フードツーリズム研究会フォーラム『関西の食文化とフードツーリズム』に参加した。尾家先生の基調報告「フードツーリズムの現状と課題〜関西のガストロノミー〜」をご紹介する。

じゃらん宿泊旅行調査2010によると、宿泊旅行の目的は「地元の美味しいものを食べる」が17%、「温泉や露天風呂」17%、「名所・旧跡の観光」15%、「宿でのんびり過ごす」14%になっており、「食」は観光の重要なファクターである。
また、「あなたはこの1年間で、食を目的とした国内旅行の経験はありますか」の質問に、日帰り旅行で41.2%が、宿泊旅行で42.2%の人が経験ありと答えており、今後の願望では、「是非行きたい」が39.6%、「機会があれば行きたい」が47.7%と、87.3%の人が「行きたい」と答えている。しかし、旅行先を尋ねると70%以上が北海道となり、“新鮮な食材を求める”域を超えていない。

関西の4事例が紹介された。
①京都府京丹後市の「丹後ばら寿司」は、京丹後地方に古くから伝わる祭寿司で、ばら寿司に入れる鯖そぼろが絶妙な味をなすという。2011年に開設したコミュニティレストラン「レスト新城(このしろ)」が紹介された。眺望がよく、美味しい丹後ばらずし定食がリーズナブルな価格で食べることができるという。
http://bara.ajiwaishoku.com
②奈良県五條市西吉野の「農悠舎王隠堂」は、築160年の古民家で、ここは南北朝時代に後醍醐天皇をかくまったことがあるという歴史を持ち、現当主は47代目で、日本屈指の農家の一つだという。自家製の食材で、薪をかまどで炊いたご飯。本格的な和食を振る舞ってくれる農家レストランという。
http://www.pref.nara.jp/nanbu/nouka/nouka-restaurant/ouindou/index.html
③兵庫県淡路市の「のじまスコーラ」は、2008年から淡路島の活性化に取り組んでいるパソナグループが、2010年に閉校した野島小学校をもとに、農業を中心とした加工品の開発や流通、販売、観光、等の機能を設け“地域交流の場”として蘇らせたという。2階のイタリアンレストランでは、著名な奥田シェフが調理する「リストランテ」あり、ここ「のじまスコーラ」から見る夕日は素晴らしいという。
http://www.nojima-scuola.com
④大阪府柏原市の「カラシモワイナリー」は大阪が誇るワイナリーの一つ。大阪府はかつてブドウ産地として日本一だったが、現在は9位に転落しているという。
ワイン製造をはじめた頃は販売に苦労したという。ワインを知ってもらうために、ワインの製造現場を見てもら浮ことが一番と、2010年にワインツーリズムを始めたそうだ。今では200名のボランティアがワイン作りを手伝う用に変わったという。
柏原市のブドウ品種はデラウェアが主体だ。このデラウェアで日本一のワインを作りたいと、たこ焼きに合うデラウェアで作ったスパークリングワイン「たこシャン」を2011年に販売された。2012年には大阪のワイナリー6社と「大阪ワイナリー協会」を発足させている。
ここが素晴らしいのは、ワインもさるものながら、地域の料理人や地域を愛する人との連携の場を作り、ツーリズムを実施するなかで、多くの人が関わり合う場ができているところにある。
(「カラシモワイナリー」の高井社長の話を加えてまとめた)
http://kashiwara-wine.com

最後に、“味覚は快楽だけを追い求めるのではなく、その場所の景観、暮らし、歴史、人とのふれあい、雰囲気を体験し、場所を記憶する”こと、すなわち『ガストロノミー』(美々学)に通じものであり、『フードツーリズム』に通じると結ばれた。

紹介していただいた場所は是非訪ねてみたいと思う。ただ単に旅行先で食事をするのではなく、『食』を訪ねながら、地域を知り、人を知る。セミナーで学んだことを追体験するための行動も『フードツーリズム』なんだろう。

http://www.foodtourism.jp