エリアセッション:北海道
サウナを通じて、地域資源を見出す新しい観光!
(インバウンドサミット 2021年6月19日)
https://www.youtube.com/watch?v=-DGLaEyFeGM

・林 克彦 – 北海道ホテル 社長 / 日本サウナ学会 理事 / 十勝サウナ協議会 発起人代表        https://www.hokkaidohotel.co.jp
・笹野 美紀恵 – 株式会社ワンブロウ 代表取締役 / サウナしきじ
         https://oneblow.jp
・kozee SASARU – NUGGET WORKS 代表取締役社長 / SASARU project
         https://www.facebook.com/hashtag/sasaru?source=feed_text&epa=HASHTAG
・岡本 昂之 – 日本航空 Web販売部 / W-PIT サ旅プロデューサー
         https://sauna-bu-alliance.themedia.jp/posts/8006055/

【ホッシーのつぶやき】

第3次サウナブームが来ているそうです。サウナを蒸気の箱、老廃物を汗で出すものとしか思っていなかったのですが、奥の深い話が聞けました。

・「サウナ」と「水風呂」に入ると自律神経のスイッチが入り、血流が良くなることを「ととのう」という

・十勝には牧場にサウナがあったり、凍った湖畔のサウナから湖にダイブできる

・20〜30歳の若いサウナーが増えている

・旬の食材を使った日本食を食べる日本人は幸せだ

・日本ほど変化のある国は無い。県をまたげば違ったご当地グルメがある

・旅館の接待は外国には無いサービスなので、外国人は旅館に泊まってみたい

・日本に行くと、特別な体験ができることを発信することが重要

「ととのう」「サウナー(サウナ愛好家)」「サ旅(サウナ目的の旅行)」「サ飯(サウナ後の飯)」、初めて聞く言葉ばかりなので、サウナの効能のネット情報を先に掲載します。

 サウナに入ると、最初は血管が拡張(副交感神経がアップ)し、やがて皮膚に近い血管に血液を集めることで発汗して体温を放出するため血管を収縮(交感神経がアップ)させます。ここで水風呂に入ると、さらに血管が収縮(交感神経がアップ)し、皮膚に近い血管から体の中心部の血管へと血液が移動し、体温が低下しすぎないよう保温します。サウナの高温環境から水風呂で低温環境にさらす事によって自律神経が大きく刺激され、スムーズに血液が流れ出します。人間は血流が促進されると「気持ちいい」という感覚を覚えます。これによって私たちは「ととのった」と感じるわけです。

林:北海道ホテルの林です。北海道エリアはサウナがテーマですが、今後の観光、インバウンドにとってサウナが重要になると思っているので、サウナの聖地“しきじ”の笹野さん、J A Lで「サ旅」を仕掛けた岡本さん、Google Mapのピン、刺さるのKozeeさんとセッションを行います。まず自己紹介をお願いします。

笹野:サウナが好きな方であればご存知の方もいらっしゃると思いますが、ありがたい事にサウナの聖地「しきじ」の娘です。かつては静岡のローカルサウナであった「サウナしきじ」を、飲める名水、日本一気持ち良い水風呂として全国に広めて参りました。今でこそサウナマーケットと言われて連絡をいただくのですが、私は、10年以上前から動いてきたことなので、今後の展開について、皆さんとお話できればと思います。

Kozee:僕は「刺さるのKozee」と言われていまして、Google Mapの目的地に刺さる赤いピンを模倣して、自分の心に刺さってほしい所を、実際に自分の頭で刺さってマーキングして写真を撮って「SASARU project〜地球の刺さり方」としてSNSに発信していたら、本当にgoogleのCMに出演するようになり、そこからタレントとして仕事をいただくようになっています。

 サウナも好きで、自分が出演したラジオ番組でサウナの普及活動をした関係から「プロサウナ」とも言っていただくようになりなりました。観光面では、埼玉県越谷市の観光PR大使をさせていただき、ハワイ州観光局の仕事もしております。3年間に103カ国を巡り、皆んなが行ってみたいと思う絶景や祭り、世界遺産に、実際に僕が刺さってマーキングした写真を掲載した「地球の刺さり方」も出版しました。

