ここに書かれている構想は、どこの都市でも言われているものが多いが、本気で進めなくてはならない。

インフラ系は大きな費用負担が伴い、誰が費用を負担するのか分からない。税金で負担するだけでない負担の方法が求められる。

費用負担が少なくてすむコンテンツ系の整備や規制緩和もあるので、単なる構想にとどまらずに実現させてほしいと思う。

【ポイント】

・『NeXTOKYO』をプラットフォームに、東京が「世界で最も魅力的なグローバル都市TOKYO」へと進化するための提言を行なっていく。

  TOKYOの仮説イメージ

• 健康的なライフスタイル、豊かな文化、最先端の情報インフラを備えたTOKYO

• 既存の街の資産に新たな編集を加え、新しい価値を生み出すTOKYO

• 世界から人材・資本が集まり、文化・イノベーションを世界と共創するTOKYO

  『チームNeXTOKYO』:森俊子(建築家/ハーバード大学院教授)、藤村龍至(建築家/東洋大学専任講師)、森浩生(森ビル)、古市憲寿(社会学者)、為末大(元陸上競技選手)、楠本修二郎(カフェカンパニー)、スプツニ子!(現代アーティスト/MITメディアラボ助教)、梅澤高明(A.T. カーニー)がコアメンバー。「G1サミット2014」(政治・経済・科学技術・文化など各界リーダーによる招待制カンファレンス)における関連テーマのセッション参加者を中心に設立。

・21世紀は都市間競争が国の優劣を左右する時代だ。

・世界の人口の半分は都市人口であり、2050年にはこれが7割に達すると予測されている。

・ブルームバーグ米ニューヨーク市長は、9・11後のダメージのなかで、イーストリバー沿いの工業地域やマンハッタン西側の操車場跡地など錆び付いていたインフラを見直し、それらをつないで積極的な投資を行ない、ニューヨークを力強く再生することに成功した。

・目指すべきは「健康的で創造的なライフスタイルを持ち、快適な暮らしと滞在ができるTOKYO」、「世界とつながり、人材と資本が世界から集まり、力強い経済成長とイノベーション、文化の発展が持続するTOKYO」だ。

・2020年東京オリンピックは、交通インフラや建築物といったハード、文化やサービスなどコンテンツの拡充だけでなく、人材の誘致、法規制の改革などに総合的に取り組む絶好の機会である。

・人口高齢化とインフラ老朽化という都市問題を解決しつつ、魅力的なグローバル都市TOKYOへと進化するための提言を行なう。

・第一のテーマ「フィットネスシティ」は、水と緑に彩られた、TOKYOの健康的なライフスタイルを表すキーワードだ。

・世界の主要なグローバルシティでは、海上輸送の進化に連動して、港湾地区の再編と街の魅力を高める水際の有効利用が進んでいる。

 「TOKYO Bay」、すなわち東京湾の水際の再開発だ。

・徒歩・自転車専用道の「グリーンネットワーク」だ。

 TOKYO Bayから皇居経由で西方向に、赤坂離宮、神宮外苑、新宿御苑、明治神宮といった緑地帯を繋げていく。

 TOKYO Bayから北方向に、銀座、日本橋、秋葉原、上野、浅草を経由してスカイツリーに至る、観光スポットを結ぶグリーン専用道を構築する。

・第二のテーマ「クリエイティブシティ」は、クリエイティブな街と豊かな文化コンテンツ、そしてそこに集まる人々の創造的なライフスタイルを意味する。

 文化やクリエイティビティをキーワードにTOKYOを世界に開き、海外の人材と企業を積極的に迎え入れ、「世界との共創」の思想で日本の文化と関連産業をさらに発展させる。

 世界から才能とファンを引き寄せる「聖地」となることが重要だ。

・第三のテーマ「インフォメーションシティ」は、「情報」という新たなレイヤーを加えた未来型情報都市TOKYOのキーワードだ。

 「インフォメーションシティ」は、インフラとコンテンツの間にある「情報レイヤー」の整備を通じて、都市としての回遊性と魅力を大幅に向上させること。

 TOKYO共通のナビゲーション・データベースと「街コンシェルジュ」アプリを開発、無料配布する。

 ぐるなびのレストラン検索、駅探の乗り換え検索、グーグルマップによる地図誘導機能、SNSの「友達」探索機能などをシームレスにつなげる。

 これを日本語、英語、中国語、ハングル語、スペイン語など多言語対応で提供する。

 フリーアクセスWi-Fi網・電源の整備も不可欠だ。

 情報レイヤーの付加。

・東京ではまもなく、1964年オリンピックを契機に整備されたインフラ群が一斉に耐用年数を迎える。

 世界でも有数のネットワークを持つ既存の交通インフラを最大限活かし、一部の動線について拡充・高度化を図る。

 南北の戦略軸は、国交省が検討する成田空港―京成線―押上―東京―泉岳寺―京浜急行線―羽田空港を繋ぐ地下鉄新線「都心直結線」構想だ。

 東西の戦略軸は、環状2号線の延伸によってつながる、有明―新豊洲―晴海―築地―虎ノ門―六本木―渋谷の道路ルートだ。

・サブ動線「TOKYOバタフライ」は、訪日外国人が日常的に使う動線だ。LRTあるいはBRTを活用した2つのループで、8の字型の動線をつくる。

 「ループA」は、南西側の街を結ぶルートで、新豊洲―晴海―築地―虎ノ門―六本木―渋谷―恵比寿―品川―台場―有明―新豊洲を周遊する。

 「ループB」は、TOKYOの中央部と東部を結び、新豊洲―築地―銀座―日本橋―秋葉原―上野―浅草―押上―錦糸町―新豊洲を周遊する。

 これらの動線づくりによって、巨大で複雑なTOKYOを訪日外国人にも分かりやすく再構成し、彼らの回遊性と消費行動を高めることを狙う。

・「国家戦略特区」制度を活用した「NeXTOKYO特区」を提案する。

 最重要のポイントは「クリエイティブ移民」だ。

 食、ファッション・美容、メディアコンテンツ、アートなど、世界の才能を積極的に取り込むために、就労ビザの対象拡大および発給要件の緩和を行う。

 TOKYOを舞台に世界の才能が競い合い、イノベーションが活性化する。

・道路・公園・港湾など公共スペースのイベントやカフェ利用の促進、ダンスクラブに関する規制(通称「ダンス規制」)の緩和など、街をクリエイティブにするための仕掛けが重要だ。

・東京圏の宿泊需要が2020年に急増することを考えると、個人住居を短期転貸する仕組みを合法化していく必要がある。

(次号に続く)

(日経ビジネスオンライン 10月1日)

http://business.nikkeibp.co.jp/article/opinion/20140929/271849/?n_cid=nbpnbo_mlp