〈エビデンス不全〉国内12都市、国際会議の開催数「上げ底」
世界基準なら8分の1 内向き尺度、観光立国に影
(日本経済新聞 2024年8月26日)
https://www.nikkei.com/nkd/industry/article/?DisplayType=1&n_m_code=144&ng=DGKKZO83013600W4A820C2MM8000
【ホッシーのつぶやき】
国際会議の世界基準は、3カ国以上・持ち回り定期開催となり、日本では1回開いても3カ国・50人以上であれば計数される。世界基準での23年の開催は、東京13位、京都52位、大阪116位です。アジアではシンガポール2位、ソウル10位です。大阪のIR誘致の最大の理由は「国際会議に適した施設がない」ことでした。
国際会議を誘致する理由は、一人当たりの滞在時支出額がレジャー客の2倍もあるからです。
【 内 容 】
観光立国に欠かせない国際会議(総合・経済面きょうのことば)の実績評価が二重基準で曖昧になっている。東京など主要12都市の過去10年の開催数を世界基準でみると最少で8分の1程度に減ることが分かった。自治体によって議会への説明など公の場で国内基準の甘い数字を使う例は絶えない。グローバルには通じない内輪の尺度がまかりとおったままでは競争力の向上は一層遅れかねない。
国際会議に参加するビジネス客らは一般観光客より宿泊や飲食などの消費額が高い傾向がある。中長期的にもより大きな経済波及効果をもたらすとの期待から各国・都市が誘致に力を入れる。日本は2023年にまとめた観光立国推進基本計画で柱のひとつに掲げた。
日本経済新聞は政府が重点支援する東京や京都など12都市の14年度以降の誘致実績を点検した。コロナ禍の影響が大きい20~21年とデータがそろわない23年は除いた。
注目したのは日本政府観光局と、世界で普及する国際会議協会の物差しの違いだ。日本は1回でも開いて3カ国・50人以上の参加があれば数に含む。世界基準は、3カ国以上の持ち回りで定期開催など線引きが厳しい。
12都市の合計が最多となった19年は国内基準だと2964回なのが、世界基準だと402回になる。コロナ前はどの年も7~8倍の開きがあった。需要が回復途上の22年は411回と152回で2.7倍の差だった。
都市別で東京は最大6倍、京都は7倍の差があった。地方都市では10倍を超えることもあった。
国内基準は1997年に導入し、都市の誘致実績の評価などに使ってきた。政府観光局は「多くの都市に誘致に参加してもらうため、ハードルを低くする必要があった」と説明する。今なお「世界基準ではゼロの都市があり、国内基準でしか実績を把握しきれない」という体たらくが続く。
1989年に整備した大型施設の幕張メッセを抱える千葉市。市議会での2024年度予算案の審議の際、23年の実績を「46回程度」と答弁した。世界基準だと23年は4回、22年は0回の低空飛行だ。取材に対して担当課は「国際基準のデータは認識しているが、参考程度」と答えた。
施設存続のために10年代に損失補填を迫られた経緯があり、国際会議より誘致しやすい国内の音楽関連などのイベントに傾斜している。グローバルな視座で国際競争力を底上げするより、目先の稼働率を高めるのに精いっぱいの姿が浮かぶ。
観光政策に詳しい米セントラルフロリダ大学の原忠之准教授は「まずは世界での立ち位置を数字で示し、改善策を議論すべきだ」と話す。政府はかじを切りつつある。22年から支援の対象を世界基準の会議に絞った。24年度は会議施設の通信設備の補助金に「世界基準の誘致実績が1回以上」との条件を盛り込んだ。
国際会議協会の集計によると23年の東京の誘致数は世界の都市で13位。同じアジアでも2位のシンガポールや10位のソウルに劣る。京都は52位、大阪は116位だった。国別では日本は363回で7位。1990年代から7、8位がほぼ定位置になっており、政府目標の5位以内に届かない。
政策を練るための確かなエビデンス(根拠)は目の前にある。そっぽを向いていては、じり貧になりかねない。