世界経済フォーラム(WEF)の「旅行・観光開発ランキング(2024)」で日本はアメリカ、スペインに次いで3位
(JTB総合研究所 2024年5月31日)
https://www.tourism.jp/tourism-database/viewpoint/2024/05/tourism-development-ranking/

【ホッシーのつぶやき】
「世界経済フォーラム」119の国と地域の「観光分野競争力」の評価によると、1位アメリカ、2位スペイン、そして3位に日本が入りました。その他はフランス、オーストラリア、ドイツ、英国、中国、イタリア、スイスの順です。
地政学的な不確実性、景気変動、インフレ、異常気象などのリスクに晒されていますが、GDPと雇用の10%を占めてきた旅行・観光セクター、幸福と繁栄に貢献する重要な産業です。

【 内 容 】
世界経済フォーラムの旅行・観光開発指数は、欧州とアジア太平洋地域の高所得国が引き続きリードしており、米国、スペイン、日本がランキングの首位に立ちました。
パンデミック後の成長にもかかわらず、グローバルな観光セクターは依然として複雑な課題に直面しています。回復の度合いも地域によって異なり、2021年版からの全体的なスコアの改善はわずかです。
開発途上国は2019年以降、71カ国中52カ国が改善と躍進していますが、格差を埋め、市場シェアを拡大するためには多額の投資が必要です。

米国ニューヨーク、2024年5月21日 – 世界経済フォーラムの新しい旅行・観光業に関する調査によると、新型コロナウイルスに関連した渡航制限の解除と旺盛な需要の掘り起こしにより、国際観光客の入国数と旅行・観光業の世界GDPへの貢献は今年、パンデミック以前の水準に戻る見込みです。

2024年のランキングのトップは米国、スペイン、日本、フランス、オーストラリア。中東は国際観光客到着数の回復率が最も高く(2019年の水準から20%増)、欧州、アフリカ、南北アメリカはいずれも2023年に約90%の力強い回復を示しました。

これらは、サリー大学の協力を得て同フォーラムが2年に一度発行するレポート「Travel & Tourism Development Index 2024(旅行・観光開発指数)」(TTDI)の調査結果の一部で、様々な要因や政策を軸に119カ国の旅行・観光セクターを分析しています。

同フォーラムのグローバル・インダストリーズ・チームの責任者であるフランシスコ・ベッティは、次のように述べています。「今年は旅行・観光セクターの転換期です。このセクターは、経済的・社会的変革を通じて成長を促し、地域社会に貢献する力があることが知られています。TTDIは、リーダーたちがこの複雑なセクターの最新動向をナビゲートし、世界中のコミュニティや国々にその潜在力を持続的に引き出すことができるよう、旅行・観光の現状と将来を見通す窓を提供します」。

パンデミック後の回復

グローバルな観光産業は、新型コロナウイルス感染症のパンデミックによる低迷から回復した上で、それ以前の水準を上回ると予想されています。これは、利用可能な航空便の増加、国際的な開放性の向上、自然や文化的なアトラクションへの関心や投資の増加と一致した、世界的な需要の大幅増加によるところが大きいと考えられます。

しかし、グローバルな回復傾向はまちまちです。ランクインした119カ国中71カ国が2019年以降スコアを伸ばしたものの、平均指数スコアはパンデミック前のレベルをわずか0.7%上回ったに過ぎません。

このセクターはグローバルヘルス危機のショックは乗り越えたものの、マクロ経済の成長、地政学的リスクや環境リスクの高まりから、持続可能性の実践に対する監視の強化、ビッグデータや人工知能などの新しいデジタル技術の影響に至るまで、その他の外的課題に引き続き取り組んでいます。加えて、労働力不足が続いており、航空路線のキャパシティ、設備投資、生産性、その他の部門の供給要因が需要の増加に追いついていません。この不均衡は、グローバルなインフレによって悪化し、価格やサービスの課題を増大させています。

旅行・観光開発指数2024のハイライト

2024年の指数スコア上位30カ国のうち、26カ国が高所得国です。また、19カ国が欧州、7カ国がアジア太平洋、3カ国が南北アメリカ、1カ国(アラブ首長国連邦)が中東・北アフリカ地域(MENA)。上位10カ国は、米国、スペイン、日本、フランス、オーストラリア、ドイツ、英国、中国、イタリア、スイスです。

