ホテル稼働率7割に迫る 10月、コロナ後最高を更新
(日本経済新聞 2022年11月29日)
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUB24AFB0U2A121C2000000/

【ホッシーのつぶやき】
10月の国内ホテルの平均稼働率は70%、5カ月連続で60%を超えている。
「政府が全国旅行支援したことで、『旅行に行ってもいい』という空気が鼓舞され、宿泊需要を喚起した」という。しかしインバウンド需要はまだ1割程度で、「中長期でみると、中国人旅行者不在では旅行需要回復・成長は鈍化する可能性もありそうだ。
中国で「ゼロコロナ政策」に対する批判が高まっているが、「ゼロコロナ政策」解除を期待したい。

【 内 容 】

全国旅行支援の開始と水際対策の大幅緩和から1カ月を迎えた東京・浅草。多くの人でにぎわうが「第8波」の懸念も(11日)=共同

ホテル需要が着実に回復している。ホテル専門の米調査会社STRがまとめた10月の国内ホテルの平均稼働率は、前月比5.2ポイント高の69.9%だった。新型コロナウイルス禍が本格化してきた2020年2月以降の最高を更新した。経済再開(リオープン)に加え、政府の旅行支援策の追い風が吹く。訪日外国人(インバウンド)は入国緩和で2倍以上に増えた。

5カ月連続で60%を超えた。11月は20年1月(73.1%)以来の70%台になる可能性がある。コロナ禍前の80%超には及ばないものの、40~50%台で推移していた22年前半より確実に水準が上がっている。

10月の日次の最高稼働率を記録したのは8日で85.4%だった。夏季繁忙期や9月の大型連休「シルバーウイーク」を上回った。政府の観光支援策「全国旅行支援」が始まる11日より前に最高稼働率となった。STRの桜井詩織マネジャーは「政府が旅行を支援する姿勢を示したことで、『旅行に行ってもいい』という空気が鼓舞され、宿泊需要を喚起した」とみる。

観光などを目的とした旅行のほか、ビジネスの出張なども復調傾向にある。リオープン後は全体として地方のホテルの回復が先行しているが、10月は出張の多い都心部の回復も目立ったという。

インバウンドの増加も追い風だ。政府は10月から新型コロナの水際対策を緩和。1日5万人だった入国者数の上限を撤廃し、海外からの個人旅行も解禁した。日本政府観光局によると、10月の訪日客数は前月比2.4倍の49万8600人だった。

平均客室単価(ADR)も上昇している。10月は前月に比べ1218円高い1万3942円で、コロナ禍に入ってからでは8月に次ぐ高水準だ。コロナ禍前の19年10月と比べ単価の回復率は9割強になった。クラブラウンジ付きの客室を増やすなど、付加価値を高める動きも追い風だ。

需要回復に加え、物価高を背景としたホテルの運営コスト増加による料金値上げもあって「11月に客室単価がコロナ前水準に回復することもありうる」(桜井マネジャー)。欧米の単価は昨年夏ごろにコロナ前に戻っていたのに比べると日本の単価上昇は鈍かったが、ここにきて復調してきた。

今後のホテルの稼働率は、インバウンドの復調が左右しそうだ。観光庁がまとめた宿泊旅行統計調査では、9月の延べ宿泊者数はコロナ前の19年同月に比べ日本人が9割超まで戻った。一方、外国人の戻りは1割ほど。10月の入国上限撤廃などを受けて増加基調にあるが、主要な観光客の中国人は新型コロナを封じ込めるゼロコロナ政策の影響で訪日旅行は低迷している。

STRの桜井マネジャーは「リベンジ需要が落ち着く中長期でみると、中国人旅行者不在の中では国内総旅行需要の回復・成長は現在より鈍化するだろう」と話す。