岡本:JALの岡本と申します。JALで部員数350名、日本一大きいサウナ部として盛り上がっています。コンセプトは“サウナーの翼になる”として活動しています。サウナを目的に旅をするサウナーを応援するツアー商品だったり、様々なプローモーションをJALで仕掛けております。

 JALでは“サ旅”というウェブサイトを公開しており、フライトとサウナ付きホテルとサウナ御朱印帳がセットになったツアー商品を展開し、サウナファンからご好評を頂いております。今はコロナ禍なので安心して旅をするムードではないですが、今、僕らができる事はより多くの旅の楽しみを仕込む時期だと思っております。安心して旅ができる時期になったら、皆様を各地にお連れしたいと思います。

林:2年前から、「これからサウナが絶対来ますよ」と旅行代理店さんに話していたのですが、ほとんどどこも興味を示さず、JALにもお話しましたが、岡本さんが“サ旅”を始められ完成度も高いので驚いています。私は、十勝の「北海道ホテル」の社長に4年前に就任し、2年半前にサウナをリニュアルしました。当ホテルの温泉には、太古に埋もれた植物が炭化して肌をすべすべにする有機物(フミン酸、フルボ酸)が地下水に溶けだしています。自然のままに汲みあげた源泉には沈殿物も含まれますが、これが肌をすべすべにする美人の湯の素になります。これを本場フィンランド式「ロウリュウ」にかけて、マイナスイオンを含んだ水蒸気により発汗作用を促進しています。 また「医者が教えるサウナの教科書」を書いた日本サウナ学会代表理事・通称サウナ教授の加藤先生と組んで、サウナ前とサウナ後に脳がどのように変化するかという研究もしております。 部屋もサウナ付きにしてフィンランドデザインに改修したり、外気浴ができたり、フィンランドのサウナドリンクを置いたり、いろいろなアロマが楽しめたりします。このような取り組みからサウナ改修後は入浴客が200%になり、北海道版「サウナイキタイ」で3位になりました。

 そしてサウナの聖地フィンランドに行ったところツアーがとてもしっかりしており、日本でも観光も入れた取り組みにしようと、地元の観光協会、DMO、交通関係、病院などと去年4月に「十勝サウナ協議会」を作りました。今、連携チケットを販売しており、コロナ禍でも1000枚近く販売できたので、さらにエリアでしっかり取り組もうとしています。 セッションのテーマですが、「サウナが旅の目的の一つになり得るのか」「インバウンドはサウナを目的に来てくれるのか」をテーマに話をしたいと思っています。最初は笹野さんからお聞きしたいと思います。

笹野:私は以前モデルをしていました。モデルになることが目的ではなくて、コンテンツ企画や運営に携わりたくて、平成23年にワンブローを設立しました。飲食店、サウナ、ホテルなどのプロデュースを手掛けています。 今でこそサウナのマーケットがあるのですが、約10年前は女性がほとんど来ない男性社会でした。ワンブローの仕事はレストランのプロデュースや企画が中心だったので、もっと自分でできるものはないかと思うなか、灯台もと暗しではないですが、実家のサウナの水が違うことを発見しました。

 今は「サウナが来てる」「サウナマーケット凄いねぇ」などと言われるのですが、サウナは全体的なワードであり、そこから1箇所を選ぶためには、そこにしかない水とか、もう一つ上のステージに行かないとダメなのだと思っています。

岡本:サウナを目的に旅をする起爆剤は「しきじ」だと思っています。ネットでも「とりあえず“しきじ”にはいかないとダメ」みたいなコメントが流れていて、サウナを目的にする「サ旅」みたいな文脈が生まれていると思っています。“しきじ”のブランディングは水じゃないですか。笹野さんはどのように“水が強み”だと気付かれたのですか?

笹野:以前の話ですが、都心のサウナの水はキレイけれどカルキ臭いとか肌がピリピリするということがありました。その時は「汗をかく」ことが目的だったのでこんなものかと思っていましたが、実家のサウナ“しきじ”の水は天然水でこのようなことはなく、疲れて都会のサウナに入った時ちょっと臭く感じて、その違いに愕然としました。水風呂の水のクオリティに気付いていなかったのです。

