気候変動で消えゆく世界の紅葉シーズン、絶景エリアの迫力不足や色づきの遅れ、観光への経済損失も【外電】
(トラベルボイス 2021年10月24日)
https://www.travelvoice.jp/20211024-149779

【ホッシーのつぶやき】
今年の日本の秋は早々と気温が下がり、紅葉も期待できそうだが、アメリカでは、あまり紅葉しないまま落葉してしまう現象が出ているようだ。
温暖化を止めなければあらゆる自然現象が狂ってしまうのかもしれない。
日本酒やワインも、本州から北海道に酒蔵、ワイナリーを移転させている。自然と密接な関係のある産業ほど自然を敏感に感じるのかもしれない。

【 内 容 】
世界では干ばつのせいで、紅葉がピークを迎えることなく枯れたり、熱波で秋になる前に落葉してしまったり。激しいハリケーンに見舞われ、すっかり葉が落ちてしまう木々もある。
楽しい秋の行楽シーズンに欠かせない紅葉狩りだが、近年、気候変動が深刻な影響を及ぼしている。AP通信がこのほど報じた。

自然が織り成す色を愛でる秋の小旅行は、米国ではニューイングランド州やニューヨーク州をはじめ、全米各地に人気の高いスポットがある。しかし、ここ数年は、異常気象による異変も。地球温暖化により、こうした変化はさらに続く可能性が高いと、樹木や自然保護、生態・環境学の専門家たちは警鐘を鳴らしている。

米国では例年、9月末までには木々の葉が次々と暖色系に染まっていくのだが、今年は多くの地域で、夏の緑色のままだった。メイン州北部では、紅葉のピークは9月末頃になることが多いが、森林レンジャーたちの報告によると、今年は色の変化や落葉が遅く、9月末時点で、まだ全体の70%以下にとどまった。

気温の高い日が続いたデンバーでは、秋が始まったばかりなのに「葉の先端が乾燥し、枯れてしまった」と地域の樹木医、マイケル・サンドバーグ氏は話す。
「通常は少しずつ変化が進むのだが、今年は尋常ではない悪天候にやられた。気候の変化が急すぎて、早々に葉が落ちてしまった木も」と同氏。「ここ2~3年、紅葉シーズンは今ひとつ。以前は街中を軽くドライブするだけで、素晴らしい秋の色を楽しむことができたのだが」。

気候変動が紅葉の阻害要因になる理由を説明するには、植物の生態について少々、理解する必要がある。秋になって日照時間が減り、気温が下がると、葉を緑色に見せていた葉緑素が減り、代わりに他の色、黄色や赤、オレンジが目立つように。こうしてドラマティックな紅葉シーズンが到来する。
ただし、鮮やかな色を作り出す仕組みはデリケートなバランスの上に成り立っており、環境の変化に弱いとバーモント州バーリントンの米国森林サービス局(USFS)の植物生理学者、ポール・シェイベルク氏 は説明する。秋になっても気候が高いと、葉が緑色の時期が長くなり、人々が楽しみにしている紅葉シーズンのスタートは遅くなる。

さらに良くないのが夏の水不足で、木々にストレスを与え、紅葉しなくなるとシェイベルク氏。2003年に樹木生理学ジャーナルに掲載された調査(同氏も共著者の一人)によると、「環境的なストレスによって(葉の劣化が)加速する」。
「もし気候変動で干ばつがさらにひどくなれば、紅葉しないまま、葉を落とすだけの木が多くなるだろう」と同氏。「厳しい干ばつで、樹木の生体は機能しなくなり、紅葉の色付きはさらに悪化するだろう」。

実際、こうしたことは起きている。今夏、北米の太平洋沿岸北西部に押し寄せた熱波により、オレゴン州の気温は43度を記録。その結果、「葉が焦げる」と呼ばれる、早々に褐色化してしまう現象が生じているとオレゴン州立大学の森林エコシステム&社会学教授、クリス・スティル氏は指摘する。
スティル教授によると、葉の色素が退化すると、間もなく落葉してしまう。オレゴンの一部地域では、今年の紅葉シーズンはあまり期待できないかもしれない。
「熱波だけでも、紅葉に深刻な影響が出ていることが分かる」と同教授は話した。

その他にも、気候変動が引き起こす長期的な問題はある。地球の温暖化で、病気や害虫が拡散したり、温帯で生育する樹木が北へと広がることについて、ノーザン・アリゾナ大学のエコシステム科学教授、アンドリュー・リチャードソン氏は、いずれも紅葉の色付きにはマイナス要因と指摘する。
木々の紅葉が始まる時期は、昨今、秋の後半へと移りつつあるが、この傾向にはさらに拍車がかかると、雑誌「ヤンキー」で紅葉情報を担当するジム・サルジ氏は見ている。
「ここ10年ほどは、紅葉のスタート時期が、平均より遅い年の方が多かった」(サルジ氏)。

紅葉シーズンが盛り上がりに欠けると、経済的な影響も出る。ニューイングランド州政府関係者によると、毎年、秋の観光需要によって州にもたらされる経済効果は数十億ドル規模にのぼる。

こうした恩恵も理由に挙げつつ、環境保護活動家は、州内の森林保護や化石燃料の使用減に力を入れるべきだと訴えている。マサチューセッツ州でも昨今、秋の絶景シーズンは以前より迫力不足となっている。だが、必要な森林保護措置を実施することで、同州にとっては歴史の一部でもある紅葉狩りの伝統を継承していくことは可能だ、というのが自然保護協会の景観保護ディレクターで森林エコロジストのアンディ・フィントン氏の考えだ。
「広大で貴重な森林資源をそのまま完全な形で維持することができれば、我々にとってなくてはならないもの、きれいな空気と水、手付かずの森林、もちろん秋の楽しみもずっと失うことはない」とフィントン氏は話した。