世界のラグジュアリー旅行の最新事情、旅行価格の上昇の影響受けずバブル継続、予約確保の競争激化へ【外電】
(トラベルボイス 2023年3月10日)
https://www.travelvoice.jp/20230310-153061

【ホッシーのつぶやき】
富裕層の年間旅行予算は1人4万8000ドル(653万円)といい、2023年の予約は2019年比152%増。客室単価は2019年比83%増で、急速に富裕層観光が動き出しており、中国市場の回復でさらに勢いを増すようだ。
80歳を超えると旅行をしなくなるという。日本の観光業界は厳しくなるが、世界市場を取り込んだ高付加価値、高単価戦略が重要になることは自明のようだ。

【 内 容 】
旅行にかける年間予算は1人4万8000ドル(約653万円)という富裕層需要の活況により、ホテルなどの仕入れ競争がますます激化。価格の上昇は、しばらく収まりそうにない――。

米国ではリッチな旅行者たちが、2023年も潤沢な予算を投じて海外へ出かける準備に余念がない。こうしたなか、富裕層向けの世界的ラグジュアリー・トラベル・ネットワーク「Virtuoso(ヴァーチュオソ)」に加盟するエージェントたちは、かつてないほど忙しい。

ヴァーチュオソは、完全紹介制で富裕層旅行者の顧客と、メンバー・エージェント、ホテル・クルーズなどのサプライヤーをつなぐ組織。同社によると、2023年の予約は2019年比152%増で推移しており、ラグジュアリー旅行市場のバブルが収まる気配はまだない。エグゼクティブ・バイズプレジデント、デビット・コルナー氏は、旺盛な需要により、旅行全般で競合価格が値上がりしていると指摘。先日、サンフランシスコで行った同社のオーナーズ・ミーティングでの話題について話してくれた。

今、予約の動きに最も勢いがあるのはホテルで、2019年比では235%増だとコルナー氏。ヴァーチュオソが取り扱う予約分については、平均客室単価(ADR)が「過去最高値の更新が続いている」という。

「客室単価は、あと10~15%ほど上昇するというのが当社の予想。2019年比では83%増ということになる」と付け加えた。当面、価格が下がることはないので、例えばイタリアで、お目当ての部屋を予約するタイミングを待っているなら、すでに2023年夏の予約は間に合わないかもしれないという。

価格へのプレッシャーは、マリオットやヒルトンの決算報告からも垣間見える。客室料金は2019年比でそれぞれ13%増と14%増、いずれもラグジュアリーセグメントの客室需要が上昇要因としている。

ヴァーチュオソの主要ターゲットは、世帯収入トップ5%の人々だと言われている。つまり同社の顧客層にとって、価格上昇はそれほど問題ではない。同社の社内調査では、今年の旅行予算は1人推定4万8000ドル(約653万円)。なお、昨年時点では、同社顧客による旅行消費額は1人平均2万700ドル(約282万円)で、今年は34%増の2万7800ドル(約378万円)になると予測していた。

世界最大級の旅行大手、TUIグループでも、2023年夏については驚異的な状況になるとの見方を示している。今夏の価格は6%増を見込んでおり、顧客の旅行意欲には、世界的なインフレ不安の影響がほとんどないという。

予約も消費額も拡大が続くなか、ヴァーチュオソでは、売上が百万ドル規模に達した旅行アドバイザーが、例年より早いペースで増えているとコルナー氏。同社のネットワークに加盟する旅行会社や旅行エージェントの数も増えている。昨年、旅行アドバイザー数は5%増えて2万1000人、事業拠点は計54カ国となり、アドバイザーの半分は米国外で仕事している。提携パートナーは2340社、年商は280~320億ドル(約3兆8080億~4兆3520億円)にのぼる。

中国マーケットの本格回復に備える
これから中国市場が回復することで、価格高騰の炎は、さらに勢いを増すとコルナー氏は予測している。ヴァーチュオソが中国市場への取り組みを本格化した矢先、パンデミックが起きたが、アジア各地に1000社ほどあるメンバー旅行会社や旅行アドバイザーたちは、国内旅行を取扱いながら現在に至る。中国は今後、最も急成長するマーケットのひとつだ。

「中国の国境オープンは大歓迎だ。我々は、アジア各地に提携パートナー事業者を増やし、各地域それぞれの旅行者ニーズや、渡航先の希望に対応できる体制を整えてきた。世界各地のメンバー旅行会社には、予約できるものはすぐに抑えておくことを推奨している。なぜなら中国やその他の国々から、今後、さらに多くの旅行者が動き出すからだ」。

ベスト・レートを求めて
ヴァーチュオソ認定の旅行アドバイザーで、エンバーク・ビヨンド社のコンサルタントでもあるカレン・カボット氏も、前述の同社データと同じ需要動向になっていると話す。

カボット氏の専門分野は、少人数グループやおひとりさま旅行。今はかつてないほど多忙で、年内に予定しているパリ、ポルトガル、イタリア、モロッコなどへの旅行プラン作りに追われている。

「ヨーロッパから戻ったところで、とにかく忙しい。もっと色々な体験をしたい人たちが多くて、安心安全な状況下で人と人とのあたたかい交流を求めている」とカボット氏。

同氏が手掛ける旅行はすべて、自身がこれまで一緒に仕事したことがあり、よく知っているガイドや専門家によるキュレーションとなっている。困っているのは、管理業務や事務作業の方で、サポートしてくれる人を探していた。

コルナー氏によると、ヴァーチュオソと提携する米国の旅行会社のうち、94%はスタッフを募集中。また同社ネットワーク全体の82%は、旅行アドバイザーを補佐するスタッフのみを探しており、業務の効率化や営業拡大を目指しているという。

旅行アドバイザー向けの研修は、引き続き、重要になる。

「我々は、出来るだけ早く全員の事業が軌道に乗り、ビジネスとして成り立つようにと考えている。ヴァーチュオソ認定の旅行アドバイザー(VCTA)プログラムの修了者は、他のところで学んだ人に比べて、売上高が平均72%高くなっている」。

持続可能性をトラッキング
労働力不足は、旅行業における大きな問題だが、同じく重要な課題となっているのがレスポンシブル・ツーリズムだ。同社が実施した社内調査では、旅行者の75%は、責任ある旅行のためなら、費用が高くなっても構わないと考えているが、その条件として、負担分がどのように使われるのかを知りたがっている。

良き旅行者でありたい、という意志は強いが、実際の行動に反映させるところまでは至っていない、とコルナー氏は顧客たちの現状について話す。商品によって様々なアプローチがあることも、その影響をトラッキングするのが難しい理由だ。とはいえ、ヴァーチュオソが取り組むべき課題の一つだと同氏は感じている。

「(ウェブサイト上には)サステナビリティのセクションがあり、提携各社がそれぞれのストーリーや、詳しい情報源へのリンクを掲載できるようにしている。またサステナブルな選択肢にもっと目を向けてもらえるようなインスピレーション、旅行アドバイザーがサステナビリティについて説明しやすい手法について、ヴァーチュオソでは様々なテストも行っている」(同氏)。

※ドル円換算は1ドル136円でトラベルボイス編集部が算出

※編集部注:この記事は、米・観光専門ニュースメディア「スキフト(skift)」から届いた英文記事を、同社との提携に基づいてトラベルボイス編集部が日本語翻訳・編集したものです。