訪日客の忘れ物、年1千万個以上? 海外返送が負担に
(日経電子版 2019/5/29)
https://style.nikkei.com/article/DGXMZO44755250U9A510C1AC8Z01?channel=DF220420167277

訪日外国人の忘れ物でホテルやレンタカー会社が頭を痛めている。
不用品として放棄したものか、忘れ物かもわからない。宿泊先名簿をもとに連絡し、希望があれば先方の費用負担で送り返す。
海外発送手続きは複雑だ。重量や大きさを計測するとともに、スマホやデジカメなどリチウム電池を含む製品は発送できる数量が限られるなど、品物によって規定がある。
国内なら着払いで送ることもできるが、海外発送で着払い対応する運送業者は少ない。客から送料を海外送金してもらうが、手間がかかり、本業の負担になっている。
全国の宿泊施設で外国人宿泊客が残した忘れ物は、年間1千万個以上だと試算されている。

【ポイント】
訪日外国人(インバウンド)の急増に伴い、ホテルやレンタカーの忘れ物が問題になっている。
スマホや衣類、食料など種類や大きさは様々。海外の持ち主と連絡を取ったり、発送手続きを取ったりする作業は煩雑で、担当者を悩ませている。

ホテルでは、チェックアウトを済ませた客室から集められた忘れ物がフロントに山積みになる。
衣類や化粧品など、「多い日は抱えるのが大変なほど」とこぼす。中にはスマホや時計などの貴重品もある。
宿泊先名簿をもとに持ち主に連絡し、希望があれば先方の費用負担で送り返す。
週に2~3件は海外への配送希望があるという。「旅行サイトでの評価につながるため、可能な限り丁寧な対応を心がけている」

レンタカーで忘れ物が見つかることも多い。関西国際空港内にあるレンタカー会社では、訪日客の忘れ物で保管用の棚が埋まる。帰国便の出発時刻ギリギリに空港に到着する旅行者が多く、焦って車内に落としてしまう客が目立つという。

事業者を悩ませるのが、複雑な海外発送手続きだ。
配送品の重量などを確認する必要があるほか、スマホやデジタルカメラなどリチウム電池を含む製品は一度に発送できる数量が限られるなど、品物によって細かな規定がある。
国内なら着払いで送ることができるが、海外発送で着払いに対応する運送業者は少ない。
返却時には客に送料を海外送金してもらっている。1件ごとに時間がかかり、本業の負担になっていると話す。

大阪市の物流管理会社「オー・エス・エス」は2017年10月、忘れ物などの発送業務を請け負う「忘れ物国際発送サービス」を始めた。同社が海外の客とメールで連絡を取り、オンライン決済で直接送料を請求する仕組みで、施設側の費用負担はない。

同社の試算では、全国の宿泊施設で外国人宿泊客が残した忘れ物は、年間1千万個以上。同社の契約先は19年3月時点で全国の千施設を超えており、毎日数十個の発送を請け負っているという。