タビナカ体験の価格ゼロの時代がやってくる? その3つの要因と備えておくべきことをまとめた【外電】
(トラベルボイス 2021年11月12 日)
https://www.travelvoice.jp/20211112-149905

【ホッシーのつぶやき】
今も、無料で入手できる情報は無数にある。これを取捨選択するのに「スマカンNEWS」もあると思っているが、その選択能力もAIに取って代わられそうだ。
サブスクや会員向けサービスなどで、自動運転車両が無料となり、観光情報もAIが選別し、AIによるツアーが出現するかもしれない。
とはいえ、地元の人とのコミュニケーションや、地元の居酒屋に入りたい訪日観光客はガイドを必要とするのだろう。紹介されているサービスは恐れる対象ではなく、利用する対象になると思われる。

【 内 容 】
世界の観光地では市内観光や体験ツアーが、テクノロジーの進化によって、これまでにはなかった価格破壊のプレッシャーにさらされている。特に都市部において、影響は深刻になりそうだ。こう考える理由は3つある。

• 自動運転車両
• ローカル情報が広く共有されるようになった
• AI(人工知能)によるツアーガイド

このうちどれか一つ、あるいは複数の要因が重なることで、市内観光や体験ツアーの価格は、限りなくゼロに近いところまで下がるだろう。そんな近未来にどう対処するべきか、考えておく必要がある。

  1. 移動コストがゼロになる
    世界での自動運転車両の実用化に伴い、これまで地域の交通手段を使って催行されていた観光ツアーが、どのように様変わりするのかが見えてきた。すでに明らかになっている各社の取り組み事例を4つ挙げてみよう。

• アマゾン傘下の自律走行車スタートアップ、Zooxのロボタクシー(年間の製造台数は1万~1万5000台):アマゾン・プライム会員なら無料、あるいは優待利用可能なサービスの一つとして、このロボタクシーが提供されるようになるだろう。
• GM(ゼネラルモーターズ)が手掛ける自動運転車事業、クルーズのロボタクシー(2030年までに大量生産体制へ):サブスク方式で車を利用し放題のサービスに、無料または利用可能な選択肢の一つとして登場するのではないか(同社では2030年までにサブスク売上300億ドルを目指している)
• アコー:ホテル滞在客やロイヤルティ会員向けの特典として、すでに発表しているホスピタリティ車両の提供が始まるのではないか。
• オールインクルーシブ型リゾート:滞在中に利用したすべてのサービス料が含まれているリゾートホテルのインクルーシブ・パッケージでも、ロボタクシーが敷地外で利用できる新たな特典として加わるのではないか。

消費者の立場になって考えてみよう。自動運転車両に特に関心はなくても、上記に挙げたようなサービスは、別の理由ですでに利用しているかもしれない。例えばアマゾン・プライム会員になっていて、自宅で様々なサービスを利用中だったり、宿泊したオールインクルーシブ・リゾートに、たまたまロボタクシーがあったり。すでにサービス内容に含まれていて、しかも無料で利用できるのであれば、必要な時には利用してみるだろう。

  1. 現地のローカル情報が無料で手に入る時代に
    様々なところで評価されるようになり、そのプレッシャーはご承知の通りだ。 • トリップアドバイザーのレビュー
    • ユーチューブやティクトクの動画
    • ブログなどの投稿
    • 友人からのクチコミやアドバイス
    • その他、色々な情報源
    昨今の消費者は、完璧に情報武装している。

むしろ現地情報が溢れかえるようになり、これを取捨選択するために頼りになるキュレーターが欲しいぐらいだ。集めた情報をうまく活かすための手助けも必要だ。そこで登場するのがAIツアーガイド。ローカル情報をベースに、旅行者それぞれの状況に合わせたサポートを提供するようになるだろう。

  1. ツアーガイド代がゼロになる
    AIツアーガイドを使えば、オペレーションコストは実費のみ。ゲストに無料で提供することも可能になる。

私自身、デジタル・ヒューマン「サラ」の開発に携わってきた経緯もあり、この問題については、良いことも悪いことも含めて、今後の可能性を大いに検討してきた。LinedInに掲載されたピート・サイム氏によるAIツアーガイドに関する詳しい記事と、これに対するコメントの数々も参照いただきたい。

組み合わせることで威力を発揮する
価格破壊の要因となり得る3つの要素はそれぞれに要注目だが、組み合わせることでさらに威力が増し、ツアー会社にとっては致命的になる。

例えば、無料で入手できるローカル情報と、無料のAIツアーガイド、そして無料のロボタクシーを組み合わせるとどうなるか?

「フェリーは1時間に1便。出発時刻の15分前までには港にいる必要がある。」以上は、公表されている案内情報やブログ投稿から入手できる内容だ。(これは基本的に変化しない“静的”な情報)

「一方、ゲストは今、この港から歩いて20分地点にいる。急がないと、フェリーに乗り遅れてしまう。」現地に関する静的な情報に、デジタル・アプリケーションによる”動的”情報を加えるとこうなる。

「ゲストは歩くのが遅い。フェリーに確実に間に合うようにするには、無料のロボタクシーを使ったほうがよい。」これで現地情報を相手に合わせてパーソナライズし、提供する、という流れになる。

観光事業者への2つの問い
観光事業者は、売買取引と、これを補完する各種データのやりとりのことばかり常に考えている。だが、もし悪くない内容で、しかも料金ゼロの選択肢がどんどん増えてきたら、顧客はどうするだろう。あるいは、すでに存在するサブスク型サービスの利用対象として、こうしたツアーが登場したら?

一方、料金を無料にはできない体験プログラムもあるが、そうしたところにも値下げ圧力が及ぶのだろうか。例えばロンドンでは、有名博物館の多くが10年ほど前から入場を無料にしている。これにより、入場料を課している博物館にも何かしらの値下げ圧力が働いているのだろうか?

「無料」の影響について、真剣に考えるときが来たようだ。

※編集部注:この記事は、英デジタル観光・旅行分野のニュースメディア「DestinationCTO」から届いた英文記事を、同社との提携に基づいてトラベルボイス編集部が日本語翻訳・編集したものです。