在阪百貨店のインバウンドバブルに陰り、生き残りに必要なものは何か
(ダイヤモンドオンライン 2020年2月19日)
https://diamond.jp/articles/-/229164

2019年10月~12月の全国百貨店の売上高は、3カ月連続マイナスとなった。今年は新型肺炎の影響で相当に厳しい状況になるのではないかと思われる。
先日、「商連街の空き店舗活用セミナー」に参加した。空き店舗は大阪市の商店街の1割に達しており、その活用を巡って、コミュニティスペースや地域のイベントへの活用が始まっている。
興味を引いたのが粉浜商店街。空き店舗物件を1週間単位で貸し出す「店舗シェアリング」の話だ。商店街を活性化するポイントは魅力ある商品、個店を揃えることだといい、この取り組みが商店街の魅力づくりに一役買っているという。家主も賃料も賄える。
百貨店も従来の販売形態を変えて行かなければならないのだろう。

【ポイント】
日本百貨店協会が発表した「令和元年12月全国百貨店売上高概況」によれば、2019年10月~2019年12月の3カ月間の全国百貨店の売上高は、消費増税前の駆け込み需要の反動減により、全ての地域で足並みをそろえて3カ月連続マイナスとなった。

大阪の百貨店は2019年2月~9月の8カ月連続プラスと、他の地域が振るわないなか、堅調に推移していた。売り上げを後押ししていたのはインバウンド消費。

2018年度の来阪外国人旅行者数は約1141万人。2018年度の訪日外客数は約3119万人だから、全体の3割以上が大阪を訪れた計算になる。
高島屋大阪店が2018年2月期売上高で同日本橋店を抑え66年ぶりに1位に返り咲くなど、2018年は大阪の百貨店の好調ぶりを象徴する年だった。
ところが、2019年夏から、インバウンドを取り巻く状況は変調をきたしている。

1人あたりの消費額が低いとはいえ、日韓関係の冷え込みにより韓国人観光客の数が約3分の1に落ち込んだ影響は大きい。来阪人数でもっとも多い中国人観光客は、転売目的の購入品に対する税関の規制が厳しくなったことで爆買いが下火になった。

高度経済成長期の百貨店といえば、屋上に遊園地があり、美術館があり、地下にはごちそうが並ぶ、ある種アミューズメントパークのような存在だった。しかし現在は、百貨店に行かなくとも専門的な文化娯楽施設は充実している。
80~90年代のバブル期は、多店舗展開を進め、テナントを入れることに忙しく、「良いものを厳選して売る」という百貨店本来の機能は失われていった。

バブル崩壊後、各百貨店は多店舗展開から方針転換し、インバウンドにシフトした店もあれば、百貨店の原点である“目利き”に立ち返り、商品の発掘・開発に力を入れている例もあります。

「三越本店は高知の四万十川地域の道の駅が開発した栗のお菓子を期間限定の催事で売ったら爆発的に売れたそうです」「伊勢丹は地方の農家とタッグを組んで安全・安心な農産物の加工品を開発し、お歳暮やお中元として売り出しています」 収益性は高くないかもしれないが、“ココに行けば買える”という特別感は、集客に一役買っています。

地方都市では、イオンなどの大型店が地元商店街の大敵として捉えられていますが、百貨店が街の再開発に溶けこむケースもあります。香川県の『高松丸亀町商店街』は、業界人の視察が絶えない注目スポット。商店街の角に高松三越があり、路面にはブランドショップが立ち、ミラノのような雰囲気を醸し出しています。

この商店街は、商店街の上層階がマンションになっており、高齢者を中心に分譲しているということ。2階には病院やリハビリ施設が並び、すべてデッキでつながっている。エレベーターで1階に降りれば薬局やコンビニもあるので、日用品の買い物にも事欠かない。衣食住近接というスタイルは、遠出が難しい高齢者にぴったりです。

百貨店の中のことだけを考えるのではなくて、周辺にどういう人が住んで、どういう人が働いているのか。また、その人たちを引っ張る導線の視点こそ、百貨店が生き残るために必要なのではないでしょうか。

昨秋リニューアルオープンした大丸心斎橋店は、ファッションよりもライフスタイル重視の売り場に様変わりし、アニメショップ、フードホール、百貨店では異例のコンビニなどが軒を連ねています。
高島屋大阪店は1月18日、東別館をリノベーションし、滞在型ホテル「シタディーンなんば大阪」をオープンさせた。在阪百貨店の試行錯誤に注目したい。