訪日観光、景気下支え 世界並み回復でGDP0.7%増
円安で割安感でも3回接種なお壁
(日本経済新聞 2022年9月24日)
https://www.nikkei.com/article/DGKKZO64595000U2A920C2PE8000/?unlock=1
【ホッシーのつぶやき】
日本は10月11日より短期滞在の訪日客のビザなし個人旅行解禁されますが、香港はこれまで海外からの入国者に課していた到着時のホテル隔離を9月26日より撤廃、台湾も29日より外国人観光客の受け入れを開始するようです。
22年1~5月の世界の外国人観光客到着数は約2億5000万人で、コロナ禍前の19年比で半分まで回復したといい、23年の訪日客は、19年の半分約1530万人(48%)になると試算し、GDPを0.74%押し上げるといいます。
【 内 容 】
新型コロナウイルスの水際対策緩和は、減速する恐れのある景気を下支えする可能性がある。世界では外国人観光客がコロナ禍前の半分に回復しており、日本も半分に戻れば国内総生産(GDP)を0.7%押し上げるとの試算もある。円安の追い風も吹いており、さらなる緩和が欠かせない。(1面参照)
10月11日からの水際対策の緩和で個人旅行やビザなしの来日が再開する。コロナ禍前の訪日客の9割が観光目的で、そのうち8割が個人旅行だった。
日本政府観光局(JNTO)が21日発表した8月の訪日客数は16万9800人でコロナ禍前の19年8月比93%減と落ち込んでいる。米欧などでは日本に先行して入国規制の緩和が進み、世界全体でみた観光需要は回復ぶりが顕著だ。
国連世界観光機関(UNWTO)によると、22年1~5月の世界の外国人観光客到着数は約2億5000万人で前年同期比約3倍。コロナ禍前の19年比で半分まで回復した。
UNWTOは22年は欧州でコロナ前の65~80%、米州は同63~76%まで回復すると予測する。
みずほリサーチ&テクノロジーズの小野寺莉乃氏は、水際対策の緩和により23年の訪日客は19年のほぼ半分(48%)の約1530万人になると試算。23年のGDPを緩和前(22年4~6月の年額換算)に比べ0.74%押し上げるとみている。
22年4~6月期の実質GDP成長率は前期比年率3.5%となったが、物価高や世界経済の減速が先行きに影を落とす。19年の訪日客の消費額は4兆8135億円に達しており、訪日客の回復が進めば各地の経済を下支えできる。
「円安が追い風になる」(星野リゾートの星野佳路代表)との期待も大きい。19年末には1ドル=109円程度だったが、足元では140円台と3割ほどの円安・ドル高水準となり、海外の人は割安に観光を楽しめる。
コロナ禍前に訪日客の3割、インバウンド消費の4割を占めていた中国の人民元も19年末に1元=15円台だったが、足元では20円前後まで円安・元高が進んでいる。
訪日客の増加や消費の回復に向けては「一定の時間を要する」(野村総合研究所の木内登英氏)との声もある。
中国はゼロコロナ政策を続けて海外との往来を引き続き厳しく制限している。木内氏は「物価高や金融引き締めで海外景気が減速すれば、多くの国で海外旅行を控える可能性もある」と指摘する。
10月の水際対策緩和後も、訪日客の増加を阻む壁はなお残っている。日本政府が認めたワクチンを原則3回接種している必要がある。
海外では3回目の接種を受けていない人も多く、こうした人は引き続き出国前にPCR検査などを受けて陰性を証明する必要がある。日本政府が認めていない中国製ワクチンを打った多くの中国人もこれに該当する。
海外では検査体制を縮小した国もあり、費用や手間がかかるとの声も上がる。
検疫ではコロナの感染拡大後、人員や場所を確保してワクチン接種歴や健康状態の確認を続けている。入国者数の増加に伴い業務が逼迫する懸念もある。
訪日客をコロナ禍前の水準に向けて回復させるには、水際対策もコロナ禍前の状況に近づける努力が必要だ。