低迷ゴルフ市場、欧米豪の富裕層に照準 インバウンド開拓で再生へ(産経新聞 2019年10月2日)

https://www.sankei.com/west/news/190930/wst1909300024-n1.html

2018年のゴルフ場は、米国1万4640軒、カナダ2265軒、日本2227軒と世界第3位。しかし国内のゴルフ人口は、平成6年の1370万人をピークに、昨年は670万人となった。世界における日本のゴルフ場の認知度は極めて低い。また、コースや併設施設、スタッフ、公式ウェブサイトが外国語対応できておらず、多くは会員制で、ビジターが予約出来ないケースもある。異色なのはむしろ日本。世界標準に合わせて意識改革しなければならないという。

【ポイント】ゴルフ人口が大幅に減少してゴルフ場経営の苦境が続く中、インバウンド(訪日外国人客)を開拓する「訪日ゴルフツーリズム」の取り組みが広がってきた。三重県は昨年秋に国際的なゴルフ旅行商談会を初開催し、今月、外国人ゴルファーを招いたモニターツアーを実施。北海道も9年前からインバウンド誘致に取り組んでいる。ゴルフは2020年東京五輪で正式種目になるほか、今年8月の全英女子オープンで渋野日向子選手が優勝するなど注目も高まっている。

三重県は昨年4月に一般社団法人みえゴルフツーリズム推進機構(MGTO)を発足。県内約80のゴルフ場に訪日客誘致の輪を広げようと、英語による情報発信、訪日客受け入れ環境の検証・整備などに取り組んでいる。昨年10月、海外24カ国・地域から52の旅行会社などを集めた商談会「日本ゴルフツーリズムコンベンション」を初開催した。
今年9月「最先端観光コンテンツ インキュベーター事業」として、外国人を招いたモニターツアーを津カントリー倶楽部などで開催した。このツアーには、日本のゴルフ情報を英語サイトで発信している東京在住のアイルランド人男性、キエロン・カシエルさんも参加。「日本のゴルフ文化は、昼食を一緒に食べて午後のラウンドを回ったり、プレー後に風呂に入ったりとユニーク。おもてなし、行き届いた施設も魅力です」と語った。

三重県でインバウンド誘致を牽引する日本ゴルフツーリズム推進協会の小島伸浩副会長(津カントリー倶楽部副社長)は、誘致のターゲットをゴルフ文化の伝統があるヨーロッパ、アメリカ、オーストラリアの富裕層だと明かす。
訪日ゴルファー人口は、台湾、韓国、中国が多いが、ゴルフのトレンドやゴルフ文化はやはり欧米豪から生まれる。それらの国から目の肥えた富裕層のゴルファーを連れてきて、発信してもらうことで、ブランド価値を高めるマーケティングをしていく。そのため、高級料理や上質な地域観光などと組み合わせたツアーを提案している。
リゾート型ゴルフ場が多い北海道も訪日ゴルファー誘致に意欲的だ。平成22年4月、ゴルフ場や用品販売会社が「北海道ゴルフ観光協会」を発足。同協会は世界のゴルフ旅行関連企業が名を連ねる「国際ゴルフツアーオペレーター協会(IAGTO)」に加盟し、スペインでの国際ゴルフ旅行博に出展するなど地道な活動を続けている。
北海道内ゴルフ場の外国人利用者数は22年当時の1万人弱から、昨年は4万人強まで増えた。

「スポーツツーリズム」は観光庁やスポーツ庁が力を入れてきた。競技やレジャーに自ら参加するだけでなく、観戦したり、開催地周辺を観光したりと、幅広い客層や長期滞在を見込めるからだ。
特にゴルフは、来年の東京五輪や、2021年に大阪で開かれる「ワールドマスターズゲームス」の競技種目にもなり、海外ゴルファーを集める好機と期待されている。

国内のゴルフ市場は、若者の減少やゴルフ離れ、既存ゴルファーの高齢化などから20年以上にわたって縮小し続けてきた。ゴルフ人口は平成6年の1370万人をピークに、昨年は670万人となった。

英国の調査レポート「Golf Around the World2019」によると、昨年時点のゴルフ場最多国は米国で1万4640軒、カナダの2265軒に次ぎ、日本は2227軒と世界第3位の“ゴルフ大国”だ。ただ、世界における日本のゴルフ場の認知度は極めて低い。業界関係者は「外国人は日本でゴルフができるとさえ思っていない」と口をそろえる。

日本のゴルフ場の多くが訪日客を迎える環境にないといえる。課題は多言言語対応だ。コースや併設施設、スタッフ、公式ウェブサイトが英語に対応している例はほとんどない。海外から「気軽に予約できない」という。
日本のゴルフ場の多くは会員制クラブで、ビジターが予約出来ないケースもある。タイなど東南アジアのゴルフ新興国は、ほとんどのゴルフ場を誰でも利用できる。タイなどはプロモーションやインバウンドへの柔軟な対応などが進み、日本とは比較の対象にもならないと危機感を募らせる。

ハワイやグアム、タイなど海外のゴルフ場は服装の制限も緩く、車の送迎もあるからアルコールも楽しめる。日本では休憩を挟まず18ホールを回るスループレーができるゴルフ場が少なく、効率が悪いと指摘する。

訪日ゴルファーは国内ゴルファーとルールやマナーの意識が異なり、トラブルになるケースもある。多くの国内ゴルフ場がインバウンド対応に及び腰なのは、ゴルフクラブの会員を守るという意図もあるようだ。縮小が続く国内ゴルファーに依存した“一本足打法”では立ちゆかないゴルフ場も出るだろう。
マナーやゴルフ文化の相違について、受け入れ体制というより、受け入れ方の意識の問題。相手がどういうゴルファーか理解して、その人に合ったプランを提供すれば、マナーの問題はほとんどなくなる。プレー習慣が異色なのはむしろ日本。世界標準に合わせて意識改革しなければならないと呼びかけている。