国内財政/少子化問題 ~増え続ける債務残高を返済しなければ、日本は危うい
(~大前研一ニュースの視点 2021年1月8日)

【ポイント】
日本政府の債務残高は10月時点のGDP比で266%と米国のほぼ2倍になっている。
2020年度に新規国債発行が当初予算の32.6兆円から112.6兆円に膨らんだ。新型コロナ対策でやむを得ない面もあるが、返済に無計画でいることに大きな不安を感じる。
20年前の債務残高GDP比150%が、266%を超え、世界の中で突出している。
20年前、国の債務800兆円、地方の債務200兆円になった時に、財政改革や行政改革が叫ばれた。今一度、冷静に考えなければならないと思う。

【 内 容 】
国内財政 政府債務残高、GDP比突出
少子化問題 出生数、2021年80万人割れも
─────────────────────────
▼増加し続ける債務残高。返済の道を真剣に検討しなければ、日本は危うい
─────────────────────────
日経新聞は先月25日、「政府債務残高 GDP比突出」と題する記事を掲載しました。
国際通貨基金(IMF)が10月に公表した報告書によると、日本政府の債務残高は10月時点のGDP比で266%と米国のほぼ2倍に達すると紹介。
主要国で日本に次ぐ高さのイタリアでも161%で、2020年度に新規国債発行が当初予算の32.6兆円から過去最大の112.6兆円に膨らんだことなどが響いたとのことです。

これは非常に由々しき問題であり、将来的にこの問題によって、日本は大恐慌に陥る可能性さえあると私は見ています。
今の日本では、国が借金をすると、金融機関が買い、それをまた日銀が買って、我々国民の前からお金が消えているかのように見えます。
この中に年金などのお金も組み込まれているので、非常に恐ろしいと感じます。

日本は約20年前からGDP比で150%を超える債務残高でした。
その後、他国がなかなか150%を超えない状況の中、
日本だけはGDP比260%を超えるようになってしまいました。
国の費用負担として最も大きいのは、社会保障関係費で、2020年には35.9兆円も計上されています。
1985年には9.6兆円でしたから、35年で3.7倍に膨れ上がっています。
日本が社会保障費で対処していることについて、税金で負担せずそれぞれ保険を活用するなど、別の形で対応している国もあります。
日本もそのようなことを検討するべきだと思います。

社会保障関係費に次いで割合が大きいのは国債費で23.4兆円です。
利払いだけでも非常に大きな金額になっています。
当然のことながら、このような財政状況をずっと持続することはできません。
いつかどこかで破綻するのは目に見えています。

現状、日銀がETFを買い、株を買い、国債まで買いまくって、このような厳しい現実を隠しながら抱え込んでいます。
しかし、日本人は国民が危機感を持っていません。
日本の国債は、米国などのように他国が買っているわけではないので危険性はそこまで高くない、という意見もあります。
たしかに他国が保有する日本国債の割合は高くありませんが、いざ投げ売りしようと思えば、レバレッジをかけることができるので、決して安全とは言えません。
今のところ世界は、「日本人が落ち着いて買っているから大丈夫だろう」という見方をしてくれています。
しかし、実態としては日銀が仕組んでいるに過ぎないというカラクリに気づいたら、一気に投げ売りされる可能性もあると私は思います。

日本の将来性を考えるとき、人口が世界で最も早く減少しているという側面も見逃せません。
人口が減少することは、すなわち雇用人口も減少します。
給料を稼いでくる人がどんどん少なくなっていくので、債務を返済することはますます難しくなるのは自明です。
日本の状況は決して楽観視できませんし、そう考えて対応するべきだと思います。

先日、格付け会社フィッチ・レーティングスが日本国債の格付け見通しを「安定的」から「弱含み」に変更しました。
これに対し、日本は増税による対策が可能という意見もありますが、実際には非常に難しいでしょう。
長年、政治家が甘やかしてきたために、日本国民は増税に対して非常に強い抵抗を示します。
日本においては、増税という政策は非常に実行しづらい方法なのです。
それゆえ、野党などは消費税をゼロにしようとアピールしています。
しかし、そんなことを言っていても債務残高は増えるばかりです。

どうやって返済するのかを、きちんと向き合っていかなくてはいけないと思います。