文化庁京都移転 どう変わる
(日本経済新聞文化欄  2023年3月20日、21日、22日)
上:https://www.nikkei.com/article/DGKKZO69355650X10C23A3BC8000/
中:https://www.nikkei.com/article/DGKKZO69425710Q3A320C2BC8000/
下:https://www.nikkei.com/article/DGKKZO69424310Q3A320C2BC8000/

【ホッシーのつぶやき】
先日の『文化庁が『文化観光』に舵を切った!』とした私の講演にいたく感心し、友人がこの記事を送ってくれた。記事では、二条城の本格修理予算100億円のうち、国から50億円補助、残りは自力で賄わないといけない。入場料や施設利用料の収入増が欠かせないとある。
これまで文化資源は国民の財産として利用料も安価に設定していたが、それでは補修すらできない。『保護優先』から『保存+活用』に舵を切ることは大切だ!

【 抜粋・要約 】
文化庁が3月27日に京都に移転する。東京一局集中の是正に関心が集まるが、文化行政はどう変わるのか。力点を置くのが持続可能な文化財の保存と活用による「稼ぐ文化」の推進だ。

文化庁9課のうち5課を京都に移転し390人体制とする。主導的な役割を期待されるのが18人で発足した「文化資源活用課」だ。

奈良少年刑務所は、2025年に星野リゾートが48室の高級ホテル化する。
文化資源活用課は“文化財保護”の視点で助言や指導をする。

京都市の二条城、19年の来場者数は205万人と10年前より52万人多い。
11年度から20年計画で本格修理を開始し、予算100億円、国からの補助が50億円。残りは自力で稼いで賄わないといけない。入場料や施設利用料などの収入増が欠かせない。

文化庁は移転を機に文化財を観光や街づくりに活かし、経済波及効果を狙う取り組みを加速する。
音楽・映画・ゲームなどの文化産業を振興し、文化部門の国内総生産を、19年の10.2兆円を25年までに25兆円にする目標を掲げている。
同志社大学の河島伸子教授は「地域の魅力を熟知し、付加価値を付けてプレゼンできる民間団体や個人との連携が必要」と指摘している。
京都府庁の耐震工事を行い、カフェを誘致する。
関西には、国宝の55%と重要文化財の44%がある。

文化庁の政策の柱の一つが「文化財の匠プロジェクト」。2026年度までに技術者が抱える問題解決に集中的に取り組む。原材料の確保は待ったなし。文化財修理の技術継承。国宝や重文を修理する技術者集団「国宝修理装潢師連盟」には130人の技術者がいるが、ここ10年ほどほぼ横ばいで、6割が経験年数10年以下で、養成には不十分。「文化財は時代を経るごとに修復を繰り返すものが大半。正倉院の宝物も修理を重ねたからこそ残っている」、文化庁は京都府内に「文化財修理センター」を設置する予定。「センターはナショナルセンターとすべき。技術アーカイブを蓄積し、評価の高い日本の修理技術を世界に発信してほしい」
文化財の保存には、建造物の場合30年周期の修理と150年周期の根本的修理が必要だが、実際は維持が40年周期、根本的が200年周期と遅れている。
美術工芸品は50〜100年周期が不可欠だが、10〜20年遅れている。修理予算が少ない。
23年度の文化予算は1077億円で、20年近くほぼ同水準と、米英の半分以下で、フランスの1/4以下。ドイツは連邦だけでなく州や市町村の予算を合わせて1.5兆円。文化財の保存・修理には教会税を当てる仕組みもあるという。

文化庁の都倉俊一長官は、日本の文化行政が京都に移る意義を、「日本が文化芸術立国だと世界に宣言できる」といい、明治以来150年ぶりの大改革だという。
高品質のメード・イン・ジャパン、日本人によって制作されたメード・バイ・ジャパニーズだけでなく、これからは日本発で物事を生み出す発想の「メード・フロム・ジャパン」が欠かせない。
京都は大学が集積し若者も多い。交流で生まれる日本初の取り組みを後押ししたいという。

文化を基幹産業として成長させるロードマップを作る。
アニメなどは輸出されているが、世界的規模の産業に育っていない。音楽産業もグローバル化が遅れている。韓国は200年代初頭から文化国家を掲げ、国家戦略としてエンターテイメントを産業化した。韓国の背中はもう見えない。民間としっかり連携し産業化を急ぐ。将来的に国内総生産(GDP)の2割は文化関連産業で稼ぎたい。
海外へのアピールが不十分だ。日本文化の魅力を世界に紹介するプロモーターが欠かせない。日本貿易振興機構(JETRO)や日本観光振興局(JNTO)の海外事務所を活用する。在外公館に民間から招いた文化専門担当を配置するのも一案だ。
ナイトタイムエコノミーの活性化も考える。好例がニューヨークのブロードウェイだ。4キロ四方に40の劇場があり、世界中から多くの人が訪れる。レストランは深夜営業が当たり前で、地下鉄は24時間動いている。日本にも劇場が集積する場所が欲しい。劇場の中にはメタバース(仮想空間)を演出するものがあってもよい。

文化の地方自治を推進する。京都には茶の湯、生け花、京料理、祭りなどの優れた生活文化が根をおろし、時の流れもゆっくりしているように感じる。
地方再発見を支援したい。例えば金沢市には国立工芸館が東京から移った。優れた伝統工芸品があり、工芸の街を打ち出せる。米国では、ブロードウェイはミュージカル、ナッシュビルはカントリーミュージック、ニューオリンズならジャズ、ハリウッドは映画と地域に明確な特色がある。
埋もれた文化を物語に仕立てる「日本遺産」の概念を広げ、地方文化をさらに掘り起こす。地域に根差し頑張っている劇団などを顕彰する仕組みも作る。京都から地方創生の大きなうねりを起こしたい。