城崎温泉や京都、ECで海外客つなぎ留め 将来の訪日狙う
(日本経済新聞 2022年10月11日)
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUF055420V01C22A0000000/?unlock=1

【ホッシーのつぶやき】
10月11日、日本の水際対策が緩和された。インバウンドが戻るのは24年とも25年ともいう。
コロナ禍の中で訪日こそできないが、そこに越境ECが伸びた。世界の越境EC市場規模は19年の7800億ドルから26年には6倍以上に伸びるとの試算もある。
大切なのは越境ECを通じて日本の産品の良さを知ってもらうこと、訪日旅行で日本の自然や伝統文化を感じてもらい、さらに日本の産品を購入してもらうところにある。この連続性の中でこの好循環を回していかなければならない。

【 内 容 】

関西の観光地が海外向け電子商取引(EC)の導入に動いている。城崎温泉(兵庫県豊岡市)は9月、工芸品などを米国向けECサイトに初めて出品。京都府や京都中央信用金庫(京都市)も中国向けECサイトを開設した。11日に新型コロナウイルス対策の入国制限が緩和されたが、訪日客数の本格回復には時間がかかる可能性がある。越境ECを海外客との接点づくりに生かし、誘客につなげる狙いだ。

「736ドルの高価なカバンでも想定外に売れている」。創業160年を超える城崎温泉の老舗旅館、西村屋(兵庫県豊岡市)の池上桂一郎氏は驚きを隠せない。

9月に同社が旗振り役となり、温泉地内で工芸品を製造する事業者らが米国向けECサイトで売り始めた。米国向けに日本の特産品を販売するECサイト「WAZA」上に、専用ページ「KINOSAKI EXPERIENCE(城崎エクスペリエンス)」を開設。コリヤナギの枝をカゴやバッグに編む「豊岡杞柳(きりゅう)細工」や「豊岡鞄(かばん)」など6アイテムの価格は数百~数千ドルだが、円安も追い風に売れ行きは好調に推移しているという。

豊岡市によると、2019年の市内の外国人延べ宿泊者数は約6.4万人と5年前の4.2倍に増加。城崎温泉では海外客が需要の伸びをけん引してきただけに、新型コロナ下での客離れに対する危機感が強かった。ECは売り上げ減の埋め合わせと同時に「インバウンド回復に向けた『種まき』になる」(池上氏)。今後は和菓子店など出品事業者を増やし、23年3月まで販売を続ける。名産品を網羅した独自の越境ECサイトも開設したい考えだ。

京都では府が3月、中国向け越境ECアプリ「豌豆(ワンドウ)」を展開するインアゴーラ(東京・新宿)と連携し、同アプリ内に府の名産品を販売する「京都館」を開設した。清水焼や日本酒など府内で名産品を手がける製造事業者など、出店企業数は10月時点で26社に達した。

京都中央信用金庫も21年5月末に、中国の対話アプリ「微信(WeChat、ウィーチャット)」内に越境ECモールを開設。地元企業の出品を促しており、7月には中国人インフルエンサーを活用して祇園祭を舞台にライブコマースも配信した。食品や雑貨商品を中心に出店企業数は7月末時点で139社、販売商品数は1003点。開設からの累計売上高は1800万円超で事業としては赤字だが「コロナ後のインバウンド再開などを見据えて情報発信が大事だ」(証券国際部の山下洋平課長)。年間1億円の売上高を目指し継続していく方針だ。

新型コロナ下の移動制限もあり、越境EC市場は急速に成長している。経済産業省によると、越境ECサイトを通じて中国、米国の消費者が日本から商品を購入する市場規模は21年時点でそれぞれ2.1兆円、1.2兆円と右肩上がりだ。世界の越境EC市場規模は19年の7800億ドルから26年には6倍以上に伸びるとの試算もある。

日本政策投資銀行と日本交通公社が21年10月に12カ国・地域の人を対象に実施した調査で、次に海外旅行したい国・地域の首位は日本だった。ただ厳格な水際対策が続き、観光客数の回復が遅れている。11日に制限が大幅に緩和されても、入国者数がコロナ禍前の水準を回復するのは「24年10月と2年先となる」(野村総合研究所の木内登英エグゼクティブ・エコノミスト)との見方もある。越境ECで名産品を通じて海外に魅力を発信し、地域への関心をつなぎ留める手段としたい考えだ。