モノの値段 日本はなぜ安い?
(NHKニュースWEB 2021年11月19日)
https://www3.nhk.or.jp/news/special/sakusakukeizai/articles/20211119.html?utm_int=news_contents_special_004

【ホッシーのつぶやき】
コロナで止まっていた経済が世界各国で動き出し、原油の高騰、サプライチェーンの混乱などを背景にインフレ圧力が高まっているのに、日本の物価が上がらないのが不思議だ。
10月の消費者物価はアメリカで6.2%、ドイツは4.5%、韓国も3.2%上昇し、1990年11月以来31年ぶりの記録的な高い水準になっているのに、日本は0.1%上昇に過ぎません。
「値上げしたら買ってもらえなくなる」と心配し価格に反映していないと言いますが、今後もずっと安いままは難しいようです。

【 内 容 (一部省略)】
私たちが買うモノやサービスの値動きを示す「消費者物価指数」。10月の指数は去年の同じ月をわずかに上回りましたが、記録的な物価上昇が続くアメリカなどとは状況が大きく異なっています。世界中でいろんなモノが値上がりしているというニュースを聞くのに、なんで日本の物価は低いままなの?

家庭で消費されるモノやサービスの値動きをみる10月の「消費者物価指数」は、2020年を100として99.9と、去年の同じ月を0.1%上回りました。
上昇は、2か月連続です。

国際的な原油価格が高止まりしていることが理由で、ガソリンや灯油などの「エネルギー」の上昇幅は11.3%と2008年9月以来、13年1か月ぶりの大きさとなりました。
しかし全体の上昇幅は、わずか0.1%にとどまっています。

世界各国ではモノの値段がすごく上がっているってニュースで聞きますが、0.1%って日本ではほとんど物価が上がっていないってことですよね?

たしかに世界とはかけ離れた状況になっています。
アメリカでは10月の消費者物価が6.2%も上がり、1990年11月以来ほぼ31年ぶりの記録的な高い水準になりました。
原油価格の高騰に加えてサプライチェーン=供給網の混乱などを背景に世界的にインフレ圧力が高まっていて、ドイツは4.5%、韓国でも3.2%上がっています。
コロナで止まっていた経済が世界各国で一斉に動き出し、モノの争奪戦が起きて値段が上がっているんです。

それなのにどうして、日本の物価だけ低いままなんですか?

実は日本でも、企業どうしで取り引きされる原材料などのモノの価格は上がっています。
それを示す10月の「企業物価指数」の速報値は、去年と比べて8%も上がり、第2次オイルショックで原油が高騰していた1981年以来、40年9か月ぶりの高さになりました。

食料品も、エネルギーも、ものづくりの原材料も、世界中で争奪戦になっているわけですから、日本の企業だけ安く買えるわけはありませんよね。
しかも今は円安傾向が続いているので輸入コストも増えています。

それなのになぜ日本ではモノの値段が上がらないのか。
それは企業側が「値上げしたら買ってもらえなくなる」と心配して、商品の価格に反映していないからなんです。

企業が値上げを我慢しているということですか?

感染者が減ってきて、ようやく客足が戻り始めたこれからという時に、値上げしたらお客さんが離れてしまうかもしれない。
そんな悩みを抱えている企業や店がたくさんあるということなんですね。

専門家は次のように指摘しています。

「日本ではモノが不足しても『ちょっと待ってください、値段は上げません』というように、消費者に対して企業が値上げをすると嫌がられるという強迫観念を持っているので、原材料価格が急激に上がっても我慢しているんです」
消費者にとってはうれしいことかもしれませんが、モノの値段が上がらなければ企業の収益は増えませんよね。

値上げで企業の収益が増えなければ、企業が社員の給料を増やす“賃上げ”にもつながりません。

熊野さんは「いわば“鶏と卵”の関係で、賃上げをするには収益を上げなければいけないが、原材料価格が上がると収益が減ってしまう。ただ、最初に値上げをして売り上げを増やせば賃上げができるかというと、それもなかなか難しい。売り手と買い手がお互いに“すそを踏み合って”身動きできないのが、今の日本の消費者と企業の関係だ」と話しています。

政府と日銀が掲げる物価上昇率2%の目標達成はほど遠い状況です。
負のスパイラルから抜け出すため、日本企業の具体的な成長戦略をいかに描いていくかが問われています。