なぜ京都市が?人口減少が全国最多
(NHK NEWS WEB 2022年10月18日)
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20221018/k10013862391000.html

【ホッシーのつぶやき】
京都市の人口減少が2年連続で全国最多です。外国人(留学生が多い)が3043人減少したといい、市全体の1/4を占めます。京都市の旅館やホテルは10年前より20%増え680施設だといい、開業ペースは緩やかになったものの新規開業は続いています。
京都市の宿泊施設で大きな変化は、4つ星や5つ星のホテルが増えている点は、将来の布石だと考えられますが、訪日外国人が増え始めた頃「京都市がゲストハウスや民泊を支援した」のが原因だと、NPO副理事長の清水さんが仰っていたのを思い出します。清水さんが観光政策監の頃「京都市に安物の宿泊施設はいらない」として、ゲストハウスに反対されていました。今の現状を見ると、清水さんの見識を感じます。
それにしても、人口減少の中で、京都市、全国の自治体の運営はさらに厳しくなります。

【 内 容 】
神社仏閣をはじめ、数多くの歴史的な建物のある京都市。言わずと知れた国内有数の観光地で、世界的にもその名が知られています。しかし今、京都市はある厳しい現実に直面しています。人口が大幅に減少していて、その数は全国の市区町村で最多だというのです。いったい京都市で、何が起きているのでしょうか?(京都放送局記者 海老塚恵 山崎麻未)

人口減少が全国で最多に
「危機感を持って受け止めている」
こう話すのは、京都市の担当者です。
京都市の人口は、ことし1月1日現在の住民基本台帳をもとに総務省がまとめたところ、138万8807人。前の年の同じ時期より、1万1913人減りました。

減少数は、全国の市区町村で最多。京都市が、減少数で全国最多になるのは、2年連続です。

京都市と言えば、全国有数の観光地。その名は、世界的にも知られています。

高いブランド力があり、国内外でも人気のまちで、なぜ人口が大幅に減少したのでしょうか?

“学生のまち”京都 新型コロナが直撃
要因の1つが、「外国人の減少」です。その減少数は3043人と、市全体の減少数のおよそ4分の1を占めています。
その多くは「留学生」と見られています。大学などが多く集まる京都市は、「学生のまち」とも呼ばれ、昨年度、学生(大学院生など含む)が人口のおよそ10%を占めました。(京都市調べ)
市では、新型コロナの影響で、入国する留学生が減ったことが、外国人が大幅に減少した背景にあると見ています。

深刻 若い世代の流出
これとは別に、最も深刻に受け止められている要因の1つが、若者や、いわゆる「子育て世代」の流出です。
転出や転入の動きをみてみると、去年1年間は、とりわけ20代後半から30代で、転出した人が転入した人を上回る「転出超過」となっています。

こうした傾向は、去年にかぎらず続いているのが現状です。

ホテル建設ラッシュの影響も
なぜ若い世代が流出しているのか。理由の1つとして挙げられているのが、京都市内の住宅事情です。
京都市では、新型コロナの感染拡大前から、外国人を含めた観光客向けの旅館やホテルの建設が相次いできました。

コロナ禍で外国人観光客が激減し、ホテルなどの開業のペースは緩やかになったものの、新規開業の動きは続いていて、市が、旅館業法に基づいて設置を許可している旅館やホテルの総施設数は、昨年度は10年前より20%余り増えて680施設に上っています。
ここにきてホテルの進出ペースがいくぶん落ち着き、マンション建設は活発化していますが、利便性が高く人気の中心部は、マンション価格が高騰しているのが現状です。

市内の中心部・下京区で売り出し中の地上10階建ての分譲マンションを取材しました。

マンションのモデルルーム

地下鉄の駅まで徒歩10分程度。二条城にも近いことを売りにしています。価格は、1部屋およそ6000万円からで、1億円を超える部屋もあります。
販売している大手住宅メーカーによりますと、モデルルームに訪れる人の3割から4割が、府外からセカンドハウスとして購入を検討している人だと言います。
大手住宅メーカー 岩本さん
「京都の中心部はセカンドハウスとして購入する人が多いと感じている。旅行に来るときのホテル代わりに買うという人もいる。定住のために購入する人も、50代以上の2戸目を検討する人が多く、若い世代の方の購入は少ない印象がある」
専門家の間では、こうした住宅事情だけでなく、大学卒業後の勤務先のほか、交通アクセスや医療・福祉サービスなどさまざまな理由で、若者や子育て世代を中心に転出しているのではないかという見方も出ています。

京都市の対策は?
こうした状況を改善しようと、京都市は対策に乗り出そうとしています。
その1つが、高さ規制の緩和の検討です。
京都市は、国の制度や市の条例のもとで、嵐山や四条通をはじめ市街地の広い区域で、建物の高さを10メートルや31メートルなどに制限しています。

今回、京都駅の南側や郊外の一部の地域で、条件つきで高さの上限などを引き上げることを検討しています。マンションだけでなく、オフィスビルの開発も促して企業誘致も進め、若者の定住を促したい考えです。
市内には、多くの歴史的な建造物があり、景観を守るべきだという声も根強くあります。市は、9月に見直し案を公表。市民から意見を募ったうえで、計画を策定する考えです。
さらに市は、利用されていない空き家や別荘の活用を促そうと、空き家などの所有者に対する、新たな課税も検討しています。空き家の流通を促すことで、住宅の供給を増やそうというねらいもあります。
ことし3月に条例案が可決。今後、国と具体的な制度設計を進めることにしています。

厳しい京都市の財政
しかし現在、京都市の財政運営は、予算編成の中で本来は負債の返済に使う基金を活用するなど、厳しい状況が続いています。
こうした状況は、市民生活にも影響を与えていて、今年度から小学生が放課後に通う学童クラブの利用料が一部の所得の世帯で引き上げられたほか、市営の動物園の入園料も値上げされました。
一方、保育園の保育料は、来年度まで据え置く方針が示されていますが、その後の値上げについては検討が続く見通しです。
人口減少について、京都市は「若い世代を中心に、暮らして働けるまちとして選んでもらえるよう、取り組みを進めていきたい」としています。
ただ、「暮らしやすいまち」を作り、住民の流入を促していくことは、一筋縄ではいかないのが現状です。

今後のまちづくりどうする?
京都のまちづくりはどうあるべきか、2人の専門家にうかがいました。

大阪成蹊大学 経営学部 池田千恵子准教授
「対策として住宅問題の解消が必要だ。かつて外国人観光客の増加で観光需要が急に高まった時に、宿泊施設が住宅の集まる地域にも建てられるケースも生じた。京都市は建設を後押しする施策をとったが、市は居住者に対する視点が十分ではなかったのではないか。宿泊施設は飽和状態で、古い宿泊施設を住居に転用することも検討し、後押しする施策が必要だ」

京都大学 人と社会の未来研究院 広井良典教授
「人口減少は当面は避けられないが、徐々に出生率の改善が図られるよう施策を充実させ人口を定常化させていく形が望ましい。若い世代では、雇用や生活が不安定で、結婚して子どもを育てる展望を持ちにくいことが要因の1つだと思う。流出を防ぐため、京都に多い大学生の卒業後の就職や起業への支援、それに子育て世代への支援などに関する施策を包括的に進めていくことが大切だ」
10月11日、新型コロナの水際対策の緩和で、入国者数の上限が撤廃されました。京都にも徐々に海外の人が増え、まちの景色が再び変わる可能性があります。

伝統ある京都のまちをどうしていくのか、市民を巻き込んだ議論が求められていると思います。