時代遅れ?日本の「遊学インバウンド」にも商機
(東洋経済オンライン 2019/03/27)
https://toyokeizai.net/articles/-/272255

中国人にとって一番の宝物は「子ども」だ。子供の教育に多額の費用をかける。
富裕層の大学留学も当然という。約10年前から高校生向けの遊学が流行るようになり、近年、小学生・中学生向けの遊学ツアーも人気だという。
日本におけるファミリーでの遊学ツアーも3~4年前から人気している。しかし、日本は受け入れてくれないといい、春休みや夏休みを活用した遊学も良いという。

【ポイント】
中国人にとって一番の宝物は「子ども」だ。公共交通では他人の子どもに席を譲ることもよくあり、逆にそれをしない日本人を「冷たい」と感じるほどである。

子どもの教育については「不能让孩子输在起跑线上」と親たちがよく口にする。こ「(自分が貧乏/ケチのせいで)子どもをスタートラインで負けさせるわけにはいかない」という意味だ。
バイリンガルのインターナショナル幼稚園は当たり前になり、学習塾にも通わせて、月に20~30万円は教育費としてかかるのが普通だ。

よい学校に入学できるように、その学校の学区にあるマンション(学区房)を買うのは当然であり、築50年で50平米のマンションの購入費が億単位になっても大人気。
以前は大学院からの留学だったが、今は大学ないし高校から欧米留学が当然という。

「将来留学→移住するから、子どものうちになじんだほうが楽」「ネイティブレベルの英語をしゃべってほしいから、インターナショナルスクールはもちろんだが、小さい頃からできるだけ欧米に滞在したほうがいい」といった気持ちが非常に強い。

約10年前から、高校生向けの欧米への「大学遊学」が流行るようになった。
遊学というのは、夏休みを利用して有名学校・大学を見学、雰囲気を感じるツアーである。

近年、小学生・中学生向けの遊学ツアーも人気になっており、それを斡旋する仲介機関も増えている。欧米の中学校でサマーキャンプをし、ファミリーでホームステイをし、観光を交えながら、英語の授業を受講し、最後にグループワークで発表して帰国というのが標準コースで、2週間でかかる費用は航空券込みで少なくとも50万円(約3万元)である。
人気の学校などを訪れる場合、100万円以上かかるという。

日本への遊学ツアー、親子で来日するファミリーの遊学ツアーも3~4年前からじわじわと人気になっている。日本にはサマースクールはないが、中国からも近いので3、4日間でも十分である。先進国で、時差もほとんどない。子どもに配慮する設備も多く、買い物や観光も楽しむ事ができるので、「欧米だけに目を向けていたけれど、日本もいいな」と思うようになったという。

京都、奈良などで古刹巡りをすることで、欧米の知識だけではなく、中国人(アジア人)としてアジア文化も身につけるべき教養のひとつだと思うようになったので、日本への関心が高まるようになった。日本では、歴史的な建築・漢字・茶道・華道など伝統文化が保存されており、日本観光にもチャンスがありそうだ。
インターナショナルスクールに通う息子と一緒に日本各地でお寺、神社を見学し、歴史的なアジア文化と接触した成果を、撮影した写真とともに英語を使って学校で発表したという。

最近の日本観光ブームもあり、日本における教育・ライフスタイルも中国で知られるようになってきた。「マナーがいい子どもの教育」「すごすぎる小学校の給食システム」「日本の部活文化」や、「他人に迷惑をかけない」「チームワーク」「食べるマナーの育成」「成績だけでなく思いやり」「スポーツは重要」といった日本教育のよさが少しずつ浸透している。

富裕層ファミリー向けに世界中の遊学ツアーを提供する会社の代表の話だと、「日本で遊学したいというニーズが増えているが、日本は全然受けてくれない。いくら交渉しても、学校も自分だけでは決められないというし、OKだった学校も中国だとわかると断る」と嘆く。

春休みや夏休み期間中に、日本の学生と一緒にワークショップをしたり、日本のマナー・伝統文化について授業をしてもらったり、簡単な日本語を勉強できる場を用意することもよいだろう。
そのうち、日本文化・生活に理解が深まり、将来の日本観光はもちろん、留学ないし日本に関するビジネスに携わる可能性も高まる。随行する親にとっても、子どもが授業中、人間ドックを受けたり、買い物したり、観光したりすることで消費につながる。
日本は、家庭単位の「遊学ツアー」という新しいツーリズムに着目すべきだ。