タビナカ業界を席巻しはじめた「グーグル」、次の起きることと競争に勝つためにすべきことを考えた【外電】
(トラベルボイス 2019年8月3日)
https://www.travelvoice.jp/20190803-132445

現地ツアーやアクティビティを扱うビジネスが激化している。しかし同じコンテンツを販売チャンネルを変えたものがほとんどで、アクティビティに新奇性が感じられない。
グーグルが「コミッション率0%」で、アクティビティの予約に参入しているようだ。
過去の旅行の情報量では、グーグルにかなわない。グーグルがこの分野で勝者になるだろうとのレポートだ。

【ポイント】
現地ツアーやアクティビティを扱うビジネスは、ホテル予約(またはホテルと航空券のセット予約)に強いOTAが勝利すると予想していた。

最近の注目株は、ゲットユアガイド(GetYourGuide)、クルック(Klook)、エアビーアンドビー(Airbnb)など、「垂直型」に事業を拡大している企業だ。
彼らは、消費者への予約・販売から実際に体験を提供するところまで、一貫して自社ブランドで展開し、その強みはイノベーションを迅速に進められる点にある。
グーグル/アンドロイドの新サービスが、旅行リテールにおける変化をさらに加速する。

グーグルが開発中のサービス「Googleで予約(リザーブ・ウィズ・グーグル:Reserve with Google)」。OTAは、グーグルの「コミッション率0%」の好待遇と引き換えに、自社の重要なデータをグーグルに渡している。

• サプライヤー各社は、OTAに対する間違った警戒感から、非オンライン旅行会社との取引を増やすべきだと確信している。そこでグーグルに頼ってしまう。
• ベンチャーキャピタルに支援されているOTAは成長を急ぐ。なぜならVCは成長率で評価する。

サプライヤー各社が予約システムを整えるようになり、OTA側は、現地ツアーやアクティビティの在庫確認や予約がスムーズになった。だが同時に、サプライヤーのデータがリテール側に筒抜けになり、情報のガードは脆弱になった。
プロダクトの契約担当チームと開発担当者が12カ月を費やして、タビナカプランのサプライヤーの予約システムに接続できるようになったら、“壁”はなくなったのと同じだ。

航空会社やホテルチェーンは、こういう時、パートナー企業の力を借りる。しかし有能なチームと百万ドル規模の資金があれば不可能ではない。
データによる防御壁がなくなった状態で、グーグルがローカルツアーサプライヤーのメタリテーラーとして動き出せば、これまでのリテール戦略に勝ち目はない。勝者はグーグルだろう。

• 人手によるキュレーションでもAIを使ったマシンラーニングでも、顧客に対するキュレーションや提案力を磨くことだ。成功に欠かせないのは、大量の顧客データ(例えば前回、同じ都市に旅行したとき、どんな体験が気に入ったのか。逆に、気に入らなかったこと、その理由など)。
旅行先での現地ツアーやアクティビティは、たびたび購入しないので、こうした情報は重要。

• 自立走行車両を活用したツアーのプラットフォーム運営会社オーツアー(Autoura)は、デジタル技術とモビリティ・プラットフォームを生かし、今までになかったタビナカ体験を作り出している。
クルック、ゲットユアガイド、エアビーアンドビーなども、自社ブランドを冠した独自のツアーや体験を商品化している。
現地ツアー&アクティビティのサプライヤーが、顧客とトラブルで悩んでいることは
• 独立して営業しているが、特定のブランド傘下にあり、そのマーケットプレイス経由で、同じ基準を守ったサービス提供を義務付けられている。
• 予算がある利用者は、シェフによるクリエイティブな料理を期待しているが、予約プラットフォームは、コモディティを扱う仕様にしかなっていない。

• サプライヤー:これまでのテクノロジー開発はリテール業務の改革に重点が置かれていた。一方で、現地体験やツアーそのものを変革し、これまでにないものを創り出すイノベーションは皆無だ。 • 非グーグル系リテーラー:キュレーションに力を入れる方向に戻るのか。顧客ベースは同じタイプが多く、キュレーション効果が期待できるか。キュレーションの後に続くプロダクトは“万人向け”のものか、それともマネジメントしやすい5万件の体験ツアーを取扱い、それなりの数の予約を、それぞれの契約各社に届けられるのか。

一般的なOTAの場合、抱えている顧客の嗜好はバラバラなので、プロダクトのキュレーションが成果を上げる可能性は薄い。結局、万人向けのプロダクトを中心に扱うことになる。
これがグーグルが参入しようとしている領域だ。
• グーグルの手に渡ったデータは、代金を払わない限り、入手することはできない
• グーグルはアグリゲーターであり、すべてのデータを集める。より好みはしない。
• 思い出に残るかどうかではなく「できるかどうか」、実際に対応できること(例:営業時間)にフォーカスしたコンテンツを提供するのが重要。
• グーグルは、プライベートツアーのガイドより、アトラクション施設の方が扱いやすい。
• グーグルは位置情報を活用することで、地元に詳しい人たちが提供する現地ネタや交通情報を案内する「ローカルガイド」サービスにも対応可能。
• AIによる対応を除き、グーグルはカスタマーサービスを提供しない。
• すべてのサービスが、すべてのグーグルサービスをサポートしている。

大手リテーラーにとって問題になるのは、同じ現地サプライヤーのプロダクトを扱っている場合だ。過去の旅行についての情報量では、グーグルにかなわない。
これに対し、垂直型に事業展開している各社(ゲットユアガイド、クルック、エアビーアンドビーなど)が、グーグルの猛攻撃に対する防御の壁は、多少は堅牢と思われる。