日本の農村巡りが欧米客を魅了 1人最高50万円、地元住民と直接交流(Sankei Biz   2019年12月16日)https://www.sankeibiz.jp/business/news/191216/bsd1912160500005-n1.htm

欧米諸国の富裕層は、ありのままの日本の地域を知り、地元住民と交流したいという。国により自然環境が異なり、できる農産物も異なる。また、その農産物を美味しく食べるための食文化も違う。農産物を作る人から、気候風土や作物の作り方、そこに流れる哲学や人情に触れ、日本の本当の良さが伝わる。これからの観光の基本アイテムの一つになっていくようだ。

【ポイント】日本の旧街道や地方の農村を主に1週間以上かけて散策し、国内発着ながら1人の参加料金が最高約50万円に上るツアーが欧米の富裕層らの人気を集めている。英国人のポール・クリスティ社長(57)が創業した旅行会社ザ・ジャパン・トラベル・カンパニー(大分県杵築市)が手掛け、地域活性化に貢献している。

中山道を歩いて巡るツアーは、京都市を出発して馬籠宿や妻籠宿といった宿場町に立ち寄る。また、宮城県松島町や岩手県平泉町など「奥の細道」で知られる俳人、松尾芭蕉がたどった土地を巡る旅なども催行している。
20種類程度のツアーを用意し、昨年は約450回実施して計約4000人が参加した。クリスティ氏は人気の要因を「海外の富裕層はありのままの地域を知り、地元住民と直接交流したがっており、それを田舎で提供しているためだ」と説明する。

同氏は日本や英国の報道機関などで勤務後、田舎暮らしを求めて2002年に杵築市へ移住。訪日旅行を実施する香港の旅行会社の運営に携わった後、10年に起業した。
「参加者全員に日本を理解してもらう」との狙いから1回の参加者は原則12人以内に抑え、訓練を受けたガイドが訪問先の歴史や文化を丁寧に紹介。口コミで評判を呼び、4回以上参加するリピーターも広がっている。

世界農業遺産に認定された大分県の国東半島宇佐地域をたどるツアーでは、農家を訪問する。ツアーを受け入れている脇坂悦さん(76)は「田舎から人がいなくなっているのは外国も同じようで、私の話を共感しながら聞いてくれる。言葉は分からなくてもすぐに友達になれる」と歓迎する。

「魅力的な体験を提供するには、旅行の企画やガイドなどを担う社員も日本をより深く理解する必要がある」という。地域への理解を深め、旅行者を受け入れる環境を守るため、社員を国東半島でのクヌギ林の手入れやシイタケ栽培などに参加させている。
クリスティ氏は「観光で日本の地域を活性化させるモデルを示したい」と力を込める。