空き家対策がビジネスに がもよんの挑戦
(産経新聞 2021年7月6日)
https://www.sankei.com/article/20210706-R7OQ7IB4F5ISXFNDOW2RV634M4/

【ホッシーのつぶやき】
大阪市城東区の下町、蒲生四丁目かいわい、通称「がもよん」が、地域活性化の成功例と言われているのをご存知でしょうか? 十数年間で空き家を再生した飲食店などは33軒にのぼります。
下町の古民家が趣のある空間となり、若い人を中心に盛り上がっています。
私も数回訪れていますが、居心地の良い空間です。この記事を読んでもらえれば分かりますが、地域活性化は、サポートする人の熱量しだいです。アフターコロナ のフィールドワーク、遠くへ行かなくても「がもよん」も楽しそうです!

【 内 容 】

大阪市城東区の下町、蒲生四丁目かいわい、通称「がもよん」で進む「がもよんにぎわいプロジェクト」は空き家活用の新しいビジネスモデルだ。わずか十数年間で飲食店などに再生した空き家は33軒にのぼった。成功の秘訣(ひけつ)は、手厚い経営サポートや出店者同士のつながりにあると専門家は指摘している。

契約後が肝心
「空き家の活用は普通、物件の契約をしたら関係は終わる。でも、がもよんプロジェクトは、契約からがスタートなんです」とプロジェクトの司令塔で不動産プランナーの和田欣也さん(55)は説明する。
和田さんが空き家再生によるまちづくり成功のポイントの一つとしてあげるのが、出店後の経営サポート。がもよんでは週に1度、店主会議を開いて経営のノウハウや情報を共有している。集まる場所は空き家を改修した集会場「久楽庵(くらくあん)」。この会議が店主たちの連帯感を生み、街の表情にも影響している。

また、大家と店子(たなこ)の間での契約にも工夫がある。大家との交渉では、管理費用や税金の支払いコストを明確に伝えて安心させる。賃貸借契約の期間が決められる「定期借家(しゃっか)」で契約しているのも特徴だ。がもよんでは10年間契約。契約期間が決まっていることで、大家は入居者を管理しやすく、収益見通しも明確になるメリットがある。一方、店子となる借り手には中途解約の制限があるものの、10年間は落ち着いて商売ができ、ほかの繁華街よりもかなり安い家賃は魅力的だ。
事業を継続させるためにはボランティアで仕事はできない。収益の確保も必要だ。がもよんプロジェクトでアドバイザー役を務める和田さんは不動産マッチングや耐震工事、内装工事などの仲介料で収益を得る仕組みを作っている。

会話弾む野菜作り
空き家を店舗にするだけではない。街全体を活気づけるために、違ったアプローチにも挑戦している。
令和元年、前年の台風21号で被害を受けた改修不能の住宅4棟を取り壊し、貸し農園「がもよんファーム」をオープンした。貸し出した30区画が1カ月ですぐに埋まる人気ぶり。
「今も毎週問い合わせがある。一区画(5平方メートル)で月4千円は高いかなと思ったけど、なんのなんの」と和田さんはまんざらでもなさそうだ。利用者の一人である農業高校の元教員が、ほかの利用者に栽培のアドバイスをするなどして世代間交流も盛んになり、まちに新たなコミュニティーが生まれた。

今、畑では、夏野菜などがすくすくと育っている。
水まきをしていた女性は「よその野菜を見てるだけでも楽しい。畑へ来た人と話もするし去年はキュウリがたくさんできてご近所に配ったよ」と笑顔。
和田さんが以前、畑で出会った男性は「わしらみたいなおっさんが公園に1人でおると変な目で見られるけどここは何も気にせんでええねん」と話していたという。畑は人々の居場所も作り出している。

支え合いの仕組み
がもよんは、空き家対策の取り組みの成功例として、外部からも注目されている。
建築学と都市再生を研究する近畿大の宮部浩幸教授はプロジェクト成功の秘訣として「出店者へのサポートの手厚さと、店主らのコミュニティーが充実していること」を挙げる。
「出店時は和田さんが建物の内装だけでなく席数や料理に至るまで、事業計画を一緒に考えてサポートしている。これは店主にとっては貴重なアドバイス」と指摘。「出店後は経営者が個人で努力していくのが普通だが、支え合える仲間がいるのも魅力。飲食店のジャンルが多様なのも飽きさせない。おもしろいまちづくりだと思います」
がもよんプロジェクトの和田さんは、空き家対策の新たなビジネスモデルとして、全国に、がもよんモデルを広げたい考えを持つ。「実行部隊となる人の養成所を作ろうかなと考えています」
宮部教授も「和田さんのようなまちづくりを進めるキーパーソンが必要ですが、出店者へのサポート、そして大家の理解があれば、ほかの地域でも広がる可能性はある」と期待している。

「がもよんにぎわいプロジェクト」のノウハウをまとめた書籍「空き家再生でみんなが稼げる地元をつくる『がもよんモデル』の秘密」(学芸出版社、2200円)が2月、出版された。すでに3千部近くを売り上げ、まもなく重版に迫る勢いだという。
同プロジェクトの発起人である和田欣也さんと不動産業界で長年活躍するライター、中川寛子さんの共著。プロジェクトのあゆみや手法を詳細に解説するほか、まちづくりの専門家や大学教授、設計士らがプロジェクトの成果について語り、空き家や地域活性化の課題解決へのヒントとなる一冊となっている。