はあるが、電子マネーなど早計な導入は禁物だ。

【ポイント】日本でも急速に広がっているキャッシュレス決済。一方、世界はもっと進んでいる。スウェーデンはその筆頭だ。現金の流通量が国の経済規模に比べて1%余り(日本は約20%)。

スウェーデンの首都ストックホルムは、空港のコンビニ、市内のレストラン、駅の券売機などで当たり前のようにスマホ決済機器やクレジットカード・リーダーがあり、デジタルマネーの受け取りしか想定していないようだ。レストランでは、レジの横に「現金NG」と書くところまである。デパートの有料トイレでも、クリスマス・マーケットの小さな商店でも、デジタルマネーありき。国民の7割が「Swish」というアプリを使っている。スウェーデンの銀行がIT企業と共同開発したもので、QRコードや相手の電話番号を使って、自分の銀行口座から相手の口座への送金が手軽にできる。しかも個人が負担する手数料はゼロだ。2012年に始まり、スウェーデンの“脱現金”の動きに大きく寄与した。

80代以上の人はスマホアプリを使いこなせないといった課題もあると言う。また「Swish」を使うには現地の銀行口座にひも付いた「Bank ID」が必要だ。このため、外国人などは使うことができない。また、混雑する時間帯には電波が混み合いスマホ決済ができないことがある。現金の利用はゼロではない。このため店舗は売上金を管理する必要があるが、“現金を扱わない銀行の支店”も多いという。

“脱現金”の流れに世界最古の中央銀行、スウェーデンのリクスバンクが検討しているのは法定通貨クローナをデジタル化した「eクローナ」の発行だ。国が価値を保証し、デジタルマネーの時代になっても誰もが利用できるようにすることが狙いだ。国民一人一人が中央銀行に口座を設けるなどの案を模索している。

eクローナの議論に拍車をかけたのが、去年6月に米フェイスブックが打ち出した「リブラ」構想だ。ドルやユーロ、円といった複数の法定通貨を裏付けにして発行を目指すデジタルマネーだ。ザッカーバーグCEOは、世界の全人口の約3分の1にあたる27億人のユーザーを対象に「写真を送るような感覚でお金も送れるようにしたい」と主張する。
しかし「リブラ」の利用が拡大し、国民が法定通貨に両替しないようになれば、中央銀行を介さないお金が増えてしまう。各国は金融政策の効果を失うおそれがあるとして、警戒が広がっている。
「リブラ」構想が発表されたあとの去年11月、スウェーデンの中央銀行は報告書でフェイスブック、グーグル、アマゾンの名前を挙げて「大きな顧客基盤を持っていることから一気に支配的な地位を築きかねない」と指摘。巨大IT企業に主導権を奪われることに懸念を示した。

災害時でも使えるか。金融システムへの影響はどうか。お金の流れがデジタル化され、国家が情報を握るようになれば国民のプライバシーを守れるか。スウェーデンの中央銀行は、こうした課題を踏まえて、今年中に、eクローナのプロトタイプを国民に示したい考えだ。

キャッシュレス決済は、現金を持ち歩かなくてすみ利用者にとって便利だ。店舗側の人手不足対策など、日本経済の構造的な課題解決につながる可能性を秘めている。しかし「多くの人にとっての便利さを追求すると、取り残された人はとことん不便になるのではないか」という疑問もわく。スウェーデンの“お金”がこの先どうなるのか、日本も学ぶことが多い。