どん底の「観光業」が復活するための3つのカギ 〜来日できない外国人向けの宣伝も強化が必要
(東京経済オンライン 2020年8月24日)
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観光業界も、新型コロナ感染で海外渡航ができない状況のなかでは「プロモーションをするべきではない」との意見も聞かれる。
しかし、海外の旅行会社は、情報が不足しており、従来の情報より充実した情報が欲しいという。コロナ終焉後に旅行したいと考える人は多数を占め、旅行先に日本が真っ先に挙げられている。
JNTO香港事務所長の薬丸 裕氏も「プロモーションをやめるべきではない」と強く主張されていた。
個々の観光事業者ではなく、DMOなど、地域が一丸となったプロモーションは必要だ。

【ポイント】
新型コロナで最もダメージを受けたのは観光業だろう。
しかし、有効なワクチンや治療薬の開発により、人・モノの移動が徐々に回復することは間違いない。
三菱総合研究所によると、コロナ終息後に一番したいことは「旅行」であった。

マッキンゼー・アンド・カンパニーは、2008年の世界金融危機を乗り越えて成長を遂げた企業では、負債や売上原価を中心とした徹底的なコスト削減に取り組んできた。そして、プロモーション費用などのコストをあまり削減しなかったという。
日本企業の場合、プロモーションは無駄遣いと思いがちで、景気が落ち込むと真っ先にカットする。その結果、最も重要な「売ること」への布石がなくなり、経済が回復した後の販売拡大に困る。
観光業界も「危機に遭って、すぐに発信をストップする自治体と日本企業があるが、もったいない。今こそ情報発信(プロモーション)をすべきだ」と言う。

海外旅行に行けないため、オンラインで観光地を楽しむ「オンライン旅行」がしばらく続くことになりそうだが、この時期にこそ、印象付けしておくことが重要だ。日本の風景、料理、百貨店の展示などの観光資源は「映え」がよいため、オンライン発信に向いている。
日本にいる外国人の協力をもらいながら、今までできなかった地元視点の発信、日常生活のアピール、インタラクティブな交流を通じて、観光客のニーズを把握することも必要である。
こうした「売る」下準備をしておくと、共感づくりやファンの育成もでき、コロナ後にインバウンドが再開した際に、外国人消費者のリベンジ消費にもつながる。

帝国データバンクによると、2020年1月時点で中国に進出している日本企業数(全産業)は2019年よりも減少する一方、サービス業は前年より8.5%増加している。
それは、中国で「お金を使うことで現地でも日本旅行の感覚を味わう」ことが求められるようになり、身近な日本を感じたいニーズが高まっていることが一因にある。

日本酒銘柄「真澄」を有する長野県の宮坂醸造は、深圳で社内ベンチャーに近い形で真澄国際酒業(Cella Masumi Shenzhen Limited)を設立した。
真澄国際酒業では、あまり知られていない日本酒の銘柄を輸入し、現地での展開に注力している。単に日本酒を売るだけでなく「日本食のシーン」を提供することも重視している。
日本料理店とのコラボし、季節、料理、会食の目的に合わせ、適切な日本酒を提案して、「食文化」「酒文化」「日本文化」を体験してもらい、日本酒の認知度向上、売上につながることを目指している。
レストランやバーのオンライン飲み会もじわじわと増えている。現地法人または協力会社の力を借り、名産品などを事前に送ってもらって、オンライン飲み会の際に、名産品といった「モノ」を通し、自社製品や観光魅力を説明することで、外国人に「コト」の体験を提供することも可能だ。

SNSでは、日本政府の新型コロナ対応に疑問を示す投稿が少なくない。日本国民はマスク着用率や清潔への意識が高いが、無症状者がいるという不安はぬぐえない。
中国には「健康QRコード」があり、中国の経済活動再開に大きく貢献している。自分の健康状況を毎日記入すると、位置情報による感染者接触状況が分析される。緑のQRコードの場合は、感染リスクが低いと判定される。公共交通機関、レストラン、出社する際には、このコードの提示が必須で、感染予防上安心できる人々だけが移動し、活動できるような仕組みになっている。
韓国でも似たような取り組みが行われ、スマホ上に感染者が行った場所の情報が届けられている。アメリカでも、MITの研究チームがブルートゥース経由の追跡システムを研究しているようだ。
日本にも「COCOA(ココア)」アプリがあるが、残念ながら利用人数が少ない。

有効なワクチンが出るまでは、経済の停滞防止と罹患していない大勢の人々を守るツールとして、安心して経済活動を行えるように再検討する必要もあるだろう。
中国の場合、感染が収束したわけではないが、健康QRコードが全国で普及したこともあり、観光業界も徐々に回復しつつある。新華ネットによると、中国のGW(5月1~4日)期間中、中国国内の旅行者数は1億人を超え、432.3億元(6614億円)の観光収入があったようだ。この数字は、2019年の半分以下だが、観光業界が徐々に回復していることがわかる。