国際航空輸送協会、航空機に預けた荷物のトラブル解消に本腰、航空会社間の通信規格の刷新に着手【外電】
(トラベルボイス 2024年9月11日)
https://www.travelvoice.jp/20240911-156267

【ホッシーのつぶやき】
2023年のバゲージ取扱いミスは、航空会社を乗り継ぐことも少なくない国際線で1000個当たり12.1個という。2018年にIATAが定めたトラッキング箇所は、荷物を預ける時、航空機体に積む時、トランスファー・エリアへ運ぶ時、搭乗客に届ける時だが、実施しているのは44%だという。
航空会社各社にも難しい理由はあるのだろうが、積荷を正確に把握するのは基本中の基本だ。早期解決を願いたい。

【 内 容 】

航空会社に預けた荷物の紛失や到着遅延は、休暇でもビジネスでも、旅行を台無しにしかねないトラブルだ。国際航空運送協会(IATA)のディレクター・ジェネラル、ウィリー・ウォルシュ氏はこうした事態を恐れて、なんと35年間ずっと、カバンのチェックインなしで航空機を利用していたと、シカゴでの会合で明かした――。

IATAではこのほど、この問題の解決に向けて、受託手荷物の取扱いにおける最大の弱点の一つともいえる、複数の航空会社にまたがる運送(インターライン)で荷物運搬業務を改善しようと、航空会社や空港間のコミュニケーション支援に乗り出した。

2024年末から、バゲージ情報をやり取りするための情報共有ができる規格(デジタルメッセージング規格)のテスト運用を開始する計画だ。各社共通の規格があれば、航空会社間で情報を共有できるようになり、例えば旅行カバンの画像や位置情報データがシェアできる。現行のメッセージング技術では、こうした荷物情報に関するコミュニケーションは難しいとIATAでは説明している。

時代遅れのレガシーシステムの温存をやめよう
時代遅れのレガシー・システムの温存が、航空産業の弱体化につながるとの考えから、IATAでは様々な刷新事業を進めてきた。

その代表例がNDCのデジタル・マーチャンダイジング規格の導入で、旅行代理店経由での航空券流通システムの最新化を目指している。同様に、発券業務やサービスの効率化に向けたデジタル規格「ワン・オーダー(One Order)」は、電子チケット、搭乗客データ(PNR)、アンシラリー・サービス購入記録を一本化するものだ。

今回のバゲージ対応策は、こうした一連の取り組みに続くものだが、実は航空会社にとって、非常に難しい課題となっている。航空通信テックを提供しているSITA(国際航空情報通信機構)の年次レポートによると、航空会社によるバゲージ取扱いミスの発生は、2023年、世界全体で荷物1000個当たり6.9個だった。

だが、複数の航空会社を乗り継ぐことも少なくない国際線のみでは、ミス発生率は同12.1個に増える。

IATAがまとめた2023年「ワールド・パッセンジャー」調査では、航空会社のコントロール下にある様々な旅行体験の中で、利用客が最も不快な経験をすることが多い場面として、荷物を預ける時と、受け取る時の2つがトップに挙がっている。

荷物のトラッキングを航空会社に要求
IATAでは2018年、航空会社にバゲージの追跡を行うよう求める第753決議を採択しており、荷物を預ける時、航空機体に積む時、トランスファー・エリアへ運ぶ時、そして搭乗客に届ける時の計4ポイントでのトラッキングすることを定めた。

また同決議では、インターライン・チケットで提携するパートナー航空会社との間で、こうした情報を共有するよう求めている。

ところが今春、IATAが行った航空会社と空港の調査では、同決議内容をすべて実施しているのは航空会社全体の44%にとどまり、準備中と回答したところが41%だった。加えて、調査対象だった94の空港のうち75%では、主にバーコードを使って荷物をトラッキングしていることが明らかになった。

時代遅れのテクノロジーから抜けだせない
IATAでは、航空各社が第753決議をなかなか実行できない理由について、高コストのレガシー技術、「タイプB」に頼っているからだと指摘する。IATAの地上オペレーション担当ディレクター、モニカ・メイシュトリコヴァ氏によると、この航空通信は1960年代に登場し、以来、改良されながら使用されてきた。しかしバゲージ情報のメッセージングにかかる費用は、年間10億5000万ドル(約1533億円)にのぼる。

このうち10%だけでもデジタル通信に置き換えることができれば、航空産業にとっては年間7000万ドル(約102億2000万円)のコスト削減になると推定される。高額なコストに加えて、タイプBのメッセージ機能はクオリティ面で課題があり、これがバゲージ取扱いのミスにつながっていることもIATAでは問題視している。

SITA調査によると、航空会社に預けた荷物のトラブル発生は、航空会社間のコミュニケーションが不可欠である乗り継ぎ地点に原因があることが多い。2023年に発生したバゲージの到着遅延で圧倒的に多かった原因は、乗り継ぎ地点における取扱いミスで、全体の46%を占めた。

メイシュトリコヴァ氏は、デジタルメッセージング規格の導入について、コスト的にも、難易度的にもハードルは低いとする一方、世界全体で導入が広がるかどうかは、また別の話になるとの見方だ。

「航空業界の現状としては、まだタイプBを使い続けている。エコシステムに障害を起こさずに、新しい技術への移行を進めていくことが、これからのチャレンジになる」と同氏は話した。

※ドル円換算は1ドル146円でトラベルボイス編集部が算出
※この記事は、世界的な旅行調査フォーカスライト社が運営する「フォーカスワイヤ(PhocusWire)」から届いた英文記事を、同社との正式提携に基づいて、トラベルボイス編集部が日本語翻訳・編集したものです。