世界の海外旅行の消費額、2024年は過去最高で1.9兆ドルの見込み、2019年比2割増、今後はインドが躍進か ―英ユーロモニター調査
(トラベルボイス 2024年9月17日)
https://www.travelvoice.jp/20240917-156310

【ホッシーのつぶやき】
2024年の世界の海外旅行回数は約15億3000回(2019年比4.7%増)、消費額は過去最高の1兆9000億ドル(約275兆5000億円・2019年比2割増)だという。今後については、2029年までの5年間の平均成長率5.4%となり、2015~2019年の2.5%の2倍になると予想している。
UNTWOは「2030年には18億人が旅をする」と予測しており、当面「観光」が経済や人間活動に大きな成果と影響を与えることになりそうだ。

【 内 容 】
市場調査ユーロモニター社がまとめた世界の旅行市場に関する最新レポートによると、2024年の海外旅行回数は約15億3000回となり、パンデミック前の2019年(約14億6000万回)比で約4.7%増と予測している。

これに対し、海外旅行の消費額は過去最高の1兆9000億ドル(約275兆5000億円)に達すると予測しており、対2019年(1兆5700億ドル、約227兆円)で約2割増にもおよぶ。同レポートでは「2024年は、旅行産業にとって、価値主導の新しい時代への幕開けになる」との見方を示した。

世界の海外旅行市場の今後の動向については、2029年までの5年間の年平均成長率が5.4%となり、2015~2019年の2.5%を上回ると見通す。

一方、今後の問題点として、旅行市場の回復に伴い、人気観光地で再燃しているオーバーツーリズムや反ツーリズム感情の高まりを懸念している。「背景には、格差問題や様々なキャパシティ超過によるトラブル、住宅コストの高騰などがある」とし、戦略的な取り組みが必要になる3つの重点分野として「より高い価値をもたらす送客マーケットの取り込み」、「生成AIによるパーソナライゼーション」、そして「サステナブルな旅行・観光がメインストリームになること」を挙げた。

2024年の海外旅行消費額(推定値)を国別に見ると、トップ5は米国、ドイツ、中国、英国、フランス。今後の注目マーケットの一つはインドで、2029年には第6位へ躍進すると予測している。中国市場については、2026年までにパンデミック前のレベルに戻るとしている。

主な送客市場の消費額(2024年と2029年):ユーロモニター資料より

加速するデジタル化、生成AIで進むパーソナライゼーション
旅行流通については、生成AIによりデジタル化がさらに加速し、旅行売上に占めるオンライン予約シェアは、2024年の69%から、2029年には73%へと拡大すると予測している。モバイル端末での旅行予約が占めるシェアは、2024年は全体の3分の1以上(37%)だが、安全性の向上や便利な決済サービスの増加などにより、2029年までに44%に達する。

現時点では、パワーバランスで優位に立つのは引き続き仲介業者で、2024年のOTA対サプライヤー直販のシェア争いは55%対45%でOTAに軍配が上がる。とはいえ、生成AIの普及により、パーソナライズされた旅程作りや、自然な言語でのスムーズなやり取りが可能になれば、仲介業者が不要となるケースも想定されるとしている。

旅行予約チャネルの推移(2019~2029年):ユーロモニター資料より

カーボンゼロ、持続可能な旅が主流に
航空、ホテル、テーマパークなど、旅行カテゴリーの中で、今後5年間の年平均成長率が圧倒的に高い結果となったのは「鉄道」で、年平均成長率は12.7%。同レポートでは、2029年までに鉄道が移動手段の24%を占めるようになると予測している。理由は気候変動で、2050年までに排出ガス実質ゼロを達成するためには、大規模な脱炭素化が必須であり、航空機よりも鉄道の利用シェアが拡大するとしている。

同成長率の2~4位は「ガイド付きツアー」(8.8%)、「博物館、文化施設」(8.1%)、「国立公園」(7.5%)となり、ローカル文化や地域社会を楽しむ旅や、自然体験への関心の引き続き高いことが伺える。

出張などのビジネストラベルも変革を迫られている。大企業を対象としたサステナビリティ・レポートの義務化などが進み、出張のあり方を見直すことが課題となっている。ビジネストラベル市場がパンデミック前のレベルに戻るのは、早くても2027年と同レポートでは予測している。

※ドル円換算は1ドル145円でトラベルボイス編集部が算出