「UV」効果…米国の学会、黒門市場を貸し切り
(産経新聞 2019.6.17)
https://www.sankei.com/west/news/190617/wst1906170002-n1.html

米国電気電子学会が大阪で開催され、国際会議に参加した1200人が、レセプション会場の”黒門市場”で、牛ステーキや魚介類の串焼きなどの食べ歩き盛り上がったという。
黒門市場の営業時間18時を回った時間から貸し切りとし、主催者の学会が利用料を負担したようだ。
福岡などで商店街をレセプションに利用した事例はあるが、あの混雑する黒門市場を貸し切りにするとは驚きだ。黒門市場の新しい魅力づくりの一歩になるのかもしれない。

【ポイント】 
3月下旬、大阪で開かれたIEEE(米国電気電子学会)の国際会議に参加した研究者たち1200人は、「レセプション会場」となった黒門市場で、牛ステーキや魚介類の串焼きなどの食べ歩きを楽しんだ。
黒門市場をUV(ユニークベニュー)に活用する試みだ。
午後6時までの営業時間が特別に延長され、市場を「貸し切り」にした。普段からにぎわう市場だが、黒門市場商店街振興組合は「過去最大の盛り上がり」と驚く。
仕掛けたのは大阪観光局。大阪への新たな外国人誘客策として、UVに取り組む。「黒門ナイト」はその手始めだという。

UV(ユニークベニュー)は「特別な会場」の意味で、パーティー文化が根付く欧州で生まれた考え。イベントを開く学会や企業などが施設に利用料を払う。海外ではMICE誘致における重要なツールと位置づけられている。

ブライダル業のタカミホールディングスがMICE事業を本格化。京都府内の25カ所の寺社仏閣と連携し、MICEの誘致を始めた。

2018年に世界で開催された国際会議は1万2937件と10年で約2割増加。近年は経済発展が続くアジアを中心とした新興国が誘致に力を入れており、誘致合戦が激しくなっている。

日本は平成19年に施行した観光立国推進基本法での政策目標で、アジア最大の国際会議開催国となることを目指す。観光庁は、28年度に国内で開催された国際MICEによる訪日外国人の消費額を約1500億円と試算。消費額も含めた経済波及効果は約1兆590億円だったとした。MICE事業に関連した2030年の訪日外国人消費額を平成28年度の約5倍超となる8千億円とする目標を定めた。
国際会議の都市別開催件数は東京18位(101件)、京都50位(46件)、大阪156位(17件)などで、10位の韓国・ソウル(142件)や17位のタイ・バンコク(110件)に及ばない。

MICE事業などを手がけるJTBグローバルマーケティング&トラベルは、「日本ではMICEでのUVの企画を交渉する際、施設側の窓口が分かりづらい」と指摘。「その場所でしか体験できない地方ならではの魅力の発信も必要」とする。

先行する欧米では、会場や演出をワンストップでアレンジする窓口機能をもつ組織を立ち上げる都市も多い。英国では1993年、国立歴史博物館などが中心となり「ユニークベニュー・オブ・ロンドン」が発足。80施設以上が加盟し専用ウェブサイトによる窓口を設けるなど利便性が高いという。

歴史的な建造物は国の重要文化財などに指定されていることも多く、文化財保護法の規制がある。利用の際は、国の許可を得なければならなかったが、今年4月の改正文化財保護法で手続き上の規制が緩和された。
自治体などがあらかじめ作成した保存・活用計画を国が認定すれば、その範囲内での使用なら事後の届け出で可能とした。

文化財の積極活用の動きを受けて、自治体側も変化。国指定重要文化財の大阪市中央公会堂は、1年以上前から開催地選定が進む国際MICEを想定し、都市魅力の発信につながる大規模催事に限り、優先的に予約できるようにした。
施設稼働率は平成26年度の69・8%から30年度は77・6%に上昇した。

観光庁は「保護一辺倒から保護と活用の両輪へ転換を図ることで、地方への観光の呼び水にもなる」とし「寺社仏閣や伝統・文化建築などが多い関西は、UV開発に期待が持てる」と話している。