コロナ禍の旅行業界低迷による世界の経済損失、2年で約440兆円と試算。安全な観光再開には途上国のワクチン普及がカギに
(やまとごころ 2021年7月2日)
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【ホッシーのつぶやき】
世界の観光損失は、2020年に2.4兆ドルだったが、2021年も同じレベルになると予測されている。
ワクチン接種が進む欧米の国際観光がこの夏から始まろうとしているので、その動向を見ることになるが、それでもコロナ禍前の水準に戻るのは2023年以降になるという。
途上国は特に深刻な打撃を受けているといい、観光への影響だけでは済まないのかもしれない。
ワクチン接種が拡大して、コロナが収束するのを願うばかりだ…

【 内 容 】
新型コロナウイルス感染症によるパンデミックで、観光産業は世界的な大打撃を被っている。6月30日にUNCTAD(国際連合貿易開発会議)が、UNWTO(世界観光機関)と共同で発表したレポートによると、その衰退は世界経済をも大きく後退させており、2020年から2021年にかけて、世界で約4兆ドル(約440兆円)のGDP(国内総生産額)を損失していると試算した。国際旅行者数が激減した2020年の損失は2.4兆ドルにのぼり、2021年も同じレベルの損失を予測。その復活は、ワクチン接種の世界的状況に大きく左右されるとみている。

ツーリズム産業の経済損失に関する3つのシナリオ
レポートでは、パンデミックによる2021年の世界経済への影響と損失を推測し、迎える状況によって異なる3つのシナリオを描いた。
1つ目は、3つのうち最も悲観的なもので、国際旅行者数が2019年比で75%減少すると予測しており、その場合のGDP損失額は2.4兆ドル(約264兆円)だ。2つ目は国際旅行者数の減少率が同65%減の場合で、損失額約1.7兆ドル(約187兆円)。3つ目の最も楽観的なシナリオでは、ワクチン接種率が高い国で国際旅行者数の減少率37%、接種率の低い国で75%とし、損失額は1.8兆ドル(約198兆円)と試算している。
また失業率は国の観光産業への依存度によって異なるが、スキルを必要としない労働力において最大で15%、平均で5.5%の上昇があるとみている。発展途上国の総被害額は最小で世界GDPの52%、最大で60%と、発展国を上回り、いずれのシナリオにおいても発展途上国が強い打撃を受けることが予想されている。

コロナ禍前の水準復活は2023年以降に
フランス、ドイツ、スイス、イギリス、アメリカなどワクチン接種が進む国々では国際観光の速やかな復活が予測されているが、それでもコロナ禍前の水準に戻るのは2023年以降になるとしている。UNCTADによると、2021年の後半にはリバウンド現象としてツーリズムの若干の復活が予想されているが、それでも2021年における損失は1.4〜2.4兆ドルになると試算した。以下は、各国政府の経済刺激政策の影響を考慮しない純粋に旅行者数の推移を予測したものである。

図表からもわかるように、途上国は特に深刻な打撃を受けており、2020年の国際旅行者数は60〜80%と大きく減少した。国際観光への影響が特に強かった地域は北東・南東・南アジア、オセアニア、北アフリカで、影響が少なかったのは北アメリカ、西ヨーロッパ、カリブ地方となった。

国際旅行者数の減少率は2021年四半期で84%と昨年より悪化
去年7月、UNCTADはパンデミックの影響で国際観光産業は4カ月から12カ月間停滞し、その世界的損失は1.2兆〜3.3兆ドルになると試算したが、実際の停滞期は15カ月になり、予想被害金額を大きく上回った。UNWTOによると、国際旅行者数は2020年1月〜12月の期間で10億人、約73%の減少をみた。また2021年の四半期の減少率をみると、84%と昨年よりも悪化している。

発展途上国のワクチン普及が安全な観光再開のカギに
UNWTOの事務局長は「安全な観光再開をサポートするためには、多くが観光に依存する発展途上国のワクチン接種率をあげることが重要」とコメントしている。レポートでは、先進国の予防接種が着々と進むなか、ワクチン普及率は世界的にまだまだ足並みが揃わず、接種が進まない多くの途上国が引き続き甚大な損害を被る可能性を指摘した。

※1ドル110円で換算