(ダイヤモンドオンライン(東方新報) 2019年9月22日)https://diamond.jp/articles/-/215131

中国人富裕層が日本の医療サービスを注目しているといい、東京にある亀田京橋クリニックは今年4月、中国人専用の検査と診療サービスを開始したという。医療サービスのトラブルも増えている。①日本の健康保険制度を知らずに起こる診療費 ②美容整形に求める結果が異なる ③悪質な仲介業者などのトラブルだ。日本も関連制度を整備し、外国人患者の受け入れ準備を十分に行うことが必要だ。

【ポイント】中国人富裕層から注目されているのが日本の医療サービスだ。日本の医療機関でも外国人観光客を受け入れる動きが高まっており、今後の需要拡大が期待できる。だが、その一方で、トラブルも多発している。
亀田総合病院系列で東京駅の近くにある亀田京橋クリニックは今年4月、中国人専用の検査と診療サービスを開始した。
日本の医療は、技術やサービスの質、あるいはコストパフォーマンスにおいて世界の先端レベルです。亀田総合病院を訪れ受診する中国人は年間200人を超えており、手術や治療の予約は3ヵ月先まで埋まっているという。

中国からの顧客や患者により良いサービスを提供するため、同クリニックの外来では人員配置やハード・ソフトの両面で工夫をした。
中国語のウェブサイトを開設し、サービスの詳細を掲載。中国語ができる医師、看護師、事務員を配置。そして、予約を優先的に受けられ、優雅な部屋の中で、中国語通訳などVIPサービスを享受できる「特別診察室」を設けた。

亀田総合病院と中国との関わりは、すでに30年以上に上る。「1984年から中国人医師を受け入れて研修を行ってきた」という。同病院で研修をした中国人医師は現在、中国各地の病院で活躍している。「改革開放の初期にあった当時の中国の医療水準は低く、日中の医療協力として行われたが、実態は中国が一方的に日本から技術と経験を学ぶものだった。亀田総合病院にとってはコストを度外視した支援活動になった。中国人医師を受け入れることは利益を生み出さない上に、中国人医師に対して生活手当も支給した」
日中の医療交流の動きを政府も後押ししている。今年の3月28日、衆議院第1議会会館で日中国際医療フォーラムが開催された。両国の政府関係者、医療や法律関係者が、政策、法律、産業支援などの角度から両国の医療状況を紹介し、今後の医療交流と協力をどのように進めるべきか議論を行った。

中国大使館の阮湘平公使は「中国の健康と医療には巨大な発展の余地があるが、問題も抱えている。一方、日本は健康医療の領域で多くの成果を上げ、世界から高い評価を得て、中国が学ぶべき多くの貴重な経験を持っている。日本と中国はいずれも高齢化社会、高齢者の慢性病予防や介護などの問題に直面している。基礎研究や医療器械の開発、人材育成、作業発展などを協力して進め、ウィンウィンの関係を作り上げ、共同で問題解決能力を向上させ、両国の健康福祉事業の発展を進めるべきだ」と語った。
「日本社会の高齢化で医療・介護などの社会保障負担が増す中、民間活用で社会保障システムを改善することが望まれます。医療を一つの産業として発展させるためには、海外顧客へのサービスを拡大することが必要でしょう。一方、中国では経済成長とともに質の高い医療の需要が拡大しています。日本と中国が医療分野で協力すればウィンウィンの関係となることができるでしょう」と指摘する。
日本の医療サービス、中でも美容整形が増えているという。「中国の富裕層から見ると、日本は地理的に近い上、医師のモラルが高く、病院のサービスは良く、日本の病院は細かく管理が行き届いており、患者にとって環境が良い。また、日本では新しい医薬品や治療方法が比較的早く投入運用されています」。

医療サービスをめぐるトラブルは少なくない。
トラブルの原因の多くは、患者側の知識がないことによる誤解が多いという。
医療費を巡るトラブルだ。日本人や日本で長年生活する外国人は、健康保険制度に加入することにより、医療費の負担を軽減できるが、日本の健康保険制度を知らない外国人患者の中には「騙された」と感じる人もいるという。

医療関連で患者と病院の間でもめ事が起こりやすい一つが美容整形だ。
日本人と中国人では、個人差はあるものの、美容整形に求める結果が異なる傾向にある。
韓国の美容整形の医師は手術にあたり大胆な挑戦をし、患者に対して大きな措置を講ずることも少なくないが、日本人医者は総じて自然美を尊重し、「一見するだけでは整形したと分からないが奇麗になった」という結果を求める傾向にある。しかし、中国人顧客の多くが求めるのは「目を見張るような大きな変化」である。それゆえ、手術後の結果に不満をもつ患者が医師に対して再手術を求めるケースが少なくない。

悪質な仲介業者によるトラブルも起きている。
1日で終わる検査にもかかわらず、検査項目を複数日に分けることで手数料を上乗せする仲介業者もいると言う。「日本の大病院は通常、小さな仲介会社と提携関係を結びません。しかし、多くの仲介業者は自社のウェブサイトで大病院と提携関係にあると詐称しています。また、片言の日本語しかしゃべれない人が仲介者を自称したり、医学の知識がほとんどない人が医療仲介とか医療通訳になっています」と警鐘をならす。

中国の患者は、日本に来る前に、まず情報を集め、専門家の話を聞き、日本の医療制度や個々の病院の制度や特色などを理解することを薦めるという。
日本の行政や医療機関も関連制度を整備し、外国人患者の受け入れ準備を十分に行うことが必要だろう。

※『東方新報』は、1995年に日本で創刊された日本語と中国語の新聞です。