ファンづくり型地域振興から考える観光産業 ①
〜観光復興のカギを握る地域住民の笑顔の生み出し方~
(『観光のひろばZOOM』 2021年5月11日)

【ホッシーのつぶやき】
 『エピテック』の活動には目を丸くするほど驚きました。
 自らの大学時代が下地にあるのですが、学生たちの「やりたい」気持ちを大切にした”学生団体”を立ち上げ、その「やりたい」を形にするため”株式会社”を設立し、学生たちの思いを大切にしながら、社会事業に育てるといいます。これは”手法”ではなく”寄り添い”だと感じました。
 「泥んこバレー」も単なるイベントではなく、”地域の方と地域外の方をつなぐ活動”だといいます。そのため地域に入り込んで信頼関係を作り、地域の人とともに”次の時代につながる企画”を徹底して作り上げる。そして「泥んこバレー」をキッカケに、地域起こしのプロジェクトに繋げられていきます。

【 内 容 】
 5月11日の『観光のひろば』は、株式会社・社会起業研究所・学生団体それぞれの『エピテック』を運営、および運営サポートされている藤川遼介さんに登壇いただきました。(参加者44名)

【藤川遼介さんのプロフィール】

2012年 東京農業大学 国際食料情報学部 卒業
2014年 一橋大学大学院 商学研究科 修士課程修了(MBA取得)
総務省 地域力創造アドバイザー、観光庁 広域周遊観光ルート専門家
主な業務内容
• 観光まちづくり法人(DMO)立ち上げサポート
• 地域おこし協力隊導入設計
• 大学間連携サポート
• 地域住民プロジェクト立ち上げげ 例) ごご当地バレーボール大会 全国普及 プロデュース

 藤川さんのビジョンは「日本の快国(快い国)」、ミッションは「地域資源の最大化」であると冒頭にお話されました。
 次に「地域〇〇」の言葉の定義として、「地域づくり」「地域活性化」「地域おこし」など色々あるが、「地域づくり」は自治的施策であり“道の駅”など、「地域活性化」は経済的施策であり“名産品の創出や6次産業”、「地域おこし」は情緒的施策であり“シビックプライドや地域交流”を指し、これらを総称した言葉が「地域振興」であり、「地方創生」という言葉は、“都市部”に対して“地方”を対比させたスローガンだと定義されました。

 大学院での研究は「自治体webのレイアウト比較」で、当時の主流は文字ばかりの自治体が中心だったのですが、徳島県神山町のwebは写真の活用が上手く、ファーストビューの情報量が少なく、イラストを駆使されており、テキストを減らし、情報を探しやすくされていると分析されました。そして山形県朝日町に文字の少ないWebページのレイアウト を提案されています。

 株式会社・社会起業研究所・学生団体それぞれの『エピテック』の機能
 2011年の東日本大震災を契機に、東北地方の再生や発展を意識したそうです。そして、他の大学とも一緒に活動したいと仲間に話すなかで、学生団体を立ち上げられます。

 株式会社『エピテック』は“地縁とご縁を結ぶ”を理念に、地域コミュニティの形成から、地域経済の循環における伴走として、コンサルティング、企画、そしてプロデューサーとして若手の育成から運営まで関わるといいます。
 注目したのは、学生との関わりの中で若者の考え方の変化も感じています。
2010年頃は「社会起業」の関心が強く、2014年頃は「地方創生」に関わりたいと変わり、その後「就活」を意識した という現象が出てきて“インターン制度活動”が主力になって来た影響で大きな変化が生まれます。2021年は、コロナ禍の影響もあり、インターン先で、活動に制限がかかったことから、より「自己成長」につながるものへの関心が強くなっているといいます。
 これまでの活動を通して、学生の「〇〇やりたい」を尊重発見し(学生団体エピテック)、大人が「よし分かった」と学生の背中を押してやる(株式会社エピテック)という形を作っています。ことで、大人が責任を持てる範囲の仕組みの中で、学生が個性を出すという形の方が学生が発案したものは学生の責任で行い、今の学生は伸び伸び活動できるみたいですここからは大人が責任を持つという形を思いつかれます。
 事業としては、プロジェクトチームを結成し、地元の方と相談して事業化するといい、エピテックの強みは、学生の信頼を得ていることにあるようです。

2000年頃から「泥んこバレー大会」が全国的に広がりましたが、これらは商業的要素が強く、私たちが目指すのは地域の方と地域外の方がつなげる活動でした。私たちが最初の取り組んだ「ご当地バレーボール大会(泥んこバレー)」は茨城県筑西市でした。

 プランニングにはこだわりました。地域の人と、電線一つ無い「地域に映える場所」を徹底的に探し、筑波山を背景にして、その横に“ひまわり畑”を作ったことです。そこでバレーボールをして、インスタ映えする写真や動画をあげて、人気スポットを作る活動へとつながりました。
 地元の方が「こんなに不便な土地に若い人など来ない」と言われていた所に、若い人が集まってくる実績から、成功体験を感じてもらいました。実際に、参加した女性参加者のインスタグラムなどへの投稿から、「泥んこになれる場所」「満開のひまわり畑」「写真を撮って楽しい」ということが伝わったといいます。そして、投稿した女性を中心に翌年は参加チームが倍増する程、より多くの参加者が集まりした。
 大会の運営や経費などをマニュアル化しており、このマニュアルを持っていることを聞きつけた地域から「私たちの地域でもやってほしい」と依頼が来ているといいます。

 「泥んこバレー」を行なった茨城県筑西市では、多くのお客様を受け入れた経験から、新たなプロジェクトが生まれました。
 そのプロジェクトは、毎日約2トンの余剰野菜が廃棄されている地域の課題に着目しました。この余剰野菜をダチョウに食べさせることにより、肉として販売し、家畜の排尿を堆肥にして土壌を整え、作物を作り、加工するという循環を、休耕地を使って作ろうという動きに発展しました。
 大分県宇佐市では麦焼酎「いいちこ」を作るときの残渣を使って土壌改良した循環も生まれています。岩手県二戸市でも日本酒の「南部美人」とコラボしながら、地域振興する取り組みも行いました。福井県南越前町では、泥んこバレーのような企画を象徴に地域体感宿として地域交流を目的としたゲストハウスが誕生しました。これらの取り組みは、若い人に来てもらい知ってもらうキッカケをつくるために「泥んこバレー」を広報的な活動として活用しました。