日本インバウンドサミット2020 基調講演
『コロナ渦の観光・インバウンド戦略』
星野 佳路 氏(星野リゾート 代表)
https://inbound-summit.com/#speaker

コロナ渦で需要予測が困難なかでも、従業員の不安を取り除くため、経営者は予測して、見える化して伝えることが大切として、18ヶ月の予測を発表された。
社内ブログで『星野リゾートの倒産確率』など危機意識の共有に務めた。しかし「インバウンドには今は打つ手なし」「労力を使うだけ無駄」と発言され、この時期だからこそできることとして、「地域格差」「ターゲット国の分散」「需要の平準化」「自然観光の強化」を挙げられた。「マイクロツーリズム」を推進し、緊急事態でも9割減の影響でなく6割減に減らすことで生存確率が変わる。コロナ渦における観光のあり方を、このように語られた。
星野屋の予約の解析では、3/2小池都知事の記者会見がキッカケで予約が下がり始め、4/12七都府県に緊急事態宣言が出たときに底を打ち、5/3緊急事態宣言が延長になった瞬間に予約数が上がり始め、6/末 感染者数が増え始めた時に予約が増え始めている。消費者は、政府発表前から状況をよく読んでいるとの分析は、日本人の分析能力の高さを感じさせた。

【ポイント】
このサミットは、14:00開始、17:40終了と長時間で、3000名が参加したサミットでした。
刺激的な内容も多かったですが、基調講演の星野佳路氏の話をまとめましたので、お伝えいたします。
本日の内容はMATCHAのホームページにユーチューブで配信されるそうです。
https://inbound-summit.com/live

・星野リゾートでは、国内外で45の施設を運営している。
・コロナ渦で大変なことが起きていると感じた。社内ではキャンセル対応に追われるなど混乱した。
・そのような中だからこそ、どのように進むか分からなくても、経営者は予測をすることが大事。
・18ヶ月の問題として捉えようとして、需要予測のプランを考えた。

コロナ渦の基本3大方針
① 現金を掴み、離さない
② 人材を維持し復活に備える
③ CS・ブランド戦略の優先順位を下げる

社内ブログへの発信頻度を高め、危機意識の共有に務めた。
最初は人気を博したが、その内に見られなくなり、より刺激的な方策を考えた。

『星野リゾートの倒産確率』について、いろいろシュミレーションした結果を発信し、社員にみえる化した。それが一番人気になった。
真面目に計算して、生存確率を算出した。

そして海面スレスレで、V字回復することを願って考えた。

しかし、「インバウンドには今は打つ手なし!」
労力を使うだけ無駄!

この時期だからこそできることを考えた。
「地域格差」、インバウンドも都市圏に集中して、地方には広がらなかった。地方に広げる方策が重要。
「ターゲット国の分散」、ターゲット国を決めることでインバウンドは増加したが、数が増加しただけ。
ターゲット国を増やすことで分散化。
「需要の平準化」、需要を平準化して、宿泊稼働率を上げるとともに、地域の混雑緩和も計る。
「自然観光の強化」、これまでのインバウンドは都市部に集中している。日本には素晴らしい自然環境があるが、この自然環境を活かしてなかった。ここを強化する必要がある。

3蜜回避は、普通のこととなったので、次々と改革を進めた!
ビュッフェは一度やめることとしたが、客から「やめるのでなく改善しろ」と要望があり、「新ノーマルビュッフェ」として復活した!
大浴場の混雑度合いも見える化。客が自らスマホで検索し確認するようにした。

「マイクロツーリズム」を商圏にしようと言ってきた。
自治体は都市圏でものを考えるが、県境を越えて客はやってくる。
各地域が「マイクロツーリズム商圏」と言う概念を持ってもらって、緊急事態宣言が出た時も、影響が9割減でなくて、6割減にすることで生存確率も変わってくる。

こう言う市場は昔からあった。
「マイクロツーリズム市場」にいた人も、遠くに行きたいと思い、料金も安くなったので、遠くに出かけるようになり、市場が小さくなった。
もう一度、「マイクロツーリズム市場」を掘り起こして、分厚くできないか?
それにより、「需要の増減」に耐えやすくすることが大切と考えている。

【星野屋の予約データからの解析】  (予約数―キャンセル数=純増減数)
3/2 小池都知事の記者会見がキッカケで予約が下がり始めた。
4/12 7都府県に緊急事態宣言が出たときに底を打って、そこから上がり始めた。
5/3 緊急事態宣言が延長になった瞬間に予約数が上がり始めた。市場は二度目の延長はないと感じた。
6/末  感染者数が増え始めた時に予約が増え始め、今日(7/23)、東京で300名の感染者を出し、キャンセルも増えているが、急激に予約数が落ちないと予測している。
GoToは、8月後半から始めるのが良かった。
消費者は、政府発表の前から、これから先の状況をよく読んで、理解して、行動している。

星野リゾートで「2020年末までの国内旅行の意向」調査を6月末に2万人に実施した。
「行っても良い」42%、「迷っている」31%、「行きたいと思わない」27%という結果になった。
「迷っている」のは、「行って良いのか分からない」「誰も行っても良いと言っていない」という、常識派の人の意見になった。

【長いコロナ期の目標】
「3蜜の徹底」
「売上マイナス40%以内」
「コスト削減15%以上」を設定。
GOPは25%〜30%で設定しているが、これにコスト削減の15%を加えると、「売上マイナス40%以内」に抑えられる。
利益的にトントンにして、危機を乗り越えたい。

そのために「マイクロツーリズム」「需要の平準化」はどうしてもやり遂げないといけない。
政策的なサポートは「GoTo」「県境規制」「雇用調整助成金」。
「雇用調整助成金」は効いている。「移動規制」は全国一律でなくて、「キメの細かい県境規制」をすることで、「マイクロツーリズム」が活きてくる。

インバウンド観光は、直ぐには回復しない。
長期的には、近いアジアからくるというボリュームゾーンは変わらない。
ターゲットを広げるべきで、欧米の1流の方はボリューム的には少ないが、これを引きつける魅力をつけていかなければならない。
アジアの観光客も1流を体験したいと思っている。
『イメージターゲットは欧米で、ボリュームターゲットはアジア』ということになる。
日本は自然観光に弱いので、ここを強化する必要がある。
冬、雪、国立公園、世界遺産… 何度でも訪日してもらうには自然観光が適している。