この結果は、一般的に高所得国が旅行・観光の発展にとってより有利な条件を持ち続けていることを浮き彫りにしています。ビジネス環境、ダイナミックな労働市場、開かれた旅行政策、強力な交通・観光インフラ、整備された自然・文化・非レジャーアトラクションなどがこれを後押ししています。

また、開発途上国では近年、最も大きな改善が見られました。上位中所得国の中では、中国がトップ10入りを果たし、インドネシア、ブラジル、トルコの主要な新興旅行・観光地が中国とともにランキングの上位4分の1に入りました。より広範に見ると、2019年以降スコアが向上した国の70%以上を低中所得国から高中所得国が占め、中東・アフリカ地域とサハラ以南のアフリカは最もスコアが向上した地域の一つです。サウジアラビアとアラブ首長国連邦は、2019年から2024年の間に最も改善した上位10カ国にランクインした唯一の高所得国です。

このような躍進にもかかわらず、同レポートは、開発途上国と高所得国の間にある基盤状況や市場シェアのギャップを埋めるためには、多額の投資が必要であると警告しています。そのための一つの道筋として考えられるのは、自然・文化的資産を持続的に活用することでしょう。自然・文化的資産は、他の要因に比べて国の所得水準との相関が低く、開発途上国に観光主導の経済発展の機会を提供することができます。

サリー大学のホスピタリティ・ツーリズム・マネジメント学部長兼教授であるイース・トゥシアディア氏は、次のように述べています。「旅行・観光セクターが繁栄するための強力な環境を構築するためには、異なる経済圏間の溝を埋めることが不可欠です。「このセクターは繁栄を促進し、グローバルなリスクを軽減する大きな可能性を秘めていますが、その可能性は戦略的かつインクルーシブなアプローチを通じてのみ十分に発揮されるのです」。

将来のグローバルな課題の軽減

同フォーラムの「グローバルリスク報告書2024」によると、旅行・観光セクターは、地政学的な不確実性、景気変動、インフレ、異常気象など、多様かつ複雑なリスクに直面しています。また、高い季節性、過密状態、パンデミック以前の二酸化炭素排出レベルに戻る可能性があることなどから、成長と持続可能性のバランスをとることも依然として大きな課題です。同レポートはまた、公平性と包摂性に関する根強い懸念についても分析しています。観光セクターは、特に開発途上国において、比較的高賃金な雇用の主要な源である一方、中東・北アフリカや南アジアなどの地域では、ジェンダー・パリティ(ジェンダー公正)が依然として大きな課題となっています。

解決が困難ではあっても、観光セクターはこれらの課題に取り組む上で重要な役割を果たすことができます。課題の解決に向けて意思決定者は、自然保護の取り組みに観光を活用する、インクルーシブでレジリエンス(強靭性)の高い熟練した労働力に投資する、観光客の行動とインフラ整備を戦略的に管理する、観光客と地域社会の文化交流を奨励する、デジタル・デバイド(情報格差)の解消に観光セクターを活用する、などの政策を優先すべきです。

戦略的に管理されれば、これまでグローバルなGDPと雇用の10%を占めてきた旅行・観光セクターは、世界各地の地域社会におけるウェルビーイング(幸福)と繁栄に貢献する重要な存在として台頭する可能性を秘めているのです。

旅行・観光開発指数2024について

旅行・観光開発指数2024は、新たに入手可能となったデータと、旅行・観光が環境と社会に与える影響に関する最近開発された指標に基づき、いくつかの改良が加えられています。この変更により、以前に発表された2021年版と単純に比較することはできませんが、本レポートには新たに調整された2019年と2021年の再計算結果が含まれています。また、本レポートはデータが収集された2023年末時点の最新データを反映しています。TTDIは同フォーラムが産業界のコミュニティと積極的に協力して進める広範な活動の一環であり、サステナブルで包摂性とレジリエンスの高い産業エコシステムによってより良い未来を築くことを目的としています。