林:自分もサウナが好きになってから十勝の水は美味しいと言えるようになりました。北海道のサウナの聖地と言われる上富良野町の「白銀荘」は地下水が良いと思っていて、運営されている副町長に「水風呂が凄いですよ」「水温が多分シングルです」「サウナーは水温も気にしているから温度計を設置した方がいいですよ」と言うと、直ぐに「分かった」と言われたんです。多分、施設側も気付いていないことが多いと思うんです。そこから改善しなきゃいけないということで、私は「十勝サウナ協議会」でルールを作り、水温も分かるようにしました。

笹野:サウナ以前に、汗をかくことが好きな人って沢山いるじゃないですか。今はサウナの水風呂が好きとか、天然水が良いとか語っていますけど、その手前の岩盤浴の暑い所でダラダラしたいとか、水風呂でキュって肌を締めると肌にハリが出るとか、女性の気持ちも分かるんです。いろんな要素が分かり、サウナは単なる熱い箱じゃないと認識していただくだけで変わってくるのかなぁと思っています。

林:温泉だけではなくて“温泉+サウナ”にするとメディアの発信に違いが出ます。日本人もアイスランドの温泉などに行ききたいと思うように、日本のサウナが素晴らしいと聞くと、本場のフィンランドの人や北欧の人たちも日本のサウナに来るのではないかと思うのですが、kozeeさんいかがでしょうか?

Kozee:僕が世界を回った印象は、日本人が思っている以上に外国人は日本に興味を持っておられます。日本への興味のベスト3の一番目は「食」です。「旬の食材を使った日本食を食べる日本人は幸せだ」「日本人が童顔でいられるのは日本のフレッシュな食材を摂っているから」だと話されています。二番目が温泉や旅館です。旅館の接待(おもてなし)は外国には無いサービスなので旅館に泊まってみたいと言います。三番目が自然や神社仏閣です。北海道は自然が豊かであり、サウナ+自然を売り出すのに向いています。 サウナの利用者は、これまで年齢の高い人が多かったのですが、ここ数年、メディアの後押しもあり、若い層を中心にモチベーションが高くなっています。「サウナー」と呼ばれる人も増えており、日常的な会話でサウナの話を聞かない日がないくらいです。サウナに入った時の感覚を、人に伝えるのは難しいですが、最近は「ととのう」と言う言葉を使う方が増えています。と言っても「ととのう」という感覚を説明するのは難しい問題であり、この感覚を理解できるようになることがこれからのハードルだと思います。

岡本:JALの顧客層は40〜50歳が多いですが、“サ旅”に興味を持ってリツイートやシェアしてくれる方は20〜30歳が中心です。kozeeさんが言ったように、若者の発信力の強さを感じており、インバウンドが興味のある所とサウナとの掛け合わせる事が重要だと思います。 昨年、十勝を訪問したのですが、十勝には牧場にサウナがあったり、凍った湖の隣にサウナがあってサウナから湖にそのままダイブしたりするロケーションがあリます。サウナーを体験してから十勝の美味しい食事や、サウナ×アウトドアも相性が良いと思っており、“サ旅”の次のフェーズを感じています。

林: kozeeさんが言ったように「食」も大事だし、施設も大事だし、人も大事だし、複合的要素が絡み合って、次なるものにつながっていく気がします。

Kozee:僕は前職、旅のプログラムを担当するテレビマンでした。その時、観光スポットを巡るのに、点で考えるのではなく一筆書きでコースを作ります。スタート地点から観光スポットに移動して、ご飯を食べ、旅館に行くだけだと、番組の尺が成立しないので、アクティビティを入れたりします。これからはこのアクティビティにサウナを入れるようになると思います。また日本ほど変化のある国は無いと思っています。アメリカは広くても食べるものは変わらないですが、日本は県をまたげば違うご当地グルメがあります。日本に住んでいると分かりづらいことですが、ここまで旅をして楽しい国はなかなかないと思います。もともと日本は温泉王国で、日本のホットスプリングに入りたいという外国人の憧れが強いので、日本のサウナが凄いという噂が外国人に伝われば、「日本のサウナに入りたい」となると思っています。

笹野:温浴施設は私立と公衆浴場の2つのパターンがあり、銭湯はかまぼこを切ったように作りが一緒ですが、私立の温浴施設はオーナーさんの個性がどんどん出てきています。このオーナーさんの個性を温泉と掛け合わせると、もっとスピンが速くなると思います。日本は温泉というキーワードが強いので、温泉に紐づいたサウナというカルチャーが発信できれば良いと思います。

