タトゥー客拒否は「不適切」 政府通知に悩む温泉業界
(朝日新聞デジタル 2019年8月7日)
https://digital.asahi.com/articles/ASM8452BXM84TIPE00F.html?ref=rss

入れ墨(タトゥー)について、観光庁は16年3月、入れ墨がある外国人観光客への対応を「日本温泉協会」などに「入れ墨をしていることのみをもって、入浴を拒否することは適切ではない」と通知し、安倍政権も17年2月、入れ墨だけを理由に拒むことは難しいとの答弁書を閣議決定したという。
しかし入れ墨を反社会的とみる風潮は残っており、日本人の49%がタトゥーは「不快」というアンケート結果もある。
当面は、別府温泉のように、受け入れ可能な所と受け入れできない所の情報提供が大切なようだ。

【ポイント】
公衆浴場や温泉旅館で、入れ墨(タトゥー)を容認する動きが出ている。2020年の東京五輪・パラリンピックを控え、政府は入れ墨だけを理由に利用を拒むのは「不適切」との方針を打ち出した。

福島市の土湯(つちゆ)温泉のホテル「山水荘」は、「海外からの旅行客の増加が見込まれる中、タトゥーを排除しても経営が苦しくなるだけ」と開放に踏みきった理由を語る。今のところ他の客からの苦情はなく、今後は「入れ墨可」と掲示することも考えている。容認する以上、入れ墨の種類によって区別することはしない。

観光庁は16年3月、入れ墨がある外国人観光客への対応を一般社団法人「日本温泉協会」などに「入れ墨をしていることのみをもって、入浴を拒否することは適切ではない」と文書で通知した。シールで覆う▽入浴時間を分ける▽貸し切り風呂を案内する――といった対応事例を紹介した。
安倍政権も17年2月、入れ墨だけを理由に拒むことは難しいとの答弁書を閣議決定した。

公衆浴場法には伝染病患者などに関してはあるが、入れ墨についての規定はなく、日本温泉協会の担当者は「法的根拠は弱い。施設ごとの判断が慣習として定着してきた」と説明する。
大分県別府市では、入浴できる市営温泉などを紹介する外国人向けの冊子を改めて作り、周知に努めている。

別府では1日平均1万2千人が宿泊。外国人観光客が3割で、10月にはラグビーワールドカップ(W杯)の試合も控える。その前にさらに一歩を踏み出すか、民間施設も検討を始めた。
別府市旅館ホテル組合連合会ではW杯期間中、入れ墨がある客の入浴を認められないか協議している。利用者にアンケート中で、賛成が多ければ解禁に踏み切る。その場合、外国人も日本人も区別しない。堀精治事務局長は「組合員から『外国人だけ認めるのは逆に差別だ』という意見が出た」と明かす。

有馬温泉観光協会(神戸市)は、外国人からタトゥーについての問い合わせを受けると、大浴場の利用は断り、家族風呂や市営の温泉施設を案内している。「特に問題は起きておらず、方針を変える予定はない」との立場だ。