本堂で瞑想、生マグロ料理も…外国人に人気「寺泊」(産経新聞 2019年11月28日)https://www.sankei.com/west/news/191128/wst1911280020-n1.html

宿坊に宿泊することを「寺泊(テラハク)」といって、外国人に人気だ。観光白書にも「寺泊」が明記されている。外国人は、座禅で瞑想し、襖のある部屋で精進料理を味わい、布団で寝る、日本スタイルに興味を抱いている。その「寺泊」が全国に広がりつつあるようだ。

【ポイント】本来寺社の参拝者などが利用する「宿坊」が近年、急増する外国人観光客に日本独特のスタイルで泊まれる「寺泊(テラハク)」として人気を集めている。高野山以外にも各地で新スタイルの宿坊が増え、インターネット上には紹介するサイトも開設されている。国は令和元年版の観光白書に「寺泊」の推進を明記、普及を後押ししている。

戦国武将、真田信繁(幸村)が蟄居した真田家の菩提寺、高野山の宿坊「蓮華定院(れんげじょういん)」。11月7日の夕方、薄暗い本堂にフランスやイタリアなど海外から訪れた宿泊客が姿をみせた。僧侶が通訳を介して厳かに勤行し、日本の瞑想法を指導。外国人たちは慣れないあぐらのような座り方に挑戦し、静かに呼吸を整えた。
終了後は大広間に移動。外国人に大人気という天ぷらや名物の「ごまとうふ」などの精進料理を箸で味わった。
この日の宿泊客は75人全員が外国人。イタリア人の会社員は「美しい庭の画像をサイトで見て決めました。瞑想は姿勢や呼吸法が難しいが、いい体験になりました。料理もおいしかった」と満足顔だ。

「外国人が多い理由は、襖のある部屋で精進料理を味わったり、布団で寝たりする日本スタイルに興味を抱いていることもあるのでは」と蓮華定院の添田隆昭住職は話す。高野山を訪れる外国人観光客は急増している。高野山の宿泊客数は開創1200年の平成27年、約44万人と前年比約1・6倍に急増。30年は前年より約1万6000人多い約22万6000人と推移している。外国人が多い理由は、襖のある部屋で精進料理を味わったり、布団で寝たりする日本スタイルに興味を抱いているを記録した。高野山観光情報センターは「高野山の宿泊先といえば宿坊。平成16年の世界遺産登録の影響が大きい」とみる。

ネット上では昨年7月、全国各地の寺泊を紹介する「テラハク」が開設された。寺社振興を目指して観光企画の立案、運営などを手掛ける株式会社「和空」が運営。都道府県別や「座禅」「写経」など修行・文化体験別に検索できる。紹介数は近日公開予定を含め50を超え、今後も増える見込みだ。

「大間まぐろ」で有名な青森県の「おおま宿坊普賢院」は1日1組限定。「精進料理だけでは飽きる」と夕食に自慢の生マグロ料理を提供する。岐阜県関市の関善光寺(せきぜんこうじ)の境内にある宿坊「カフェ・茶房宗休」も1日1組限定で、併設するカフェで外国人も気軽にくつろげる。
こうした動向を後押ししようと、国も令和元年版の観光白書に「地域の新しい観光コンテンツの開発」として「寺泊」を明記。来年の東京五輪も見据え、インバウンド戦略の重要な柱と位置づけている。

和空の和栗隆史代表取締役は「寺の将来を考えた後継者らが、地域振興や新たな収入源と考えたのが宿坊。今後もさまざまなタイプが生まれる」と期待する。