損保の再保険費、災害多発で約5割上げ 契約者負担増も 【イブニングスクープ】
(日本経済新聞 2020年4月14日)
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO58031500U0A410C2EE9000/?n_cid=NMAIL007_20200414_Y

自然災害の多発で、損保会社の負担が増え、損害保険料の引き上げにつながりそうだ。18年、19年と2年連続で1兆円を超える保険金支払いだという。
新型コロナにからむ支払いはあまり発生しない見通しだが、興行中止保険などの支払いはあるようだ。
損害保険も、財源となる保険料と補償のバランスから成り立つので、大きく見直さざるをえないようだ。

【ポイント】
自然災害の多発で、損害保険会社が負担するコストが増える。損保各社が多額の保険金支払いに備えるために入っている再保険の費用は、2020年度から4~5割上がる見通しだ。大手では最大数百億円規模で負担が増える。大型台風が相次ぎ、浸水被害などの補償が膨らんでいるためだ。契約者が負担する火災保険料のさらなる引き上げにつながりそうだ。

損保各社は、台風や地震などの自然災害やテロなど巨額の保険金の支払いが見込まれる保険について、別の保険会社にリスクの一部を引き受けてもらう再保険に加入している。
このほど損保会社と再保険会社の交渉がまとまり、日本の自然災害関連の再保険料は、20年度に平均で4~5割程度上がることになった。

米保険仲介大手によると、再保険料の上げ幅は01年以降で過去最大。上げ幅は19年の12%、東日本大震災の影響が出た12年の14%も大きく上回った。再保険料の上昇は損保大手の火災保険の収支を直撃する。損保大手によると、再保険料は多い場合で1社数百億円規模で増える見通しだ。
損保大手は契約条件の変更などで、再保険料の急騰による影響を最小限にとどめたい考えだ。
災害への備えが薄くなるものの、再保険の支払い条件を厳しくすることも選択肢になる。

損保大手の赤字幅はさらに拡大しそうだ。
損保大手は19年10月に続き、21年1月にも利用者が負担する火災保険料を引き上げる。それでも当面の黒字化は難しい。収支を改善するため、契約者が負担する保険料の引き上げは避けられない情勢だ。

再保険料が急騰した背景には、2年連続で1兆円を超える自然災害での保険金支払いがある。
18年度は台風21号などの被害で、保険金支払額は1.5兆円規模にのぼった。過去最大だった04年度の7000億円台に比べて大幅に膨らんだ。19年度も台風19号や15号の影響で、保険金支払額は2年連続の1兆円台に達する見通しになっている。
これまで、再保険会社は1兆円台の保険金支払いは「数十年に1度」と見積もってきた。多額の保険金支払いをカバーする再保険会社の収支が悪化し、日本での再保険の引き受けに消極的になっている会社も多い。

災害関連の再保険料には、新型コロナウイルスにからむ支払いはあまり発生しない見通しだ。
ただ、興行中止保険など災害分野以外での支払いが増えれば、再保険会社の引き受けが慎重になる可能性がある。

世界的な気候変動で、災害関連の保険金支払いの増加が続いている。
火災保険制度は、保険料算出のあり方を見直すなどの動きが出てきた。損保各社でつくる損害保険料率算出機構はかねて火災保険料算出のあり方について再検討を進めており、火災保険の契約期間の上限短縮などが論点として浮上している。「政府が関与する洪水保険などの検討が必要」との声もある。