新型コロナ感染拡大で日本型統合リゾート(IR)は開業プロセスはどうなるのか? 公募延期の自治体も
(トラベルボイス 2020年4月18日)
https://www.travelvoice.jp/20200418-145979

統合型リゾート(IR)は、日本の観光産業、経済社会を大きく変えるとみられてきたが、新型コロナの影響で見直しになる可能性が出てきた。
海外のIR施設はほぼすべてが閉鎖、収入がないなか従業員の給与や維持コストは流出し続けている。
IR事業者や日本企業も業績の悪化で、1兆円にも及ぶ巨額の新規投資をする背景にないという。

【ポイント】
新型コロナで世界経済が停止している今、統合型リゾート(IR)は予定通りに進むのか。

2019年秋に政府はIRの基本方針案を公表し、パブリックコメントを募集した。
このなかに、2021年1月から7月までに自治体から国に申請するというスケジュールが示されたが、このスケジュールはまだ確定していない。当初1月中に基本方針が決定される予定だったが、秋元司衆議院議員の逮捕などで、基本方針の決定が先送りされた。
IRの誘致を進める自治体は、2021年7月の締め切り日から逆算しスケジュールを立てている。
多くの自治体では、2020年内に事業者選定をし、その後、選定した事業者とともに区域整備計画を策定。地方議会の同意を得て、2021年7月までに区域整備計画を国に申請する予定だ。

新型コロナ問題の発生で、公募手続きを延期した大阪・横浜、国会でも議論に
3月27日、大阪府・市は、事業者選定の公募手続きを3か月延期することを発表した。日米間の往来が制限されているため、IR事業者との打ち合わせができないという理由だ。
4月6日の毎日新聞のインタビューによると、大阪市の松井一郎市長から公募手続きの再延期を伺わせる発言も出ている。
横浜市は、4月15日、実施方針の発出を2か月遅らせ、8月とすることを発表。国への申請期限が変わらない中、最大限後ろ倒しして2か月ということである。

国会でも、コロナ対応を理由に、IRのプロセスを見直すべきではないかという議論が交わされた。
野党からは「東京オリンピック・パラリンピックも延期した中でIRだけ予定通り進めるというのは違和感がある」「スケジュールありきでは後に大きな禍根を残すのは間違いない」という声が挙がった。
国土交通省は現時点では国への申請期限の延期はないとしている。

日本は新型コロナの水際対策強化として、4月3日から入国対象地域にマカオ・香港を含む中国、米国など49カ国地域を追加し、合計で73カ国・地域に拡大した。
4月8日から緊急事態宣言が発出され、国内での打ち合わせも行いづらくなっている。

経済活動が停滞しているため、IR開発の数千億から1兆円に及ぶ巨額の新規投資を決定しづらくなる。

海外のIR施設はほぼすべてが閉鎖されており、収入がない中、従業員の給与や施設維持費などのコストは毎日流出し続けている。コロナ騒動が収まっても、売り上げが戻るまでかなりの時間がかかるだろう。
日本企業も業績が大きく悪化しており、巨額の新規投資をする雰囲気にない。
金融市場も混乱し、IRという大規模投資に融資する余裕がない。

誰もが新規投資に及び腰のため、IRを計画しても随分とスケールダウンしたものになる可能性もある。
場合によっては、資金調達の目途が立たず、提案を見送る事業者も出てくるだろう。

今後、数十年間にわたり日本の観光産業、そして経済社会を大きく変えるとみられてきたIR。この行方は、想定外の新型コロナウイルスの出現により読みづらくなっている。