銭湯が作法を指南 初心者や外国人向けに(朝日新聞デジタル 2019年11月27日)https://digital.asahi.com/articles/CMTW1911252700004.html

「銭湯」は、外国人向け旅行ガイドブックに「Sento」載っているが、湯船につかる前に「かけ湯」をしなかったり、旅先での解放感からか仲間同士で騒いでしまったりする人もいるという。浴場組合は、ホームページやポスターで啓発を行っている。京都の「玉の湯」では、常連客に向けて呼びかけの貼り紙をした。銭湯が初めての人や若者にマナー違反があっても、優しく注意して…「悪意はありません。経験が少ないだけです」とも書き添えたという。このように穏やかな変化であってほしい…

【ポイント】銭湯には常連さんと一見さんがいて、海外からのお客さんもいる。
京都市役所のそばで明治27(1894)年から続く「玉の湯」。西出英男さん(46)と晴美さん(43)夫婦が切り盛りして10年ほど。客層は目に見えて変わり、観光客らしい若い人や外国人が増えてきた。
銭湯が初めてで入り方がわからず、湯船につかる前に「かけ湯」をしなかったり、旅先での解放感からか仲間同士で騒いでしまったりする人もいる。くつろぎの時間と場所を大事にしたい常連さんから厳しい言葉で注意され、帰ってしまった客もいる。

外国人向け旅行ガイドブックに「Sento」載り、京都府浴場組合はホームページで銭湯の入り方を中国語と英語でも紹介している。東京都浴場組合なども、英語、中国語、韓国語の公式サイトをつくっている。

高瀬川沿いにネオンサインが光る「サウナの梅湯」では約600人にアンケートをし、「入浴前にせっけんなどで体を洗う」という自主ルールを決めた。
番頭の湊三次郎さん(29)は「トラブルが起きるのはルールを明記しない店にも責任がある」と話す。「地域や銭湯ごとでルールは違うし、こちらの常識があちらの常識じゃないこともある」。浴場の目につくところには、銭湯の入り方を日本語や英語、中国語で書いた貼り紙がある。

錦市場にほど近い「錦湯」では、時間帯によっては外国人ばかりのときがある。特にアジアからの観光客が増えた。でも、外国語での注意書きはどこにもない。「うちではトラブル、そんなにないから」と店主の長谷川泰雄さん(72)はあっけらかんとしている。
戸惑っている外国の人がいれば、長谷川さんから声をかけたり、ほかの客が教えてあげたりもする。タイから初来日し、初の銭湯の方は、最初は服を脱ぐのが恥ずかしかったものの、長谷川さんに教えてもらい、ほかの客の見よう見まねで入った。「銭湯の中はみんな知らない人だけど、優しい」と笑顔になった。長谷川さんはどこまでもおおらかだ。「『銭湯すたれば人情もすたる』っていうでしょう。きちんとあいさつさえしてくれれば、ルールなんて特になし。地元の人としゃべって、思い出をつくってほしい」

「玉の湯」は、「今年の5月に常連客に向けて、呼びかけの貼り紙をしていたことがあった」と言う。銭湯が初めての人や若者にマナー違反があっても、優しく注意して、という内容だった。「悪意はありません。経験が少ないだけです」とも書き添えた。すると常連さんがひと呼吸置き、気持ちを落ち着けてから注意するようになった。番台からも「ルール、分かりますか?」と話しかけることで「トラブルは本当に減った」という。だから今は貼り紙ははがされている。