WiT Japan バーチャルを取材した、コロナ禍の旅行トレンドを国内OTAらが討論、模索が続く新しい旅のカタチも
(トラベルボイス 2020年7月15日)
https://www.travelvoice.jp/20200715-146620

世界的にバケーションレンタルの予約が増加傾向にあり、日本での予約も多く、マイクロツーリズムとドライブ旅行が増加しているという。
旅行の意識調査で最も重視する点は「感染防止」。一方、「割引」を求める人は非常に少ない。
宿泊施設のなかで「旅館」の回復が早い。部屋食など、パーソナルで伝統的なオペレーションが時代に合っているという。

【ポイント】
「WiT Japan & North Asia バーチャル」が7月3日に開催された。モデレーターはWiT創設者のイェオ・シュウ・フーン氏が務め、パネリストとして楽天トラベル執行役員・トラベル&モビリティ事業長の高野芳行氏、ベルトラ最高技術責任者の坂水健一郎氏、ベンチャーリパブリックCEOの柴田啓氏、サヴィーコレクティブCEOの浅生亜也氏が登場し、コロナ禍の日本の旅行市場の見通しについて議論した。

新しい傾向で動き出す国内旅行
LINEトラベル.jpと旅行情報サイト trip101の直近データから、マイクロツーリズムとドライブ旅行の傾向を指摘したほか、「世界的にバケーションレンタルの予約が増加傾向にある。日本での予約もアメリカに次いで多くなっており、非常に興味深い」とし、理由としてリモートワークの拡大を挙げた。

国内旅行予約状況について、緊急事態宣言解除後から緩やかに回復している。レンタカー予約も、国内旅行予約の回復スピードと合わせるように伸びている。
楽天トラベルでは、提携宿泊施設に対して感染防止対策の徹底を呼びかけており、同社が提供する対策チェックリストには7月1日現在で1万5000以上の施設が参加している。
今年5月のユーザーの意識調査によると、新型コロナウイルスによって宿泊施設の選択基準を尋ねたところ、25%以上が「変わる」と答えた。最も重視する点は「消毒・衛生対応」。
一方で「『割引』と答えた人は非常に少なかった」ことを特徴として挙げた。

2019年の日本人国内旅行消費額は約21兆9000億円で、旅行市場全体の78.5%を占め、訪日外国人旅行4.8兆円の約4.5倍にもなる。近年インバウンド市場が急速に成長したが、国内旅行市場が旅行産業の屋台骨を支えているのに変わりはない。

WiTバーチャルのライブアンケートで「国内旅行ビジネスだけで今年乗り切れるか」と質問したところ、全体の52%が「はい。しかし、もっと早く市場が動き出す必要がある」と回答。「いいえ。競争が激しい」が23%。「いいえ。自国の国内旅行規模は小さすぎる」が27%。
視聴者は日本からだけではないが、「はい」は日本人視聴者が多いと思われ、「もっと早い市場の動きが必要」にはGo To キャンペーンへの期待が含まれていると推察される。

模索が続く新しい旅のカタチ 今できることとは…
ベルトラの坂水氏は「アウトバウンドが戻るのは相当時間がかる。今は新しい国内商品の開発を積極的に進めている」と説明。また、現地のツアーガイドや旅行のプロフェッショナルからの情報を配信する「ベルトラKite」を挙げ、コンテンツビジネスを強化する。

浅生氏は「コロナ以前から、ホテルのあり方をずっと考えてきた。ライフスタイルの一部として、宿泊以上のものを提供できるのではないか」と発言。
バケーションの滞在だけでなく「法人のサテライトオフィスとしての役割もありえる」とした。また、ウエディングでは、オンラインとリアルとのハイブリッド型ソリューションも検討しているという。

柴田氏は、コロナ禍でもLINEの利用回数やテキスト・スタンプ・画像送信数が伸びていることに着目。接触機会を避けるウィズコロナでは、重要なツールになっていることから、将来の旅に向けてターゲットを絞ったメッセージを送る必要性を指摘した。
LINEトラベルjpでは、箱根「一の湯別館」の期間限定割引を関東、静岡、山梨在住ユーザーのみに送ったところ、48時間で780人泊が売れた。

2回目のライブアンケート「どの宿泊施設の回復が早いか」で、最も多かった回答が「旅館」だった。
浅生氏は「部屋食など、パーソナルで伝統的なオペレーションがこの時代に合っているのではないか。旅館はインバウンドを受け入れるためにオペレーションを変えてきたが、国内旅行者受け入れるために、従来の方法に回帰していくだろう」とコメントした。

高野氏も「国内で素晴らしいコンテンツを持っている。新しい生活様式でも強みを持っている」と発言。豊富な旅館在庫を抱えており、国内市場での大手外資OTAとの競合に優位性があると自信を示した。

モデレーターのシュウ・フーン氏は、「若者の需要刺激が必要ではないか」と問題提起。それに対して、高野氏は楽天トラベルが今年4月に実施した旅の思い出の写真をシェアするSNSイベントを紹介し、「5000枚以上の写真が投稿された。将来の需要喚起の方法のひとつだろう」と発言した。

柴田氏は、オンラインコンテンツの重要性を指摘。LINEトラベルjpの「旅行ナビゲーター」によるストーリーや体験をシェアすることが需要につながるとの考えを示し、坂水氏は「スマホによる日帰り旅行予約がカギ」と指摘。そのうえで、若者でも今後はよりパーソナライズされた旅が求められると付け加えた。