観光客急増に対して京都市が打ち出した具体策、市バスの混雑対策からAIによる予測活用まで(トラベルボイス 2019年1月6日)https://www.travelvoice.jp/20200106-144107

京都市の観光政策は、現状だけでなく、未来をも見据えられている。四条大宮の車道縮小と歩道拡幅は、車優先から歩行者優先と、都市計画の根幹を見直すものとなった。そして今、オーバーツーリズムに真正面から取り組まれている。市バスは、利用頻度の高い市民への割引と前乗り後ろ降りによる混雑緩和。観光地の混雑緩和では、混雑予報を提供して、混雑時間をずらして効果をあげた。持続可能な観光へのモデルだといえる。

【ポイント】京都市が2019年11月20日に発表した『市民生活との調和を最重要視した持続可能な観光都市』の実現に向けた基本指針は、「混雑」「宿泊施設の急増に伴う課題」「観光客のマナー違反」への対応の3つを柱で、今回打ち出した具体策は「バスの混雑」と「宿泊施設の対策」だ。

市バスの混雑対策は「各種割引乗車券の抜本的見直し」と「前乗り後降り方式の拡大」。「割引乗車券の見直し」ではICカードを活用し、乗降時間の短縮化と移動経路の分散化を図る。ポイント還元でICカード利用を促し、利用頻度の高い人に対する将来的なバスの無料乗継の実施を検討。停車時間の短縮する「前乗り後降り方式の拡大」では、観光で便利な系統での導入拡大とともに、均一運賃区間の全系統で導入を進める。これにより、全系統の7割が対象路線になる見込みだ。

「観光地の混雑対応」では、観光客の位置情報等を活用し、AIによる混雑予測を表示するもの。2018年秋に嵐山で行なった実証実験で、観光快適度を表示する専用ページを見た人の約5割が混雑時間をずらして訪問した結果を踏まえ、2019年秋には「全市版」と、ピーク時に混雑の多くなる「祇園・清水」「嵯峨・嵐山」「伏見」の「エリア版」をスタートさせた。「混雑時間を表示するのはネガティブ情報にもなりかねないが、嵐山で効果があり、商店街など地域事業者に喜んでもらえたことが大きい」 2020年度は対象エリアや時期を拡充させていく方針だ。

「マナー問題」では、8000以上の旅行会社や18か国の大使館・領事館、48の海外メディアへの周知協力の要請をした。祇園・花見小路に巡視員を配置している。私有地の立ち入りや舞妓の待ち伏せが減ったという感想が聞かれたほか、訪日ツアーのガイドがポスターの前で参加客にマナーを説明するシーンも見られたという。

「観光地の分散化」では、定番観光地以外の魅力を紹介する「とっておき京都プロジェクト」の対象エリアの山科で、通常非公開の寺院を含む「京都山科非公開文化財等の特別公開」を実施。

『観光の課題が生じているので解消する、そのためにアイディアを出そう』と言われれば、そこに向かって進むしかない。市長の強力なリーダーシップと自由に取り組める環境、それを実行できる人の力の3つが揃った結果だという。
京都市の観光消費額が市民の年間消費額の52%にまで拡大し、雇用者数も5年間で5.7万人増加。観光交流が増える一方で、ごみの排出は10年間で半減し、エネルギー消費量はピーク時の1997年から20年間で26%減少した。