サービス概念の薄い中国人に、日本式「おもてなし」の心を伝える方法(ダイヤモンドオンライン 2019年11月8日)
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中国で日本式エステティックサロンの人気に伴って、中国企業から日本式経営の研修依頼が増えている。しかし中国人は、日本の「おもてなし」や「チームワーク」について理解することが難しい。そのようななかで日本の「朝礼」が、中国人受講者に好評だという。中国人は、子どもの頃からチームで行動するという教育を受けていない。集団の中で自分が選ばれることが第一であり、与えられた範囲以上の仕事をしないという国民性だ。「チームワーク」や「おもてなし」により「売り上げが上がる」につながると理解するのが難しいという。

【ポイント】中国で今、美容ブームを背景に、エステティックサロンが続々と生まれている。なかでも、日本式サービスを提供するサロンは高級サロンとされていて、中国女性にとって一種のステータスになっている。昨今は、上海や北京など大都会の若い富裕層たちの間で、日本に静養のため個人旅行をする人が増えている。そんな影響もあって、日本式サービスの良さが広がりつつある。

中国企業に日本式のエステティックを指導する研修事業が、この2~3年は研修依頼の件数が増えている。
技術面もさることながら、お客さまに肌の状態を丁寧にヒアリングし、最も適した化粧品や美容サービスをお薦めして、心身共に美しさを保っていただく、「おもてなしの心」で接するエステティックをいう。
この方法でリピーターを増やし、またその方の紹介で新規顧客を増やしてきた日本での実績が、中国のサロン経営者に伝わり、研修依頼が増えてきた。

受講者は、中国のサロン経営者とエステティシャンであり、日中の価値観や習慣の違いによる理解の壁にぶち当たることがしばしばある。
まず、「おもてなし」の意味をなかなか理解してもらうことができない。中国人は何よりも自分の意思を優先しますから、基本的に「見知らぬ人にサービスをする」という概念は持っていない。他者への貢献心が強い日本人とは、国民性が大きく異なる点です。
「お客さまには笑顔で」と話しても、ほぼ100%の割合で「楽しくないのに笑えません」という返事が返ってくる。
「スタッフ全員が笑顔で対応するサロンの方が、そうでないサロンより売り上げが上がる」という説明を、粘り強く行う必要がある。

もう一つの研修項目が「チームワーク」の大切さを伝えること。
エステティシャンは、技術力やカウンセリング力さえ磨けば、顧客が付くわけではありません。メンバー全員で、お客さまがサロンを訪問しやすい雰囲気を作ることでリピーターが生まれる。
だから、施術だけではなく、掃除や備品の整理など目に見えない仕事もチームで協力して行う必要がある。また自分で解決できない問題に、他のメンバーの知恵を借りることもとても大切。
しかし、中国の人は、子どもの頃からチームで行動するという教育を受けていない。日本の学校のような全員参加の運動会や部活動はなく、スポーツは選ばれたスタープレーヤーだけが能力を磨くものという認識です。

集団の中で自分が選ばれることが第一であり、自分が与えられた範囲以上の仕事をしないという合理的な発想をする国民性です。

しかし、日本式エステティックを習得するには、チームワークの大切さを知ってもらう必要がある。そこで、研修に取り入れたのが「朝礼」です。単にみんなで集まってリーダーが挨拶をするという形式的なものではなく、メンバー一人ひとりが、順番に大きな声で「1日の目標」を全員の前で発表したり、お互いの身だしなみの確認を行った。すると、意外にもゲーム感覚で、うれしそうに声を出し、中国人受講者には好評だったという。