日本インバウンドサミット2020
〜地方の資源を活かした高価値・高単価なインバウンド向け観光商品造成をどのように作るか?〜
(日本インバウンドサミット2020のyoutube動画  2020年7月23日)
https://www.youtube.com/watch?v=PkzBqz8shI8&feature=youtu.be

山田拓さんのファシリテーションをベースに、西谷(ニシヤ)さんの「旅行商品の棚作り」「できることを証明」「海外の会社ともに作り上げていく」の考え。ハリスさんの「レベルアップ型の体験造成」「プロフェッショナルガイド」に対する考え。多田さんの「9日間28万円で熊野古道を歩くツアー」「レスポンシブルツーリズム」の話など、濃密な50分間でした。

登壇者
山田 拓:美ら地球 CEO (ファシリテーター)
西谷雷佐:株式会社インアウトバウンド仙台・松島 代表取締役
多田稔子:田辺市熊野ツーリズムビューロー 代表理事
Mike Harris:キャニオンズ代表取締役社長

テーマ
① 高付加価値・高単価なツーリズム商品が必要とされている社会とは!?
② どんな商品が求められているか? 作るべきなのか?
③ 商品造成のポイント!?

① 高付加価値・高単価なツーリズム商品が必要とされている社会とは!?
西谷:地域が継続できるかが問題。適正な価格(フェアートレード)であるかになる。
マイク:新しい事業者が参入しすぎた。ダンピングが起こるので利益率も下がった。
お客さんから「日本は何故こんなに安いの」と言われた。産業として成り立たない。
ガイドも世界標準の賃金を支払わないといけない。
山田:価値を上げて、賃金もあげていくという動きをせざるを得ない

② 高付加価値なツーリズム商品って何?
西谷:「東北ローカル・シークレット・ツアーズ」を運営している。初めて東北を目指す人は訪日5回目以上の人。東京に観光客がいるので、東京から客を呼んで来て、2〜3日で東北を巡ってもらう戦略。
桜のシーズンだが、5日間で1人76万円。このような商品も陳列棚に置いて見えるようにすることが大事。
そうすると相談が来る。高いツアーで76万円、安いツアーが1万円。
助成金を使って苦労して作ったツアーも3月31日で消えてしまう。それを地域の商品として陳列しておくことが大切。
「東北トラベルコンシェルジュ」と言うツアーをやっているが、東北に来たら、東北の人が、東北の人しか知らない暮らしの場を訪ねましょう(暮らしぶり)といって価値をつけている。
山田:76万円のツアーは、海外のエージェントにどれほど反響がありましたか?
西谷:どこに持っていくかです。最初からそんな価格帯のものは話にならないという所には話を持っていかない。なるほどそれは面白いね。それにこの商品を加えて100万円のツアーにしようという所に話を持っていく。海外での商談のポイントは共同商品造成です。「御社の困りごとは何ですか?」から入って、何人ぐらい送客していますか? 少ない理由は? と聞き、「どうすれば売れるか」を、決裁権のある人と話をして、そのエージェント向けの商品を作る。そしてオーダーメイドな商品を作ることが最も重要。
やらないことを決めるのも重要。何でもかんでも豪華な幕の内弁当のようにしてはいけない。その代わりトンガリ切った唐揚げ弁当の方が、これから先の高単価商品の造成には重要。
訪日リピーターが6割以上を占めるので、同じような商品では魅力を発揮できない。

・山田:熊野のツアー商品は?
多田:熊野では「歩く旅」に特化してきた。ほとんど熊野古道を歩くという商品。高付加価値商品でいうと、昨年、9日間歩きながら、少し地域の人と交流するツアーを28万円で造成した。大切なのはガイド。9日間、同一人物がガイドした。高付加価値商品はガイドやインストラクターが重要な役割を果たす。
高野山に行った時、金剛峰寺の管長が案内してくれた。案内・説明役が特別感を醸し出す。

・マイク:運動能力レベルとサービスレベルで料金が少しずつ上がる商品づくりをしている。
レベルにより難易度も変えている。
レベル3をクリアしないとレベル4に行けない。
分かりやすく商品を可視化する。
特典は、ガイドからメッセージがもらえること。
海外からのリピータもいる。

山田:これまでのサイクリングツアーの3時間だったものを、24時間だとか48時間にあげている。

山田:ここまで高付加価値商品をどう作るかの話だったが、これを商品としてどのように造成するのか? 

③ 商品づくりの留意点は?

マイク:スタッフが安定した仕事になるように考えている。仕事を安定させるため、この月はもっと仕事を与えるとか、そのため、どういう客層にアプローチして仕事を作るかを考え、海外に営業に出向いている。
またネットワークが、海外のエージェントにも繋がっているので、紹介してもらいやすい環境を作っている。

西谷:プロダクトインとマーケットアウトのどちらかが正しいかということではなく、原則は「あるもの活かし」なので、あるものを活かすため、因数分解する。

松島観光船は楽しいが50分かかる。しかし20分も経てば退屈して、携帯を触ってしまう。そこで20分経つと、酒蔵に人に乗り込んでもらって、おつまみと地酒のペアリングを楽しんでもらう。大満足はダメで、「チョット物足りない」ぐらいがちょうど良い。また行きたいなと思わすため余白を残しておく。もう一つあって、次は寿司職人に乗り込んでもらう。

1500円では50分乗るだけだが、4500円では、利き酒体験おつまみ付き、10000円では、貸切で寿司職人乗船、酒とのマリアージュとして、商品を松竹梅で提供している。
「誰に対して、どのように価値をうみだすか」が重要。
新しく何かを始めるのではなく、あるものを活かして、付加価値をつけていくことを基本にしている。

山田:日本人は松島観光船に乗るという楽しみにすぎないが、外国人にとっては、日本滞在の一部。遊覧船の飽きちゃった時間に特別な体験をしてもらうことが、大きな付加価値を与えることになる。

マイク:オール水上(みなかみ)としてサービスを提供することが大事。地元の人と会うことで、また来た時に会いたいと思う。ツーリズムのバリューチェーンで地域をコーディネートしないといけない。

多田:今日のテーマは「高付加価値」だったが、最終的には「地域の価値」だったと思う。地域全体でお客様を迎え入れる。それが消費力にも繋がるし、地域全体の価値を高める。これが「観光」だと思う。
それと「稼働変動を平準化する」、この二つが解決すると、ほとんどの問題が解決すると思う。密にならないことも、雇用のことも… あと一つは「滞在日数を増やす」こと。掛け算なので、滞在日数を増やす価値は大きい。

西谷:観光の目的は、経済の発展にある。それが“おもてなし”や“満足度”の話になってしまう。それさえも手段で、「目的は持続可能な観光地域づくり」として、地域に貢献することにある。

山田:今日は「高付加価値・高品質」がテーマでしたが、持続可能な産業を目指さざるを得ない。その手段として「高付加価値・高品質」の商品を増やすこと。決してお金を落としてもらうことが目的ではなく、地域の価値を高めることだと感じました。