【データ】旅館経営アンケート調査 観光経済新聞調べ
(観光経済新聞 2021年1月16日)
https://www.kankokeizai.com/【データ】旅館経営アンケート調査%E3%80%80観光経済新/

【ポイント】
旅館は、新型コロナの影響で2020年業績は大きく落ち込むは72%となった。
今後、宿泊単価は「上昇」が18%、「やや上昇」が41%と上昇基調になるようだ。
販売チャンネルは、旅行会社経由35%、OTA経由45%、直販20%の比率になるという。
手数料率は、大手旅行会社「15%」、OTA「10%」程度と、手数料率を高いと感じる傾向が強い。
旅館の外国人宿泊客は5%未満が多く、日本人客が圧倒的多数だとすれば、もっと直販の比率を上げる工夫、リピータ戦略に徹した方が良いのではないかと感じる。

【 内 容 】
旅館業績「大きく落ち込む」
新型コロナウイルス感染症拡大の影響で2020年の旅館業績は大きく落ち込む―。観光経済新聞社は、日本旅館協会会員などの旅館に経営状況を聞くアンケート調査を実施した。20年の業績(見込み)について「大きく伸びる」「やや伸びる」「横ばい」「やや落ち込む」「大きく落ち込む」の5段階からの選択式で聞いたところ、「大きく落ち込む」が72.1%を占めた。前年は8.0%で、64.1ポイントも増加した。
大幅ではないが「やや落ち込む」の回答は17.8%となり、前年の28.7%から10.9ポイント減少。しかし、「やや落ち込む」と「大きく落ち込む」の合計値で見ると前年比53.2ポイント増の89.9%となり、予想できたことだが、コロナが旅館・ホテル経営に大打撃を与えたことが数字で示された。
「大きく伸びる」は前年の4.0%からゼロ。「やや伸びる」も前年の26.0%からわずか3.1%に。「横ばい」は前年の33.3%から7.0%に減少した。
10年以降の推移を見ると、20年は最も数字が悪化している。さらに21年の業績見込みも聞いたところ、「やや落ち込む」が37.6%、「大きく落ち込む」が25.6%で、「当面はコロナの影響が続く」との見方が大半を占めている。

宿泊単価の今後の見通しについても質問した。結果は、「上昇」が18.3%、「やや上昇」が41.2%とこの合計が6割を占めており、宿泊単価は上昇基調となる予想だ。
また、経営の課題について自由記入形式で聞いた。今回も圧倒的に多いのが「人手不足」あるいは「人材確保」だ。「社員教育」なども含め人材に関する悩みは絶えない。2番目に多いのはコロナ問題で「コロナ対策」をはじめ「コロナ禍での集客」「コロナ後の経営」などの声が上がった。3番目が「Go Toトラベルキャンペーン後の集客」だった。

客室を販売するチャネルについて今回も、旅行会社、OTA、直販それぞれの割合を聞いた。
旅行会社経由は「21~30%」が27.4%を占め、最も多い。前回は「31~40%」が26.0%と最多だったことから、旅行会社の依存度は下がった。
OTA経由の最多の範囲は「41~50%」(26.1%)となり、前回の「21~30%」(25.2%)から20%程度上昇。OTAに対する依存度は大きく上がった。
販売比率を高めたいと旅館・ホテルが考えているのが直販だ。しかし、今回の結果は「11~20%」(29.3%)が最多で、前回の「21~30%」(32.3%)から下がっている。
旅行会社、OTA、直販の平均的な比率を推測すると、今回は旅行会社経由35%、OTA経由45%、直販20%ぐらいだろうか。OTAへの依存度が大きく高まったのが今回の傾向と言える。

各エージェントの手数料率とその手数料が「高い」か「適正」かについて聞いた。
旅行会社の手数料率について最も多い回答は、今回も大手旅行会社の多くが基本線とする「15%」だった。割合は58.1%で、前回の48.7%から10ポイント程度下がった。
その旅行会社の手数料は「高い」が85.3%を占め大多数となった。割合は前回の76.5%から増加している。
OTA手数料率の最多は今回も「10%」。割合は52.9%で、前回の50.4%とほぼ同程度だ。
そのOTA手数料率は、旅行会社と同様、「高い」が大半を占める。割合は今回が70.0%、前回が67.2%だった。

外国人「採用している」68%
宿泊人員に占める外国人客の割合を聞くと、今回も「5%未満」が54.0%と最も多い。割合は前回の53.8%と同程度。コロナで訪日外国人旅行がほぼ消滅した影響は、前回2.1%だった「0%」が31.0%と大きく増加したところに現れている。
前回に続いて「外国人を社員、パート・アルバイトとして採用しているか」について三択で聞いた。今回も「採用している」が67.5%と最も多い。割合は前回の68.5%とほぼ同程度。前回と比較すると「今後、検討する」が23.3%から15.1%に減り、「採用する予定はない」が8.2%から17.5%に増えた。
意見欄を見ると、「人手不足」を採用理由とする回答が多い。勤務態度については「頑張っている」「仕事熱心」と高く評価している声もあった。

調査の概要
この調査は、往復アンケートはがきを2020年11月に郵送し、日本旅館協会の会員などの旅館・ホテルに(1)20年の業績見込み(2)21年の業績見込み(3)宿泊単価の見通し(4)経営の課題(5)旅行会社、OTA、直販の各客室販売比率(6)旅行会社とOTAの実質的な手数料率(企画参画料金、ポイント負担・ネット広告などを含む)(7)その手数料は高いか適正か(8)宿泊人員に占める外国人客の割合(9)外国人を社員、パート・アルバイトとして採用しているか―などについて聞いた。

回答数は133軒。客室規模別では「10~30室」が15軒、「31~50室」が26軒、「51~75室」が30軒、「76~100室」が23軒、「101室以上」が39軒だった。