Kozee:そのカルチャーが大切です。カルチャー化していることに気付いて掴みに行かないといけないのですが、今はカルチャー化している途中だと思います。サウナを知らない人もまだまでいるので、カルチャー化するために必要なものは何か? こういう場で話すことだったりするのだと思います。

林:ファッショナブルな面では、「TTNEととのえる」という会社が“ととのえ親方”だったり“サウナ師匠”だったりします。今日プレスリリースされていましたが知床に世界遺産級の凄いサウナができたようです。

笹野:北海道は、北海道自体のポテンシャルが高すぎて、景色もキレイし、食べ物も美味しい、空気も良いと思います。例えば、北海道のサウナと食と掛け合わせたり、温泉と絶景を掛け合わせたりするのはアリですが、海外の方から見た時、サウナ単体では難しいと思うので、お寿司×サウナとか、何かプラスオンする事を考えないといけないと思っています。

林:Kozeeさんも笹野さんもおっしゃる通り、サウナだけ頑張ってもダメで「食」がキーだと思っています。当ホテルでは、北海道の食材だけを使った天ぷら「エゾ天ぷら」と名付けているのですが、非常に評判で、予約率も上がっています。そのような差別化できる仕掛けが重要だと思います。 そういう意味では「JALの“サ旅”に入れてください」という依頼が多そうですがいかがですか?

岡本:めちゃくちゃ多いです。まだ航空需要が低迷状態なので、利用者数としてはそんなに伸びてはいないのですが、それでもサウナに可能性を感じて「ウチも入れてくれ」という話もありますし、自治体から「サウナ関連で取り上げてくれないか」とお声が掛かるので、サウナの可能性に気付き始めていることをすごく感じます。“サ旅”のサイトを見ていただければ分かりますが、加盟施設に対してJALサウナ部員350名が、それぞれ推しのポイントをコメントしています。何か特徴があることが必要です。

林:「十勝サウナ協議会」はホテルで作った協議会ですけど、そこにバス業界、タクシー業界、観光業界、医療と、お互いにメリットがある所を入れています。そして次は“サ飯”だと思い、シェフに入ってもらって地域の“サ飯”開発をやろうと進めている所です。サウナだけで頑張っているところが多いですが、いろんな所と連携するのが非常に重要です。

林:残り約8分なので“まとめ”に入りたいと思います。

岡本:今後も“サウナ”をキーとしてJALとしても何か取り組みたいと思います。それにはサウナという文脈だけではなくて、温泉と掛け合わせたり、日本独自の食文化であったり、自然のロケーションであったり、人を掛け合わせて、日本に行くと少し違った特別な体験ができるということを発信していけたらと思います。

林:JALは日本を代表する企業ですし、グローバルネットワークを持っておられるのでよろしくお願いします。また、ビジネスラウンジにサウナを作っていただきたいと思っているので、よろしくお願いします。

岡本:ヘルシンキのラウンジにはサウナがあるので、精一杯、尽力させていただきます。

Kozee:あっという間でした。聴いてくれた人たちも、今日こういう話を聞いたから明日にもサウナに入ってみよう、騙されたと思ってサウナに入ってみようと思う人が増えることを願っています。 サウナに入るとすっきりした頭になるので、景観が良い所はもっと景観が良く見えたり、ご飯がめっちゃ美味しくなったりとかするので、五感で感じるのがサウナなのだと思っています。

林:今、サウナ内は会話禁止になっており、コロナが落ち着いてからですが、サウナはコミュニケーションが弾む場なので、家族団欒だったり、カップルも含めて、いろんな方のコミュニケーションの場になるのが良いのかなあと思っています。

笹野:サウナに入ったことがない方には分かりにくかったかもしれませんが、サウナを好きになってもらうキッカケになったのかと思います。また、食とか、温泉とか、美容、マッサージとか、日本ならではの竹を使ったマッサージもあるので、いろいろなところが融合して、新しいビジネスができればと思います。

林: 60〜70歳のサウナを牽引してきた世代にも敬意を評したいと思いますが、これから先は若い人や女性が作るのだと思います。JALの“サ旅”のクラブも女性が4割おられるので、女性中心で盛り上がっていくと思いますが、その牽引役を笹野さんにお願いしたいと思います。 定刻になりましたので終了します。皆さん本当にありがとうございました。