ポストコロナにおける中国人訪日意識の最新動向
(やまとごころ 2020年9月7日)
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【ポイント】
中国では、海外旅行の禁止が続いているが、国内旅行はこの夏7割程度まで回復したという。
10月から訪日解禁となった場合の希望時期を聞くと、半年以内が約9割で、2021年3~4月の桜シーズンが最も多く、旅行スタイルは、個人旅行が7割を占め、団体旅行は6%と、個人旅行に大きくシフトしている。
旅行への意識も、従来の「安さ重視」から「衛生・安全面」「品質サービス」に変化しており、北海道や感染者が少なく、人口が少ない東北が人気となっている。
また、まだ知られていない穴場を望む人が36%もいるという。

【 概 要 】
中国でも7月14日から県をまたぐ旅行パッケージ販売が許可され、国内旅行は急速に回復しつつある。
訪日中国人ビジネスで活躍のENtrance株式会社代表取締役の王璇氏を迎え、中国におけるコロナ後の旅行トレンドと訪日意向の変化について、ENtranceが実施したアンケート結果をもとに読み解いていく。中国人インバウンド復活に向けて今できることは何か、具体的なアドバイスも伺った。

withコロナ時代の中国国内観光の動向
新型コロナウイルス感染症の影響は中国観光業にも大打撃を与えた。中国国内の約150万社ある旅行会社のうち、この半年で約4.9万社が倒産した。一方で、新たな旅行会社の登記が13万社あり、異業種からの参入が多いという。
中国の国内旅行はこの夏、従来の約7割程度まで回復してきたと王氏は見ている。最近の旅行商品で目立つのが、辺境の地とマイクロ・ツーリズムだ。人が少なく自然豊かな地方へのツアーや北京故宮博物館の日帰りツアーや、野生動物園ツアーが人気となっている。アイランドリゾートも人気で、7月の海南島のリゾートホテル稼働率は90%台まで戻っている。
感染を避けるためにキャンピングカーでの旅行や一カ所のリゾートに長期滞在するスタイルも増えている。

中国市場で浸透するライブコマースを活用した旅行商品販売
コロナ禍で消費者へのアプローチ方法も変化している。中国ではライブコマース(直播)による旅行商品の販売が加速している。中国の「直播」は日本でいうYouTubeのライブ配信に当たるもので、エンターテインメントだけでなく、教育やビジネスシーンでも盛んに利用されている。ライブ配信中にだけ買えるお得なチケットや、名物キャストを目当てにたくさんの参加者が集まる。
先日Trip.comが実施したライブコマースでは、日本のホテルだけで約2万3000室分、取扱高約3.9億円が取引された。売上が立てづらい時期を乗り切るため、観光関連事業者同士が連携して、ホテルや航空券のサブスクリプション商品も増えている。

中国人旅行者はいつ戻るのか、来年の桜シーズンに標準
Entrance(株)では、中国人500人を対象に、コロナ収束後の中国人訪日意識を5~6月に調査した。
10月から日本入国解禁となった場合、「いつ日本に行きたいか」を聞いたところ、約9割の人が半年以内に訪日意向があった。月別では、2021年3~4月の桜シーズンが最も多く、31%を占めた。次に11~12月が20%、2021年1~2月が19.7%だった。
訪日経験が多いリピーターであればあるほど、早く日本に行き、長く滞在したい傾向が表れた。

団体旅行よりも安心・安全な個人旅行を求めている。
訪日旅行のスタイルを聞くと、個人旅行が7割を占め、団体旅行は6%だった。さらにカスタマイズ旅行も24.3%いた。

旅行商品を選ぶ際、従来は安さ重視が多かったが、今回調査では「旅行先の衛生・安全面」が59%、「品質サービス」が51%と、意識の変化が顕著に表れた。旅行先では北海道が50%、東北など感染者が少なく人口が少ない地域も人気となった。また、まだ知られていない穴場を望む人が36.3%もいた。訪日旅行の目的は、自然とリラクゼーションを挙げる人が多かった。これまでの周遊観光から滞在型に移行していくと予想される。だが買い物も依然としてニーズが高かい。

自然とリラクゼーションをテーマに他地域と差別化した情報発信を
今回調査では、北海道や東北など、人が少なく自然が豊かな場所を旅先に選ぶ傾向が顕著に出ていたが、こうした地域が集客するためには何が必要になってくるだろうか。
王氏は今すぐ観光事業者ができることとして「情報発信」を挙げる。テーマは訪日中国人に人気がある自然やリラクゼーションでよいが、埋没しないように他地域との差別化が不可欠だという。
自分たちの地域ならではのストーリーや唯一無二の魅力を掘り下げてアピールする必要がある。
次に、安心・安全につながる衛生管理体制の整備とプライベートツアーなどの旅行商品の造成を挙げた。

今、中国国内で人気を集めている旅行パッケージ商品を参考にしながら、アウトドアや長期滞在プランを充実させることも一案だ。プライベートツアー商品の造成にあたっては、特に地方部においては二次交通が鍵となる。ホテル・旅館だけでなく、地域の交通事業者、観光事業者同士の連携が大事になるだろう。
団体より個人旅行への移行が加速するなか、大手よりカスタマイズ旅行を得意とする中小の旅行社とのつながりを強化しておくことも重要だという。
「中国マーケットはいち早く回復してきており、中国人の訪日意向は高い。withコロナ時代のニューノーマルで受け入れ体制を整えていきましょう」と王氏はメッセージを送った。