米メディアが考える「外国人観光客が戻っても、日本が儲からない理由」
(CPURRiER JAPON 2023年1月日)
https://news.yahoo.co.jp/articles/8782f86881932def057d63363a1e10ef84f094da

【ホッシーのつぶやき】
10年以上前、外国人は日本を物価が高い国と考えてきた。そして訪日した外国人は食事からホテルまで安いことに驚き、インバウンドブームが起こった。今、高付加価値化して富裕層を取り込もうとしている。神社などは地域の公共財と考え無料開放してきており、見直す必要性の論議が始まった。
日本人には従来に近い料金でとして、外国人向け料金と二段階にする必要がありそうだ。

【 内 容 】

2022年10月の個人旅⾏の受け⼊れ再開以降、日本を訪れる外国人観光客は急増している。しかし、米メディア「ブルームバーグ」は、訪日観光客から日本は経済効果を充分に得られていないという。それはなぜなのか、日本はどうすればいいのか、同メディア記者が考えた。

急増する外国人観光客
最近、日本のいたるところで外国人観光客が見かけられる。訪問する外国人はアリババ創業者のジャック・マーまで幅広い。

2022年10月に個人の外国人観光客の入国が許可された後、1ヵ月間弱で50万人近くが日本にやってきた。
岸田文雄首相は、訪日外国人による年間消費額を、パンデミック発生前の2019年の4兆8000億円を上回る、5兆円に引き上げたいと考えている。

日本のホテルやレストランは、すでに充分なスタッフを確保するのに苦労している。そんななか、パンデミック前の観光政策に対して国内では疑問の声が上がっている。以前は観光客の数を増やすことに重きが置かれていたが、それは失敗だったのではないかと。少ない観光客により多く消費してもらうためにはどうしたらいいのかと問う声もある。

パンデミック以前、世界の主要な観光地になることを目指す日本は、それに関する目標を立てては、それらを次々と打ち破ってきた。しかし、この観光ブームによる経済効果は、すでに頭打ちになりつつあった。この問題は、少なくとも日本が自ら招いたものだ。日本の物価は単純に安すぎるのだ。

観光客が増えても儲からない日本
東京や大阪は、外国人駐在員の生活費調査ランキングで上位を占めることが多い。だからこそ物価が高い国と考えられがちだが、そんなことはない。30年にわたるデフレーションで物価は停滞し、レストランやメーカーではコスト削減競争は激しい。それに加えて円安
の影響もある。

日本を訪れた多くの旅行者は、食事からホテルまで驚くほど安いものがあると気づく。東京の中心部では、高品質のランチをわずか5ドル(約800円)で当たり前のように食べられる

その問題は、最近、京都の伏見稲荷大社を訪れた際にはっきりした。延々と赤い鳥居が続くトンネルには観光客が押し寄せるが、そこでお金を使う人はほとんどいないようだった。

神社は、観光地というよりも周辺地域の公共財と考えられている。ほとんどの場合、入場料は取られない。その代わり、訪問者は一般的に参拝を通じて金銭を払う。賽銭箱に小銭を入れたり、開運のお守りなどを買ったり、御朱印帳に印章を押してもらったりする。

しかし、裕福そうなアジア人、ヨーロッパ人、北アメリカ人などの観光客は、それらのお金を落とす部分をただ通り過ぎている。彼らには、伝統に関する知識やそれらに対する興味がない。それゆえに彼らはすべての体験をタダで得ていた。

これは、観光客の問題全体にあてはまることかもしれない。彼らはお金を払うように言われれば喜んで払うだろう。しかし、日本は観光客からより多くの金銭を引き出す方法を見つけられていないのだ。

日本が、他の国で見られるように、外国人にのみ課金するという二段階制を導入するとは考えにくい。空港で徴収されるわずか1000円の国際観光旅客税を値上げするという議論があるが、それに大した効果はないだろう。

超富裕層を受け入れるにはどうすればいいのか
今注目されているのは、海外旅行で平均より何桁も多く消費するような超富裕層をより取り込むことだ。観光庁によると、高付加価値旅行者の割合は観光客の1%に過ぎないものの、その消費額はすでに全体の12%近くを占めるという。

これまでこうした層を引きつけられなかったことを批判する議員たちは、その機会損失は「計り知れない」と言う。ファーストクラスの旅客や、プライベートジェットやスーパーヨットで来日する人たちの受け入れ態勢を強化しようというのだ。

しかし、このような超富裕層向けの観光地やサービスは日本には不足している。日本政策投資銀行の試算では、京都を含む関西圏では、今後1300室の高級ホテルの増設が必要だ。その問題は、日本の観光インフラが非常に早く構築されたことに主に起因する。長年、日本は物価が高いと考えられ、アクセスもしにくかったことから外国人観光客には避けられてきた。

しかし、2010年代にビザ免除で短期滞在できる国・地域の範囲が拡大され、日本を訪れる観光客は急激に増えた。それに対して、観光関連事業者は既存のインフラをそのまま活用して対応してきた。しかし、それらは、平均2泊の超短期休暇を過ごす国内旅行者向けに作られたものだ。彼らは豪華さよりも手頃な価格と利便性を優先してきた。

京都では、他の地域よりも比較的設備が整っている。パンデミック中にヒルトンは高級ホテル「ROKU KYOTO」をオープンした。しかし、それでもまだ問題は残る。

「海外から人が来ないと、平日には宿泊客がいません」と語るのは、最近オープンしたばかりの高級ブティックホテル「丸福楼」支配人の藤原伸吾だ。このホテルは、アールデコ調にデザインされたゲーム大手の任天堂の旧本社ビルに、建築家・安藤忠雄の設計した新館を加えたものだ。安藤は、大阪の光の教会などのミニマルなコンクリート建築で有名だ。

藤原は言う。「外国人の富裕層を取り込むには、リピーターを増やす必要があります。そのためには、他ではできないような体験を提供する必要があるのです」

京都ではパンデミック以前からオーバーツーリズムが問題視されていた。この問題も、一定の数の観光客に集中すれば対応できるだろう。以前、京都ではマンションではなく安ホテルが開発され、地元の人たちが中心地からどんどん追い出されていった。

パンデミックによって観光部門は壊滅的な打撃を受けたが、その状況もいったん元に戻った。それによってもう一度考え直す機会となった。
ジャック・マーの極秘滞在が示すように、日本には超富裕層を惹きつける魅力がたくさんある。